東の魔女の正体は
さ、寒い…朝起きたら予想以上に寒すぎて、布団から出るのに随分格闘してしまいました(^0^;)
だ、だから更新が遅れたわけではないですよ?!
廊下を歩き始めていたクラウディアであったが、結衣の制止の声に足を止めて振り返る。
「どうしました?」
「え、あ…」
(どうするどうする?!引き止めたは良いけれど、本当にこの仮説はあってるの?)
いざ本人と向き合ってみると、尋ねる勇気が湧いてこない。
“あなたは東の魔女ですか”、と…。
結衣が魔女であると分かった途端、速攻で結衣を封印しようと決断したクラインを、結衣は少し尊敬しながらも悩む。
(だけど“題名が読めない”ということの真偽は、皮肉にもクラインによって証明されてしまってる。なら目の前にいるクラウディア様は、どう考えても…)
このままいくら考えたところで、らちが明かないと判断し、結衣は勇気を出してクラウディアに質問を投げかけた。
「一つ、お尋ねしたいことがあります。宜しいですか?」
「えぇ、構いませんよ」
「クラウディア様は、以前紹介して下さった白紙の本が何という題名か、ご存知でしたよね?」
「あぁ、“光闇魔術書”のことですね」
(やっぱり、読めているのは間違いないみたいだね)
「それを知ることの意味を、ご存知ですか?」
「意味、ですか?ごめんなさいね、分からないわ」
「…やはり、ご存知なかったのですねーーー普通の人間には、あの本の題名すら“読めない”ということを」
「…どういう意味かしら」
驚きを含んだ声でこちらに尋ねるクラウディアと、結衣はしっかりと目を合わせる。
「そのままの意味ですよ。クラウディア様は、あの本に関して読めないのは中身だけと思われていたようですが、実際は違います。“光闇魔術書”という題名すら、読めないはずなんですよーーー魔女でなければ」
「……あなたも読めるようなことを言っていた気もするのだけれど?」
(う…それは否定できないや。でもどうして読めるのかは、私にも分からないんだよなぁ)
「そ、それはまた別に理由があるんですよ(きっと)。ですが改めてお尋ねしますーーーークラウディア様、あなたは東の魔女ですね?」
その質問をした途端、クラウディアはこちらを探るような目つきで見た後で、ゆっくりと顔を下に向けた。
「……ふ、ふふ。ウフフフフフフフ…アハハハハ!」
「く、クラウディア様?」
恐る恐る声を掛けるが反応は無く、クラウディアは壊れた人形のように笑い続けている。
(こ、怖っ!!)
「はぁ、よく笑わせてくれましたねワタリ・ユイよ。まさかそのようなことから正体を見破られてしまうとは…ウフフ、私もまだまだ甘いようです」
「じゃあ、やはりクラウディア様が…」
クラウディアが下を向いていた顔をゆっくりと上げ、結衣にニコリと微笑みかける。
その何とも言えない微笑みに、結衣の背筋は知らぬ間にゾッとした。
「えぇ、認めましょう。私が東の魔女ですよ。正確には、この者の中にいるという意味ですけれど」
(あ、当たってた。ならすぐに封印しないと!!)
「あぁそうそう。今、私を封印しようと考えているのでしょうけれど、あまりオススメはしませんよ?私を封印すれば、この身体ーーーすなわち王妃の存在も消える魔術を付加してあります。そんなことは、あなたも望みはしないでしょう?」
「なっ!そ、そんなハッタリ、通用しませんから!!」
結衣の動揺にウフフと嬉しげに微笑みながら、東の魔女は彼女を脅す。
「信じないのでしたら、それでも構わないですよ。ですがこれだけは伝えておきましょう。今回は以前のように、ゲーム感覚だけで終わるつもりはありません」
すなわち、脅しが嘘ではなく真実である可能性が高いということだろう。予想外の展開に、結衣は内心頭を抱える。
(こんなつもりじゃなかったのに!正体分かったら即座に封印して、クラインの呪術も解けて万々歳のはずがーーーどうしてこんなことに?!)
「正直私はずっとあなたを警戒していました。何か嫌な予感がしてーーーまさか正体を見破られてしまうとは思いませんでしたが」
「………クラインの呪術を止めるためなら、私は何だってします」
「えぇそうですね。今の力弱き私には、その言葉がとても恐ろしい。あなたなら何か本当にやらかしてしまいそうですから。そこで一つ提案があります」
「提案、ですか?」
「あなたが今封印を諦めるというのなら、クラインの呪術を解きましょう。魔術は完璧ではありません。一度魔術を使ってしまった相手に再び魔術を掛けるには、膨大な魔力が必要です。ですが今の私にはそれが無い。どうです?良い条件でしょう」
(クラインの呪術が無効になる?!飛びつきたい飛びつきたい!この提案に即賛成したい!!でも…)
「…それに対するあなたのメリットが少なすぎる。何か企んでいますね」
「いいえ、まだ今のところは。それだけ今封印されることは、私にとって最も避けたいことなのですよ」
数分の沈黙。結衣はその間必死で受けるべきかを悩んで悩んで悩みまくった。そして…
「その提案、受けます」
(クラインの呪術が発動するまで、もう時間が無さすぎる。対策が見つからなくてクラインの死をまた見るなんてこと、私は絶対に嫌!)
「良い判断です」
そう言うとクラウディアは懐から石器を取り出し、床に叩きつけて割った。
「さぁ、呪具を割りました。これでもう、クラインが呪術によって死ぬことは無いでしょう。代わりにあなたも私を封印することは出来ませんけれど」
「…いいえ。いずれ必ず、私が封印してみせます!クラウディア様自身の存在も消さずにすむ方法を見つけて!!」
決意を込めた目を魔女に向けて、結衣ははっきりと宣言する。だがその心には不安の高波が、押し寄せるばかりであった…。
魔女からの提案を受けた結衣。様々なことが発覚して、黒幕もとい東の魔女の正体まで分かってしまいましたが、まだ物語は終わりません♪