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第3章 エピローグ

とうとう第3章ラストとなります。

第3章、皆様に楽しんでお読み頂けたでしょうか?そうであることを、切に願っております(*´ω`*)

感想・評価頂ければ幸いです♪

「で?城内を探していたら、怪しい人影を発見。追いかけたら逃げるときにそいつが何かを落として、それがたまたま呪具だったーーーと、そういう事か?」


「う、うん!だいたいそんな感じ~!!」


じとーっとした目でこちらを見てくるクラインに、結衣はにっこり笑いかける。


(いやね、自分でも無理があるとは思ってますよ?!でも本当のことを話してしまえば何が起きるか分からないし、何よりフローラが悲しむことになる。それだけは…嫌だもん)


もちろん話せない理由はそれだけではない。

先程東の魔女は言っていた。もしも王妃の中に魔女がいるとバレたなら、そのときは王妃の存在自体も消えて、皆の記憶から消えるだろうと。

そんな事態に陥れば、下手するとフローラの出生までもが謎になるかもしれないのだ。

どこの誰の子供なのか定かではない、国王の娘。この世界にはDNA鑑定など無いのだから、フローラは周囲から疑惑の目を向けられ、辛い思いをするに違いない。

そんな最悪の事態を避けるためにも、今は真相を誤魔化すしかない結衣であった。


「はぁ、お前のことだから俺達に言えない事情があるんだろうな、まったく…。いいか、俺達に出来ることがあるなら迷わず頼れよ?」


クラインの言葉に、国王やシリウス、フローラまでもが頷いている。

結衣が必死で動くときは必ず誰かのためだと、皆分かっているからだ。そして彼女が、やっかいごとを一人で抱え込むタイプだと言うことも。


「うん、大丈夫。ありがとう」


皆が自分を理解してくれているのが嬉しくて、結衣はふわりと微笑むのだった。












そして時は瞬く間に過ぎ去って、現在の時刻は23時59分。

今まさにあと数十秒後に、クラインは運命の時を迎えようとしていた。

真夜中にもかかわらず、城の謁見の間には先程の事情を知る6人全員が集まっている。


「き、きっと大丈夫よクライン!保証人はあのユイだもの!絶対に何も起きないから、大丈夫!」


クラインの隣でフローラは、そっと彼の手を握りながら励ましの言葉を掛けている。

だがその声も、手も、可哀想なほどに震えていて、フローラの不安さを表していた。

そんな彼女の手を、安心させるようにぎゅっと握り返す。


「あぁ、大丈夫だ」


結衣がチラリと時計を見ると、残り30秒だった。


皆がクラインを見ている。


正確に時を刻む秒針の音が、静かに響く。


残り10秒を切った。誰もが息を飲み込んで、問題の鐘が鳴るのを待っている。


「もしもの時は、頼みます」





チクタクチクタクチクタクチクッ…


ゴーン


鐘が…鳴った。


ゴーン


誰もが、クラインを見ていた。


ゴーン


誰もが、無言だった。


ゴーン


あと二つの鐘が鳴り終わるまで、油断は出来ない。


ゴーン


「あと、一つ!」


(お願い、何も起きないで!)


結衣だけは、王妃を見た。結衣の視線に気付いた王妃は、つまらないとでも言いたげに視線を逸らす。


ゴーン


もう、鐘の音は聞こえない。

クラインの呻きも、誰の悲鳴も聞こえない。




「終わった…のか?俺…生きてる、よな?」


「生きてるわ…えぇ、生きてるわクライン!」


喜びのあまり、フローラはクラインに抱きつく。

その姿を見てようやく、皆の張りつめていた緊張の糸がほぐれ、次々と安堵の溜め息が聞こえてくる。


「よ、良かったぁ…」



こうして無事にクラインは午前零時を乗り越えて、翌日を迎えることが出来たのだった。

皆が一息付いた頃、国王が結衣の名を呼ぶ。


「さて、ユイよ。まずは改めてクラインを救ってくれたこと、礼を言う。お主がいなければ、クラインを助けることは叶わなかったであろうからな」


「いえそんな!皆さんの支えのおかげで頑張れましたし。クラインを救えて本当に良かったです」


国王からの感謝の言葉に、結衣は謙遜する。


「これは先程皆で決めたことなのだがな。無事クラインを救ってくれたならば、ユイに感謝の褒美を出すことになっていた」


「えっ!あ、いや大丈夫です!感謝のお言葉だけで十分ですよ!!」


ぶんぶんと両手でいらないことをアピールする結衣だったが、どうやらそれは皆の予想内のことだったようだ。


「ま、お前ならそう言うだろうとは思ったけどな。だから先にさっさと決めといた」


(うわぁ、なんか嫌な予感しかしない…)


クラインの言葉に続けるようにして、国王が口を開く。


「国王命令により、ワタリ・ユイに伯爵の地位を授ける」


「は、伯爵?!」


「あ、ちなみにお前には言っていなかったんだけどな。フローラを救ってくれた時点で、男爵の地位は授けてあるから」


「は?!いや初耳なんだけど!!」


「書面上だけだしなぁ。つーかお前、他の貴族なんてアルベルト家くらいしか知らねえだろ?俺らが黙ってれば知る機会が無いもんな。男爵くらいなら、公表義務はそこまで無い。だからまぁ、言わなくてもいっかなって」


「いや良くないよ!」


ちなみに地位は上から順番に、

王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵、平民である。この国に奴隷制度は無いので、平民が一番下だ。


(待て待て待て、確か男爵って上から数えて6番目。伯爵は…4番目?!短期間で上がりすぎでしょ!!)


「でもさすがに伯爵ともなると、書面上だけではマズいからね。こうして伝えたってわけだよ。大丈夫、分からないこととかは僕達が教えるからね」


「…拒否権は」


「国王命令だから無いね!」


シリウスの畳みかけるような言葉に、これぞまさしく職権乱用では?と思う結衣だった。


こうして公上おおやけじょうは平民であったはずの結衣は、王族の命を救った功績をたたえられ、不本意ながら貴族の称号を授かることになる。

言うまでもなく王族の命を救った内容に関しては、シリウスによって綺麗に捏造されることとなるのだが…。



第3章、お読み下さりありがとうございました。

ほんとはシュバインの処遇についても触れたかったのですが、長くなりそうなのでまた後日に。


そして始まる第4章。

この章では新たに、第3章で登場した謎の女剣士が登場です♪

更新は、第4章の前に冬の童話を書きたいので少々お待ち下さればと思います汗

いければ来週の月曜、キツければ木曜日予定です!

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