始まりは夢の中★
初投稿作品となります。まだ最初の方などは特に拙い文章かもしれませんが、読者の方々に楽しんで読んで頂ける作品を目指して頑張ります♪
ぜひ感想・アドバイス等頂けると嬉しいです!
またメイ様より、ハピバ記念ファンアートを頂きました(〃ω〃)
私の名前は渡 結衣。
黒目黒髪、容姿は普通。
高校に入学したての、まだ何の取り柄も無いただの女子高生だ。唯一普通と違うところと言えば、両親がいないってことかな。
とはいえ別に最初から孤児という訳じゃない。
今から約10年前。私が幼いときに父親は仕事に行くと言い残し、それきり姿を消してしまった。
そして今日、私は大好きな母にも別れを告げる事となる。
母は元々病気がちにも関わらず、私のために一生懸命働いていた。家にはあまり帰ることはなかったけれど、それでも私にたくさんの思い出を残そうと努力してくれていた。
だから私は今こうして、心にぽっかりと大きな穴が空いたような気分で、1人ベッドに座っている。
「父親は音信不通でいないし、頼れる親戚もなし……か。声に出して言うと、うん。想像以上にヤバいなこれ!」
と、当たり前のことに今更気付いて愕然とする。
でもこれから先どうしたらいいのかなんて、今は浮かんでこない。
「ま、まぁとにかく今は悩んでいても仕方ないよね!?そうだよ、とりあえず今日はもう寝ちゃえ!!」
バフッとベットに身体ごと預けて、軽く目を閉じる。それだけで少し、心が落ち着くような気がしたのだ。
先のことは不安だけれど、お母さんはいつも言っていた。私がしっかりしていれば、必ず周りが助けてくれる、と。
その言葉を信じて、今はやってみるしかないんだ……。
「お休み、お母さん」
遺影に写る母の笑顔に挨拶をして、私は眠りについたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どこか遠くで歓声が聞こえる。
いつの間にか私は、辺り一面綺麗な花が咲き乱れている場所に立っていた。
花畑の少し先には、大きくて立派なお城が。
そして私の周りは花だけでなく、見渡す限りの人々で埋め尽くされていた。
そして、ふたたび響く歓声。
一斉に城のバルコニーを指さす人たち。
“ん……っと、これは夢……だよね?”
妙にリアルな風景や現象に、一瞬ここが夢の中では無いのではないかと疑った。
だが先程確かに眠りについた覚えはあるので、ここが夢だと思い直す。
“何かの行事でもあるのかな”
気になって皆の目線がある方を眺めてみると、そこには白いドレスを着た綺麗なお姫様と、隣に王子らしき人が立っていて、嬉しげな顔で手を振っていた。
それはまるで、どこかのファンタジー世界に入り込んだような光景だ。
そういえば夢は、その人の願望を表すと聞いたことがある。
何を隠そう、私はファンタジー物が大好きだ。
だから私がこのファンタジックな夢を見ても、特に変だとは思わない。
それにもしかしたら私は、今の暗い現実を受け入れたくなくて、このような夢を見ているのかもしれないしね。
と、そう思った矢先。
「あ」
周りにいる観衆の誰かがそう言った。空気がピンと張り詰める。
グラリ、とバルコニーから手を振っていた姫の身体が突然、傾ぎ、上半身がバルコニーの手すりを乗り越えたのだ。
華やかな雰囲気の中で起きたあまりに予想外の事態に、一瞬思考が止まる。
“……えっ、ちょっ!危ないっ!!”
夢の中でとっさに叫ぶ私。
その叫び声とほぼ同時。
王子らしき人が姫を助けようと手を差し伸べた、その時だった。
そんな救いの手をさえぎるかのように、一筋のなにかが風を切る音とともに通り抜ける。
そのなにかに、彼が一瞬躊躇したのが運の尽き。
姫の身体は完全に手すりを乗り越えて、とうとう空中に放り出される。
頭から落ちていく姫。彼女の背中が見えるようになる。
そして、その背中には……
一本の矢が突き刺さっていた。
“そんな!嘘でしょう?!”
私は心の中で悲鳴を上げた。
”これは夢だとだれか言って!!……あ、これ夢でしたわ!”
歓声が悲鳴へと変わる声を聞きながら、私の意識はそこで途切れた。