東の魔女の報復
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そして、今回は東の魔女の結衣に対する感情が書かれています。これを読むと、シュバインに少し同情の余地があるような…ないような笑
“ワタリ・ユイ”。
私が初めて彼女のことを知ったのは、シュバインの計画が失敗し、フローラの命が救われたと国王から聞いたときでした。
…何と愚かな!!
何故あれほど完璧な計画を、失敗することが出来るというのです?
リーズベルト国の者達は皆、フローラとシュバインを結婚させ、政権の主導権を徐々にリーズベルトの物にして国を奪って行く算段でした。
彼らの計画の中には、フローラを殺すことは入っていなかった。
ですがそれは私がかけた闇魔術によって改変され、フローラを殺すことが必要なことであると認識させたのです。
これで計画を上手く利用して、王族の一人であるフローラを亡き者に出来ると思っていましたのにーーー結果は失敗。
その上、計画を全て阻止してフローラの命を救ったのは、誰も知らない力弱き一人の少女。
こんなことが信じられるとでもいうのですか?!
いいえ、これはきっと何かの偶然。たまたま起きた誤算だと、このときの私はそう信じておりました。
…仕方ありません。彼女と初めて顔を合わせたときの印象は、何の力も持たないただの平民。せっかくの地位もお金も、名声すらも断って、手に入れたのはフローラの専属メイドの役割だけ。
なんて、なんて無欲!!
しかし逆を言えば、無欲なだけのただの“人間”。王族でもなく、何の利用価値もない人間など、私には必要ないのです。
ですが再び私が彼女に対して違和感を覚え始めたのは、翌日のこと。
シュバインを使い今度はクラインを殺すため、私は牢屋に赴きました。今度は確実に成功させるため、私自ら動こうと決めたのです。
しかし、そこでも予想外の出来事が。
呪具を回収し、ひっそりと戻ろうとした直後、既に立ち去ったはずのクラインが、再び牢屋に戻って来たのです。
そしてその隣には……あのワタリ・ユイの姿が。
その上木々の陰に隠れて話を聞いていれば、どういう訳か“呪術”のことが知られている。
ワタリ・ユイが探しているという物こそ、その少し前に私が回収した呪具だったのです。
これを驚かずして、いつ驚くと言うのです?!
なぜ呪術を使っていることが、こんなにも早くバレているのか。あの馬鹿なシュバインが話したのなら理解できます。しかし、それにしては彼女は“知りすぎている”、そんな気がしたのです。
そこで私は彼女を城で見かけたときに、こっそりと後をつけることに決めました。
彼女が自身の部屋から出て来るところを柱の影から見た後で、私は彼女の後をこっそりと付いていったのです。
そしてたどり着いたのは王室図書館。
さすがに中に入れば、気配でバレてしまうでしょう。そうすれば、彼女が隠れて何かやることもなくなってしまう。
そう思い、しばらく近くの廊下の柱の影に隠れていた私でしたが、クラインがやってきて私の存在に気が付きました。
彼はこういうときの勘が良すぎます。その上、あと数時間で殺す相手なのですから、私は気が気ではありませんでした。
まぁその心配も杞憂に終わりましたけれど。
しかしホッとしたのもつかの間。
王室図書館の中で、突然魔女の嘲笑の発動が起こったのです。今図書館の中にいるのは、ワタリ・ユイとクラインの2人だけ。そのどちらかが一方に向けて力を放ったのです!
何百年ぶりでしょうか、こんなにも気分が高揚したのは!!
どちらが力を使ったのかは分かりませんが、どちらにせよ、私にとってはメリットしかありません。
そして、エメラルド城(偽)にやってきたのは…クライン・アルベルトの方でした。
つまり、王族です。王族の一人を存在ごと抹消することが出来たのです!!
あぁ、今日は何と素晴らしい日なのでしょうか、私の想像とは違う形となりましたが、結果王族の一人を亡き者にすることが出来たのですから、満足以外の何物でもありません。
ですが…
突如輝き透け始めたクライン・アルベルトの身体。前代未聞の出来事に、私はただ呆然とするしかありませんでした。
こんなことが出来るのは、フェリナお姉様を除いて他にいるはずもない。どのような手を使ったのかは定かではありませんが、クラウディアの身体に戻り出会ったのは憎き王族の一人ーーー何も覚えていない、クライン・アルベルトだったのです!
そして、次に王室図書館から姿を現したのはワタリ・ユイ。何事も無く、ただ言葉を交わして終わる…はずでしたのに!!
まさか、まさか人間達が“題名”すらも読めていなかったなど、誰が想像出来るというのでしょう!
そのせいで私の正体はばれ、クライン・アルベルトの呪術を解く羽目になってしまった!
ワタリ・ユイ、一体あなたは何者なのです?!
一度ならず二度までも私の計画を阻止し、王族の死を防ぐなど、もはや偶然ではすまされません!
私が必ず、あなたの正体を暴いてみせましょう。そして必ず、王族を葬り去ってみせましょう!
ですからそれまで私は、あなたに封印されるわけにはいかないのです。
覚えておいでなさい、ワタリ・ユイ。東の魔女の報復が、あなたの元へとたどり着くまでーーー。
東の魔女の記憶が残っているのは、魔女の嘲笑と正夢がぶつかり合った結果の一つです。
次回、第3章ラストの予感!月曜日に更新です♪