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7 ハヤト 死す

グロ描写がありますので、苦手な方はご注意下さい。



 今、俺の前には、この前見たヤツよりひとまわりほどでかい象ライオン(仮)がいた!


 どうやら焚き火の明かりに引き寄せられたらしい。


 確かに夜に明かりをつければ魔物に襲われる危険性もあった。

 だが、それより先にレイアが俺を見つけくれる事に賭けていたのだが…どうやら賭けは俺の負けのようだ…。


 しかし、泣き言など言ってられない!

 今は、どうにかしてコイツから逃げなければ!!


「ナナ!!こっちだ!!」


 急いでナナを俺の後ろに隠す!

 そのついでに象ライオン(仮)に燃えている木の棒を投げつける!


 しかし逆効果だったようで明らかに怒らせてしまった。

 すぐにでもこっちに突進してきそうだ!


「クソ!ナナ、後ろの川に飛び込むぞ!!」


「う…うんっ」


 そう言って川へ駆け出す!


 こんな時の為に、事前の内に逃走経路については話していたので、ナナもすぐに川へ向かって走り出す。


 川までの距離は10メートルもない!

 すぐに川までたどり着いた。


「ナナ!」


「ハヤトっ!」


 ナナの手を強く握る!


 そうして夜の川に飛び込んだ!!




 夜の川は、想像以上に冷たかった。


 突然の温度変化に心臓が悲鳴をあげる!


「かはっ ナナ、大丈夫か!?」


「だい…じょうぶ」


「よし!このまま流されてアイツと離れるぞ!」


 ここも川の流れは速い。

 だからこそ、象ライオン(仮)との距離を稼ぐ事ができる。


 だが!


 どっっっっぼん!!!!!


 音の方向を見てみると、最悪の光景が目に飛び込んできた!


「アイツ!泳げるのかよ!?」


 象ライオン(仮)は、川に飛び込んでそのまま俺達を追ってきていた。


「マジかよ!? …仕方ないっ!ナナ!向こう岸まで泳ぐぞ!」


「…ん!!」


 そう言って全力で泳ぎだす!!


 急がなければ!!


 しかし、川の流れのせいで思うように泳げない。

 それに回りが暗過ぎてちゃんと前に泳げているかもわからない!

 このままでは追い付かれるかもしれない!


 どうする!?

 クソ!もっとしっかり逃げる時の事を考えておくべきだった!!



 そんな焦っていた俺の手を、ナナが強く握ってくる。


「だいじょうぶ」


 そう言われて、急に自分が落ち着くのを感じる。


 そうだ。俺にはナナがいる!

 二人で助け合うんだ!!


「ありがとう!ナナ!」


 その時足が川底につく。


 どうやら向こう岸近くまで泳げたようだ!


「しめた!このままダッシュで森の中に逃げこむぞ!」


「わかった!」


 川からあがる。

 服が水を吸って重くなっている。


 しかしそんなの気にしてられない!

 象ライオン(仮)の姿は、暗くてよく見えないが音だけは確実に近づいている。


「ナナ!森をジグザグに進んで木を障害物にして逃げるんだ!手を離すなよ!!」


「ん!」


 お互いに手を強く握り直す!


 辺りは暗い。

 月明かりでかろうじて近くの木が見えるか、見えないかというところだ。

 こんな場所ではぐれたら大変な事になる。


 そうして、森の中を駆けていく!


 木や草で、身体中に切り傷が無数にできていく。

 だが止まってなどいられない!


 木をなぎ倒す音が後ろの方から聞こえてくるからだ。


 走れ!止まるな!俺!!止まれば死ぬぞ!!


 息切れがしてきた。足も重い。心臓も破裂しそうだ!


 だけど止まらない!走って走って走り続ける!!





 森を走り出して10分ほどたったろうか?

 まだ後ろから象ライオン(仮)の音は聞こえてくる。

 しかし、心なしか聞こえてくる音が遠くに感じる。


 今のペースで走っていれば、もしかしたら逃げきれるかもしれない!

 そんな事を思っていた矢先、象ライオン(仮)が森に響きわたる大きな声で吠えた!!


「GYAOOOOOOOOOOOON!!!」


 すると同時に地面が揺れた!


 震度5ぐらいの激しい揺れだ。


「まほう…つかった…!!」


「何!?アイツ魔法も使えるのか!?」


 どうやら今の揺れは、象ライオン(仮)の魔法のようだ。


 だが地震ぐらいでは、走るのを止めない!

 きっと象ライオン(仮)の最後の悪あがきだ!


 そう思っていた時、絶望の光景が見えた…。


「なんだ?この壁?なんでこんなところに壁があるんだよ!?」


 そう、目の前に現れたのは、高さ10メートルほどの壁が横一面に広がっていた。


「たぶん…あいつの、まほう…」


「そういう事かっ!」


 象ライオン(仮)によるさっきの魔法は、地震をひきおこす事じゃなくて、壁を作る魔法だったのだ。


 退路が絶たれた…。

 クソッ!あと少しで逃げ切れたのに!!




 そうしてついに俺達は、象ライオン(仮)に追い付かれた。













 目の前には、うっすらと象ライオン(仮)が見える。


 どうやら俺達が逃げられないとわかったらしい。

 さっきまでとは違ってゆっくり迫ってくる。


「Guruuuuuuuuuuu...!!」


 低い唸り声が聞こえる。


 ああ、どうすればいい!

 何か方法はないのか?何か!何か!?


「ハヤト…」


 そう言ってナナが、不安そうに俺に呼びかける。


 その姿を見て、俺は覚悟を決める…。


 せめてナナだけでも"なんとしても"助ける。


「ナナ、俺が合図を出したら、俺は右側に、ナナは左に向かって走るんだ。そうすればどっちかは助かるはずだ。だから後ろを振り向かず、精一杯走るんだ。いいな?」


「…でも、それじゃ」


「ああ、この方法じゃ"どっちかは"死ぬかもしれない…。でもこれが今の俺達にできる最善の方法だ。…わかったな?」


 ナナはそれでも頷かない。

 時間もない。早くナナを説得しないと!


「もし逃げ切れた方がいたら、その時は俺の仲間を見つけて、すぐに戻ってきて助けにくればいい。そうすれば二人とも助かるかもしれない」


「…うん。わかった」


「ありがとう」


 さて、ナナの説得も終わった。


 後は、合図を出せば終わりだ。


「ナナ…短い間だったけど、楽しかったぜ」


「わたしも…」


「それじゃ!行くぞ!!」


 そうしてナナは左に向かって走りだす。


 俺は"象ライオン(仮)に向かって"走り出す。


 そうだ。さっきの方法じゃ、ナナが絶対に助かる訳じゃない。


 だが、絶対にアイツが俺に向かってくるように仕向ければ、ナナの助かる可能性がぐっと上がる!


 だから俺は、象ライオン(仮)のところに向かって走る!!


 すると象ライオン(仮)は、狙い通り俺に攻撃してきた。


 始めはあの、巨大な足の爪を使った薙ぎ払いだった!


 それを紙一重でかわす!

 そして頃合いを見て、また象ライオン(仮)から距離を取る。


 どうやら象ライオン(仮)は完全に俺に狙いをつけたようだ。


 よし!これでこのまま俺が逃げれば、アイツは間違いなく俺を追うはずだ!!

 そうすれば、ナナの逃げ切れる時間も稼げるはずっ!?


 そう思っていた時、不可視の攻撃が肩にあったった…。


 痛い痛い痛い痛い痛い痛いなんだこれ!?痛いいたい痛い痛いイタイイタイいったい何処から?イタイ痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたい痛い痛い痛いイタイ痛い痛い痛い痛いいたい痛い痛い痛い痛い痛い血が吹き出てる!痛い痛い痛い痛イタイい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃい!!!


 俺を襲った攻撃は、象ライオン(仮)の鼻による攻撃だった。

 あの長い鼻による攻撃は、超でかい鞭で叩かれるような攻撃だ。

 そのせいで、肩口からは血が吹き出て、肉は削げ落ち、骨が剥き出しになっていた。


 でも俺にはもうそんな事はわからない。


 初めて味わう痛みに、ただただ身をくねらせるだけだ。


 ああ、駄目だ…意識が…。




 そうして俺は気絶した。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ナナ視点


 ハヤトのあいずではしりだす。


 さっきの…ハヤトのことばをおもいだす。


 "ナナ…短い間だったけど、楽しかったぜ"


 そのことばが、みょうにきになる。


 だからだろうか?ふいにうしろをふりむいてしまったのは?


 みえたのは、ありえないこうけいだった。


 ハヤトがあのまものにむかってはしっていた。


 そして、かたから ち をふきだしてたおれた。


 ありえない…なんで?なんで?そんな?ハヤトはみぎにむかってはしるはず!それが、どうして、こんな!?


「ハヤト!!!」


 いそいでハヤトにかけよる。


 でもハヤトはよびかけても、びくともしない。


 ああ、そんな、ダメ、ハヤト、しなないで!!


 きずぐちをてでふさぐ。


 するとじふんの て が まっか にそまる


 あれ?


 わたしは このいろを よく しっている


 そうだ わたし は こんな


 こうけいを なんども なんども みたことが



 ち まっか ち ち し ち ハヤト ち し ち し

 

 ち ち し し 死 死 死死死死死死死死死死死死死死死!!







「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 思い出した!私は!私は!!


 そうだ!私はあの女に封印されていたんだ!


 今までどうして忘れていたのだろう?

 封印の影響?

 いやそんな事はどうでもいい!!

 そんな事よりも早く、私にはやるべき事がある!!!


「GYAOOOOOOOOOOOON!!!」

 

 そんな私の邪魔をするように、エレオンが私に襲いかかる。


 私はそれを、"片手"で殴る。


 するとエレオンは吹き飛び、ただの肉塊へと変わる。


「…ふん」


 手が汚れてしまった…まあいい


 それよりも今は!!


 その時、ふと下で血を流して倒れている人間(ハヤト)を見つけた。


 このまま放っておけば死んでしまうだろう…。


 この人間(ハヤト)は、どういう訳か私を助け(てくれ)た。


 いや、理由はわかる。あの時の私じゃ、確かにエレオンに勝つことはできなかった。だから助けた。自分の命を危険にさらして。

 この知り合って間もない私の為に。


 それが私には理解できない。

 いや、"今の私には理解できない。"


 人間が、こんなに優しい訳がない!


 だって!人間も!!私の事を!!!


 でも目の前の人間(ハヤト)は、現にこうして、私の為に命を賭けてくれた…。


 わからない。彼の事がわからない。

 さっきまではわかっていたはずなのに!!


 それが、私は悲しかった…。


 人間の事なんて、どうでもよかったはずなのに。




 どうする?このままこの人間(ハヤト)を助ける?

 それとも…見捨てる?


 いや、いや、違う!私は人間(ハヤト)を…違う!!!




 "ハヤト"を助けたい!!!




 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰


【ハヤト】

 瀕死の重症

 HP1状態


【ナナ】

 思い出した!


【象ライオン(仮)】

 またの名をエレオン

 本当にとっても強い!

 この森でも一、二を争うぐらい強い!

 決してかませではない





【レイア】

 空気



ナナはついに自分の記憶を取り戻す!!

しかし驚くべき事に彼女の正体は

200年前、一国を滅ぼし!

そして神殿に封印されていたドラゴンだった!!


予想外の展開!!


まさかナナが、レイアの話に出ていたドラゴンだったなんて?!

いったいどこにそんな伏線が!?





記憶喪失って実際どういう感じなんでしょうね?


突然思い出したりするのでしょうか…。

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