クリスマスイブ
忙しくなると、間隔があきます。
小説を書くのは中学生以来。
完結を目標に頑張ります。
今日は12月24日。
言わずもがな、クリスマスイブだ。
こんな日は日付が変わるまで酒を飲みながら、レベリングに限ると立ち上げたPCで1本のゲームを起動させた。
イブにゲームと公言なんてオタクを気取っているようで、
俺はギルドメンバーへの挨拶もせずオンラインのステータスを、ログアウト時と同じように見える"姿を隠す"に設定して、自動PTマッチングシステムに登録した。
(…これはこれで見つかったら、イブに一人なのが恥ずかしくて隠れてるみたいだな)
そんな事を考えつつPCから離れ、冷蔵庫からビールを取り出す。
街は浮かれているが、俺もイブに浮かれているんだ。
普段の発泡酒ではなく、今日は赤い缶の琥珀エビスでリッチに乾杯。
年内の仕事もあと3日で終わりだ。
ポーン♪
「やけに早いな?」
独り暮らしの気ままさで身に付く独り言を呟き、椅子に腰を下ろす。
PC画面の俺のアバター脇に軽快な音と共に、1つのメッセージウィンドウがPOPしていた。
【PTメンバー4人が揃いました。PTに参加しますか? はい・いいえ】
俺は「はい」を選択しヘッドギアを装着し、他3人の参加を待った。
ファントムワールドオンライン。
今一つひねりの無い名前のこのゲームは今から半年前に発売になった。
2000年初めの頃にあったような、マゾいシステムでレベリングにかかる時間は半端なく、
更に戦闘不能になれば経験値をロストしレベルダウンもおこるという前時代的なものだった。
しかし、月額課金のみの課金制度で、ゲームに費やした時間とプレイヤーの才能のみが力に直結するというやり込み要素で、ゲーマーを中心に人気が爆発していた。
また、アバターの種族は5種族と少ないが、容姿の選択肢幅が広く、ジョブに関しては1000種近く確認されたうえ、クエストも変わったものが多かった。
特にレベル10の強制イベントで手に入り、レベル50孵化する卵。
そこから手にはいるバディーと呼ばれる幻獣も1000種を越え、
一時期スマホのアプリゲームに駆逐された、置き型オンラインゲームだったが非常な人気が有り、日本だけでも15のサーバーが稼働していた。
4人のプレイヤー参加承認が取れ、俺のアバターは予定していたキャンプ地に転送された。
仲がいい友達や、ギルドメンバー、レベリング希望者とPTを組んでレベリングに行くことも出来る…というか、その方が通常多いのだけれど、こんな日はマッチングシステムで適当に行きたい。
変な相手や、言語が異なる人と組まされる事も有るが、それもいいのだ。
俺のアバターは獣人の男。
俺の願望を盛り込みまくったマッチョなイケメン。
ギルドのレディー達からは不評だったりするのが謎だ。
金とアイスブルーのオッドアイで、猫のような縦長の瞳孔。
鼻筋が通っていて、白銀の髪と無精髭。
見た目は20台半ばだろうか。
しっかりと筋肉がついた体には、艶のある黒い鎧を纏い、背中には背丈程はあろうかという大鎌を斜めに担いでいた。
そしてヘルムの上からちょこんと髪と同じ色の耳が、マントの脇からは同色の長く太い尻尾が覗く、それが俺のチャームポイントだ。
レベルは現在78で、ジョブは戦闘職から派生していった暗黒騎士だ。
騎士とついているが、タンク職では無く、補助スキルも持つアタッカーだ。
このゲームは基本4人でPTを組みレベリングを行う。
盾役となるタンク1名、回復や補助を行うヒーラー1名、そして大ダメージによる攻撃を得意とするアタッカー2名の構成が基本で、
自動マッチングシステムだと、必ずこの構成になるまでマッチングはしない。
のだが…俺、いや俺達はこれはどうしたことだ?と、予定していた狩り場のある、フォルディーヤ平原で4人顔を見合わせたのだった