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光の村

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(ん、なんだか眩しい……?)


結衣の意識が徐々に浮上してきて、最初に感じたことはそれだった。目を開けていなくても分かるほどに、自分の周りが光で満たされているのが伝わってくる。ふとそのことを不思議に思い、目を開いてみれば───────


「え、ここ……どこ?いつもの暗闇じゃないよね。むしろいつもとは真逆の世界にみえるんだけど……」


いつものように、自身の姿すら見えないほどの暗闇が彼女を待ち受けているのかと思いきや、目の前に広がっているのは、まるで光の世界。暖かな気候と風が、結衣の黒髪を優しく撫でていく。


(と、とりあえずは状況把握!!えーっとまずは……第一村人ならぬ、あの人を呼んでみようかな)


「すみませーん、こちらに“謎多き声”のフェリナさんはいらっしゃいますかぁーっ!!いやまぁ、とりあえず誰でもいいので、この状況教えて下さーい!!」


……意外と冷静さを保つことができている結衣であった。

よくよく耳をすませてみれば、ザワザワと何か話すような声が聞こえる。


(誰かは、いるみたいだね。あ、目が明るさに慣れてきたーーーって、え?)


周囲の明るさに目が慣れて、視界に写ってきた景色。それはーーー


「む、村?……いや、集落?」


結衣が驚く間もなく、知らぬ間に彼女は、何人かに周りを取り囲まれていたことにも気付く。その中の数人が一歩前に出て、結衣に近づく。

反射的にビクついた彼女を見て、その男達は困ったような顔をした。


「あーお嬢さん、怖がらないで下さいね。私達はあなたに危害を加えるつもりはありませんから」


「そうそう。むしろあなたは我らの同士ですから、混乱している気持ちもよく分かります」


彼らは結衣に、口々に敵意が無いことを伝えた。

その様子に少しほっとして、


「えーっと、分かりました。とりあえず状況を把握させて下さいませんか?」


「そうですね。まずはあなたが今いる場所は、先程までいたであろう世界とは全く別の世界。言うなれば、異世界ということになります」


「え?え……はぁーーーっ?!」


(ちょい待てー!ってことは何か?私は地球から異世界に飛ばされて、その場所でまた異世界に飛ばされたってこと?!……ややこしいわっ!!)


「驚かれるのも無理ないですね。いきなりの異世界ですから。まぁですが、ここは異世界と呼ぶには狭すぎますので、異空間といった方が良いかもしれません」


「そ、そうですか」


「ハハ、なぜそんなことに?という顔をしてますね。それはもちろんのことーーーあの忌々しい魔女の嘲笑が原因です」


どうやらここにいる人達も、魔女の嘲笑と何らかの関わりがある様子。それなら確かに同士かもしれないと、密かに思う結衣だった。


「で、でもおかしくないですか?私は嘲笑を受けた側、なのにどうして私まで異空間に飛ばされるのです?いやそもそも、ここがどんな異空間なのかも分かりません」


(クラインが魔女クレアの元に飛ばされるなら納得だけど、私まで異空間に送られるなんて聞いてないんですが!!ま、まさか王族にも伝わっていなかった副作用的な?!)


「あぁそれは、あなたはここに来る前に、こう願いませんでしたか?ーーー“逃げ出したい”、“誰か助けて”、と」


「ね、願いましたけど……?」


「それです」


(いやいやいや、説明になってませんけど?!“それです”だけじゃ、伝わらないこともあるんだよ?!)


「まぁ詳しいことは、我々の主に尋ねて下さい。ご案内します、我らが主ーーー光の魔女、フェリナ様の元へ」


「ふぇ、フェリナ?!じゃあこの異空間はーーー」


「はい。光の魔女フェリナ様が作られた異空間ですよ?」


(ま、マジですか)









ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゴクリ。結衣は村の中心にある家のドアの前に立っていた。緊張し過ぎて、結衣の両足には震えが走っている。


「フェリナ様、新しい方をお連れしました」


「はーい、どうぞ?」


(いつもの“謎多き声”と同じ声だ。ってことはやっぱりこの中にいる人がーーー)


「お帰りなさいユイーーーふふ。初めまして、と言うべきかしら」


「そうですね、やはりその声は“謎多き声”。フェリナさんで合っていたようで」


(魔女というから勝手に、年老いたお婆さんとかを想像してたけど、意外と若いな。30代くらい?それにーーーめっちゃ美人っ!!)


フェリナはサラリと流れるような白色の髪を腰のあたりまで伸ばし、瞳の色は髪の色によく映える、金色の瞳をしていた。

そして魔女にとって象徴とも言えるであろう、黒色のとんがり帽子を頭に被っている。


「えぇ、ここなら肯定しても問題ないわ。さてと、あなたが“この場所”に来たということはーーー使われたのね、魔女の嘲笑」


「えーっと確かに使われましたけど、どういう意味ですか?」


「この異空間に来る人達はね、みんな魔女の嘲笑の被害者なのよ。そしてあなたも経験したと思うけれど、あの誰も存在を覚えていないということに失望し、そんな世界から逃げ出したいと心底願った人への逃げ場のような場所になっているの。ただし一度ここへ来てしまうと、私の封印が解けるまでは元の世界に帰れないわ」


「えっ!………えーーっ!じ、じゃあ私は……」


帰れないと聞いて慌てる結衣に、フェリナはにっこりと微笑んだ。


「帰れないわね。もしもあなたが、“普通”の人間だったなら……の話だけど」 


「紛れもなく私は一般peopleです!!」


「……即答したわね。でもあなたは幸か不幸か、“普通”ではない。それは分かっているでしょう?」


「────正夢、ですか」


溜め息混じりで答えた結衣に、フェリナは笑顔で拍手を送る。


「正解よ。その力の作用で、あなたは元の世界に帰ることが出来る。でも、いつもと違うことが一つだけあるわ。それが懸念材料でもあるのだけれど……」


「ち、違うこととは?」


「“魔女の嘲笑”の発動によって今回は、2つの力がぶつかり合う。つまりね、正確には今は対象が“死んだ”わけではなく、“存在”が消された状態。そんな中で正夢の力を発動させたら何が起こるか────私にも分からないわ」


(確かに。クラインは今、ある意味クレアの元に飛ばされただけで、死んでしまったわけじゃない。もし、クラインの消える前の時間に戻ることが出来なかったら……)


「でも、やるしかない。そうですよね?ここから抜け出すには、その方法しかないんですから」


「えぇ、私はせめてあなたの幸運を祈るわ」


フェリナの言葉にしっかりと頷いて結衣は、ゆっくり目を瞑る。


(待っててクライン。今私が、あなたの“存在”をみんなに思い出させてみせるから!もう一度、あの世界へ!!)


強く強く願う気持ちが力に変わり、結衣の身体が徐々に輝く。そして、フェリナが優しく見守る中で、結衣は異空間から姿を消したのだった。



そして───────



それをそばで見ていた、結衣を連れて来た村人に、フェリナは辛そうな顔で声を掛ける。


「……ごめんなさいね。私はあなた達を、元の世界に返してあげることができない。あの子は……特殊なだけなのよ」


彼女の言葉に、村人は静かに首を横に振って答えた。


「いいえ、あなたが謝ることはありません。あの世界から逃げ出したいと、そう望んだのは……紛れもなく我々、なのですから」


「……でも、その状況を作ってしまったのは私達魔女だわ」


「どんなに後悔したところで、過去は変えられないのです。確かに以前はまた、元の世界に帰りたいという思いもありました。ですが今はここの生活に慣れ、気に入っているのです」


それに、と彼は続ける。


「先程の彼女の服装。あれは、我々の生きた時代には無かった物。あの服を見ただけでも、時代は相当流れているということが分かりました。もう、我々の生きたあの世界は……無いのです。それならば元の世界に帰るより、ここにいる事の方がきっと、我々にとっては一番の幸せなのですよ」


笑顔でフェリナにそう言った村人に、フェリナの心は感謝の気持ちでいっぱいになる。


そして心からフェリナは、


「ありがとう」


そう、村人に表しきれない感謝の気持ちを精一杯込めて、言葉を返したのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方同時刻、闇の魔女クレアの目の前では、前代未聞の現象が起きていた。


「彼の身体が……透け始めている。まさか……いや、そんな馬鹿なことがあるとでもいうのですか?!」


『クレア様、この現象は一体?!』

『クレア様、クラインの身体が徐々に薄れていきます!』


「な、何だ?今度は一体何をするつもりなんだ!!嘘だろおい、手が透けて床が見えてる?!」


「まさか、まさかフェリナ……」


『クレア様?!一体どうすれば!』

『クレア様?!ご指示を!』

『『クレア様!』』


魔女と小人達が慌てている間にもクラインの身体は眩しくて目が眩むほどの光に包まれ、やがて光は謁見の間全体を包んでいく。


「うわっ!目が、開けられねぇ!!」



あ、あれー?おかしいなぁ。普通に闇の世界に飛ばすつもりが…なぜか村ができるという。

ま、まぁこんなこともありますよね♪

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