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HOUSE  作者: 哲太
7/12

第一章 もう一人の住人 終


「こちら、

 おしるしでよろしいでしょうか?」


遥がそう尋ねると、

ペットボトルのジュースを一本だけレジに持ってきた

学生らしきその少年はコクッと頷いた。


「ありがとうございます。

 一点で92円頂戴いたします」


遥の言葉に反応し、

彼はポケットから

某ブランドメーカーの長財布を取り出した。


遥はそれを見ることで、

思わずため息が漏れそうになる。


彼女は

特にブランド志向が高い訳ではなかったが、

そういうものを見てしまうと

どうしても

今の自分の生活と比べしまうことがあるのだ。


もし

雄平と一緒になることを選んでいなかったら……。


ジュースとお釣りを受け取り、

特に言葉を発するわけもなく立ち去って行く

少年の後ろ姿に見ながら、

また野暮な想像をしていた自分のいやらしさに

遥は嫌気がさしていた。


「もし、これをしていれば」とか

「あれをしなかったら」と言う、

「たられば」を考えることに意味をは無いのである。


失敗を反省し、次に活せるのなら

そこに価値は出てくるだろうが、

彼女にとって

そこにはただの願望しか無い。


いや、

雄平と一緒にならないことを願うなんて

それだけで自分は嫌な女なのか…。


遥がそんな自己嫌悪に陥っているとき、

不意に

自分のスカートの裾が引っ張られたのを

彼女は感じた。


遥が目線を下げると、

そこには年端もいかない少女がこちらを見上げていた。


「ひーちゃん!だめでしょ!」


とりあえず少女と目線を合わせるために

遥がしゃがむと、

遠くからこの娘の母親と思しき女性が駆け寄ってきた。


「これあげる!」


少女はそう言って

その小さな手で握っていた「何か」を遥に手渡すと、

母親の元へと戻って行った。


思わぬ出来事に

すっかり取り残されてしまった遥は、

少女に握られた手を開いた。


そこには、

少しよれてしまった折り紙の鶴があった。



※※※


………

≪白雪≫さんが入室しました。


HN_みひろ:こんばんわ、白雪さん。

      いや~、近頃は夜でも暑くてかないませんね(T_T)


HN_白雪:こんばんわ、みひろさん。

     …確かに暑いですね。


HN_みひろ:おや、今日はあまり元気がないようですね。

  

HN_白雪:…わかりますか(^^`)?


HN_白雪:実は、今日はお別れを言いに来たんです(T_T)


HN_みひろ:お別れを!?\(゜ロ\)(/ロ゜)/

      …何か怒らすようことをしましたか(T_T)?


HN_白雪:いえいえ!そんな!

     ごめんなさい、

     急な話でしたし、私の書き方も悪かったです。


HN_白雪:正確には

     しばらくこちらに顔を出せなくなりそうなのです。


HN_みひろ:ほう?

      何か事情があるようですね(@_@)


HN_白雪:はい。

     実は、今度実家に帰ることになりまして。

     

HN_みひろ:ご実家ですか!?

      という事は…。


HN_白雪:はい。

     最近ようやく父と話すことが出来ました。

     まだ問題は山積みなのですが、

     もう一度ゆっくり私たち夫婦のことを

     相談しようと思います。


HN_白雪:ただ、

     実家は信じられないくらい田舎なもので…(>_<)

     おそらく

     みひろさんとこうやってお話しさせて頂くのが

     難しいと思うのです。


HN_みひろ:なるほど。

      わかりました。

      そのご決断はきっと正しいものだと思いますよ


HN_みひろ:…すこし寂しいですがね(⌒_⌒;)


HN_白雪:今まで本当にありがとうございました。

     みひろさんとお話しさせて頂いた時間は

     私にとってかけがいの無いモノでした。


HN_みひろ:こちらこそ。

      私も本当に楽しかったですよ。


HN_白雪:それでは、またどこかでお会い致しましょう。


HN_みひろ:はい。

      また(^^)/



≪白雪≫さんが退室しました。

≪みひろ≫さんが退室しました。


………


ふぅ~、

どうやらこの部屋を出ていくを決断したみたいですね。


私とても寂しい限りではございますが、

こればっかりは

避けられないことですから

仕方ありません。


皆さんは如何でしたか?


自分とは全く違う人生を見るというのも

なかなか新鮮で

感じることがあったのではないでしょうか。


私も直接人と話すことは出来ませんが、

ネットを通じてお話しすることで

少しでも彼女の力になることが出来ていたことを

祈るばかりです。


え?

何で皆さんと話すことは出来るのかって?


ふふ。

なぜでしょうかね。


さぁさぁ、

もしまだお時間があるのでしたら、

次に私の処に来て下さる方も

一緒に見守ってくださいませ。




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