第一章 もう一人の住人 PART2
………
≪白雪≫さんが入室しました。
HN_みひろ:こんばんわ、白雪さん。
今日はいつもよりいらっしゃるのが早かったですね。
HN_白雪:こんばんわ、みひろさん。
旦那が夜勤までに一眠りするみたいなので
ちょっと早く入室しちゃいました(^^)/
HN_みひろ:そうだったんですね(@_@;)
旦那様はいつもお仕事で大変のようですが、
ご健康面は大丈夫ですか?
HN_白雪:ご心配いただきありがとうございます!(^^)!
夫婦揃って元気に暮らしております。
強い体に産んでくれたことは両親に感謝しないとですねw
HN_みひろ:そのお気持ちだけで
きっと親御さんも満足だと思いますよ。
そろそろ、いつものアレを始めましょうか(^^)?
HN_白雪:はい(^O^)
今日こそは正解して見せますw
HN_みひろ:では参ります。
A君のお父さんは
週休二日の会社に勤めるサラリーマンです。
子供が大好きなそのお父さんは
授業参観には必ず参加しています。
しかし、
毎年どうしても運動会には参加することが出来ません。
それは一体何故でしょう?
HN_白雪:むむむ(゜3゜)
休日はしっかりあるのに運動会には行けない…?
もしかして、
そのお父さんの仕事内容に関係があるのですか?
HN_みひろ:関係あるといえばありますが、
具体的な職業は重要ではありませんね(^^)/
HN_白雪:…そうですか
休みなのにいけないとなると
実は体育会系のお母さんの前で
恥をかきたくないとかw
HN_みひろ:世のお父さんが抱える問題かもしれませんねw
でも違います(>_<)
HN_白雪:う~ん、…降参です(T_T)
正解は一体なんだったのでしょうか?
HN_みひろ:正解は
お父さんの休みが平日だったからです。
参観日は平日ですが、
運動会はほとんどの場合、
日曜日に行われますから
参加できないのです(>_<)
HN_白雪:あぁ!
休日と聞いたら土日と考えてしまう固定概念に
囚われてしまっていました(T_T)
なるほどです。
HN_みひろ:ふふふ!(^^)!
楽しんで頂ければ幸いです。
さぁ、今日はこの辺にして
そろそろ休みましょうか(^O^)
HN_白雪:はい、今日も楽しかったです(^.^)
おやすみなさい<m(_ _)m>
HN_みひろ:こちらこそ、ありがとうございました。
おやすみなさい(_ _)
≪白雪≫さんが退室しました。
≪みひろ≫さんが退室しました。
………
パソコンの画面に表示されたウィンドウを閉じ、
遥は小さく息を吐いた。
このチャットでの会話が、
遥の最近の日課となっており、
また、毎日の楽しみともなっていた。
チャットを始めたきっかけは、
たまたま自分が贔屓にしている俳優犬のポン太君について
ネットで検索しているときにこの掲示板を見つけたことだった。
当初、
なんでこのページが「ポン太」の検索で引っかかったのかが
謎であったが、
よくよく見ていくと、
関連ワードに彼の名前が入っていることが
その理由であるらしいことが分かった。
最近夫以外の人間と話すことがめっきり減っていた遥は、
ポンタ君について適当に雑談でも出来ればいいなと思い
書き込みを行ったのだが、
今となっては彼の話はどこへやら、
管理人である「みひろ」氏が出す
とんちや謎掛け問題がすっかりクセになっていたのだった。
この「みひろ」って人が男性なのか女性なのかも分からないし、
お互いにほとんどプライベートな話をしない。
素性が分からない人間との会話が
全く怖くないと言えば、
それは嘘だろう。
しかし、
遥が掲示板を除くと必ずそこに入室している
「みひろ」の存在は、
夫には言えない寂しさを抱える彼女にとって
かけがいの無いモノになりつつあった。
そうこうしている内に、
もうすぐ夫の雄平を起こす時間である。
明日はどんな話を聞かしてくれるだろうか。
遥は「みひろ」との会話を楽しみにしつつ、
最後に大きく伸びをしてから
夫が眠る和室へと足を向けた。