6 レッツ☆焚き火チャレンジ!!
焚き火をしたのは、人生で二回だけです。
さて、落ち着いて状況を整理しよう!
そうだ!落ち着く事が大事だ!!
まず、目の前の女の子は、只今記憶喪失中だ。
あと、幸いな事に言葉が通じている…
もしかしたら異世界補正というヤツなのかもしれない。
そして、今俺達がいる場所だが…正直わからない。
滝から落ちて、そこからまた結構流されたらしい事はわかる。
つまり、レイアと合流する手段がないという事だ…
結論から言うと…状況はかなり悪い。
この魔物にいつ襲われるかわからない危険地帯に、武器ももたずに放り出され、あまつさえ記憶喪失の女の子と魔法の使えない俺…
最悪だ…
どうする?
ここで待ってレイアが助けに来てくれるのを待つか?
それとも、川を登っていってさっきまでいた場所に向かうか…
どちらにせよ危険はある…
だが何処かで聞いた事がある。
確か…遭難した時は、闇雲に動かずその場に待機だったはずだ。
それなら、今はここでレイアが助けに来てくれるのを待とう!
それに女の子の容態も気になるしな…
記憶喪失…
マンガやアニメではよく見るけど、実際にこの目で見るのは初めてだ。
リアル記憶喪失とか、ちょっとどう扱っていいか困るんですけど…
え~と…確か記憶喪失にも色々種類があったはずだ。
ショックによる一時的な物や、ストレスや何かの原因で、記憶を失うパターン…だったはず…。
この知識も所詮、アニメの情報なので本当かどうかあやしい…
ちなみに情報源は、コ◯ンの劇場版だ。
あれは中々面白かった…ラストのコ◯ン君の超絶スケボーテクや、犯人からの逃亡劇は手に汗握ったものだ。
いつも気になっていたが、あの世界、かなり物騒だ。
普通に拳銃が出てくるし、遊園地では、無差別発泡…。
あの遊園地、コ◯ン君が遊びに行くたびに事件がおこってるんじゃないのか?
だとしたら営業妨害すぎる。
死神コ◯ン君は伊達じゃない…。
…話しはそれたが、とにかく彼女の記憶については、今はどうする事も出来ないという事だ。
ちなみに彼女は今、
何をするでもなくぼーっとしている。
やっぱり可愛い…こう不思議系女子の魅力を感じる。
あと、服が…その…水で濡れていて…うん…アレだよね!
彼女が着ている服は、簡素な布でできた服だ。
その服が若干透けていて、見えてはいけないものが見えている!
レイアほどのプリンアラモードではないが、その僅かな膨らみは、逆に彼女の容姿に寧ろ合っている!!!
いけないとは思いつつ、ついつい見てしまう…ぐへへへ
「どうした…の?」
「え?!いや!その!!水に濡れてて寒くないのかなー???と思ってたんだよ!!決して服が透けててラッキーとか思ってないから!!!」
「そう…。べつに…さむくはない…」
危ない危ない…危うく変態と思われる所だった。
俺は紳士だ。決して変態などではない。
ちょっとプリンアラモードが好きなだけの紳士だ。
「そうなのか?良かった。
まあ今は替えの服なんてないからどうしようもなかったんだけどな」
「あなたは…さむく…ないの?」
「俺か?まあ寒いっちゃ寒いが、耐えられない程じゃない」
日本にいた時から、俺は人より我慢強かった。
そしてどうやらパラメーター的にも、耐久だけはかなり高いようなのでこれぐらいの寒さは耐えられる。
「なあ…何か思い出した事はあるか?」
「…ない…」
「そうか…まああんまり聞いても鬱陶しいだけだよな。でも名前がないのは不便だな…」
「なまえ?」
「そう、あんたの名前だよ…いつまでもあんたなんて呼び方じゃ、なんか嫌だろ?」
「なまえ…わたしのなまえ…だったらあなたがつけて」
「いいのか?」
えー!?
そんな重要な事、俺が決めちゃっていいの?
「…うん」
そう言って彼女は俺をじっと見つめてくる。
どうしよう…キラキラネームとかはダメだよな…
悪魔ちゃんとかは絶対ダメだ。
これは中々悩む…
一時的とはいえ、人の名前を決めるという事は責任重大だ。
「うーん、そうだな…名前がない…ナマエ…ナシ…ナナシ…そうだ!ナナはどうだ?」
「ナナ?」
「ああ、そうだ! ナナ! 嫌なら別にほかのでもいいんだが…」
「…ナナ…ナナ…ううん…いやじゃ、ない。ナナが…いい」
「そうか!良かった…気に入ってくれて」
ふぅ…どうやらお気に召したようだ。
さっきから小声でナナ、ナナと繰り返しているほどだ。
良かった 良かった。
もしナナに、「そんな安直に私の名前を決めるなんて、馬鹿なの?死ぬの??」なんて言われた日には、人間不振に陥っていた所だ。
「ナナ これからの事なんだが、俺には一人、一緒に旅をしている友達がいる。だからソイツが来るまでここで待ってようと思うんだが、いいか?」
「だいじょう…ぶ」
「そうか…まあソイツがいないとろくに動けないってのが本音だけどな」
「どうし…て?」
「えーと、それはな…この森、実はかなり危険な場所なんだ。そして俺には戦う手段がない。だからソイツの助けがいるんだ」
「あなたは…たたかえない…の?」
「ああ、俺には魔力がないんだ…。あと産まれてこのかた、魔物なんかとも戦った事がない。あ、魔力とか魔物のについては知ってるか?」
「…しってる」
「そうか…やっぱり常識とかそういうのは覚えてるタイプの記憶喪失か…◯ん姉ちゃんと一緒だな」
「…?」
「ああ、こっちの話だ」
そう、アニメの話だ。ついでにいうと劇場版だ。
「あなたは…なぜまりょくがないの?」
「えーと…それを話すとなると長くなるというか、信じられないというか…」
"実は俺!この世界のボッチの神様に友達が欲しいっていう理由で呼ばれた、異世界の住人なんだ!だから魔力もないし戦闘経験なんて皆無なんだよ!!ハハハハハハ!"
…うん。ダメだ。信じてもらえる気がしない。
きっとナナの俺を見る視線が、可哀想な者を見る目に変わってしまう。
事実は小説より奇なりとは言うが、本当だったとは…。
「その…体質的な?感じなんだよ。そう!!体質なんだよ!!体質!!」
これだ!これならナナも納得するはずだ!
「たい…しつ…?」
そんな事はなかった。
ああ、ナナの視線が胡散臭い者を見る目に変わってしまった…。
正解の選択肢なんてなかったのか…。
「…俺の事は置いといて、ナナは何か魔法は使えるのか?」
「まほう…おぼえて…ない」
「そうか。まあ仕方ないか」
もしナナが魔法を使えたら色々助かったのだが、そう都合良くは、いかなかった。
まあ魔力のない俺が言える事じゃなよな。
「さて、そろそろ日が暮れる。その前にせめて焚き火だけでも準備しとくか」
多分あと二時間くらいで日が暮れてしまう…。
そうなったらこの危険な森で明かりなしで過ごす事になる。
それだけは勘弁だ。
それに夜に明かりがあれば、レイアが俺の事を見つけてくれるかもしれない。
「たきび?」
「ああ、とりあえず乾いた木の枝や、葉っぱを集めに行こう」
「…わかった」
昨日は魔法でチャチャっとできたが、今日はそういうわけにはいかない。
一から焚き火の準備なんて、小学校の頃の林間学校以来だ。
やり方もうるおぼえだ…。
だがやるしかない。
今夜を生き抜く為にも…。
それから一時間くらいかけて、焚き火に必要そうな物をナナと一緒に集めた。
その時、ナナは以外に力持ちという事が判明した。
下手したら俺よりもだ。
こんなひ弱そうな女の子に負ける俺って…。
なんなの?異世界の人はみんな俺より強いの??
そこんとこどうなんですかレイアさん!?
「…?ハヤト…どうしの?」
「いや、この世界の神様に、ちょっと愚痴を言ってただけだから」
いつの間にかナナは俺の事を名前で呼んでくれるようになった。
少しは打ち解けれたのだろうか?
「よくわからないけど…げんき…だして?」
ナナの純粋さに癒される。
「ああ、ありがとうっ!ナナは良いヤツだな…」
「わたし…が?」
「ああ!今の俺の心の癒しだよ」
「そう…わたしが……いやし…いやし…」
うん!反応も可愛い!!
癒されるわー。
「さて!焚き火の材料は集めたが、ここからが問題だ」
「もんだい…?」
「そう!それは!!」
「それは?」
「火種がない!!」
「…」
あー!そんな残念な人を見る目で俺を見ないで!
残念系はレイア担当だから!
二人もいらないから!!
「というわけで、どうにかして今から火種を作ります!」
「まほう…ないのに、できるの?」
「ふっ 任せておけ…。さあ刮目せよ!!これぞハヤト式!誰でも簡単!楽チン☆火種作りだ!!」
「ハヤト…しき…?」
「そう!ハヤト式!誰でも簡単!楽チン☆火種作りは、小学生から大人まで誰でも簡単に火種を作る事ができる方法だ!さて、まず準備するのがこちらの木の棒と木の板。この木の板を下にして、木の棒をドリルのように木の板に擦りつけます。それはもう親の敵のように!!そしたら自然と火がつくので、そこにさきほど集めた枯れ葉や木くずを近づけて火を大きくしたら…あっという間に火種が出来ちゃった!!」
「ハヤト…うるさい…あとひもついてない」
…。
そうだ。そんな簡単に火がつくわけがない…
もっと専用の道具がいる。
ただの木の棒を使ったって、ただ手が疲れるだけだ。
わかってた。
俺、わかってたから!
ノリと勢いだけでは、火はつかないって!!
はぁ…。ナナの好感度がどんどん下がっているような気がする。
せっかく名前で呼んでくれるようになったのに…。
どうしよう。
次から「ハヤト式(笑)さん」とか言われたら…。
「…ハヤト、それ、貸して」
「え…?このハヤト式火種セットをか?」
「…うん」
「あ、ああ はいよ」
「…ん」
どうするつもりだろ?
ハヤト式火種セットは、最所の段階で詰んでいる。
何処をどうしても火がつかないのだから。
「……………………………………。できた」
「え?!」
見てみると確かに火がついている!
「でもどうやって…あ!」
ナナの手に、血がにじんでいる。
きっと凄まじい力で木の棒を擦ったのだ。
「おい!ナナ!!お前手が!!」
「…ん へいき。それよりはやく…たきび…ひが…きえる」
「あ、ああ。でも!焚き火が出来たらすぐに手当てをするからな!待ってろ!」
急いで種火を大きくしていく…。
そこからは簡単だった。
昨日も焚き火は作ったのだ。
火種さえあれば問題はない。
今はしっかりと燃えている。
俺は焚き火を作ったあと、急いでナナの手当てをした。
といっても、傷口を水で洗って、服をちぎって作った即席包帯で、ぐるぐる巻きにする事しか出来なかったが…。
「ナナ?手は大丈夫か?まだ痛むか?血はもう出てないか?何かあったら直ぐに言えよ!」
「だいじょうぶ…。ハヤトは…しんぱいしすぎ…。それと、ふく…よかった…の?」
「服?こんなんもんよりナナの手の方が大事に決まってるだろ?」
「そう…。ありがとう…」
「礼を言うのは俺の方だ!ナナのお陰で、こうして明かりも確保出来たし、ついでに体を温める事も出来たんだから」
「…ん」
辺りはもう真っ暗だ。
あの時、ナナが火をおこしてくれなければ、今ごろ暗闇の中で身動き一つとれなかったろう。
本当にナナには感謝だ。
「それにしても、やっぱり腹がすいたな…」
「うん…」
今日の夕食は、薬草だけだ。
ナナが食べれる薬草を知っていたお陰で夕食にありつけたはいいが、やっぱり薬草だけだと足りない。
ナナも見た目によらず、よく食べるタイプのようだ。
さっきから腹の虫が鳴くたびに、顔を赤らめている。
可愛い…。
「まあ、無い物ねだりしても仕方ないし、今日はもう寝るか!」
「そうする…」
「交代で火の晩をしながら寝るようにしよう。まずはナナが先に寝てくれ。あとで起こすから」
「わかった…」
さて、これからが本番だ。
夜の森は、何が起こるかわからない。
気をしっかり持たなければ!
「…ハヤト」
「ん?どうした?」
「…おやすみ」
そう言ってナナは寝始めた。
色々あったが、ナナとは上手く打ち解けたようだ。
…結局ナナの正体はわからずじまい。
けど悪いヤツじゃないのは確かな事だ。
こんな素直で可愛いヤツに悪いヤツはいない!
ばっちゃんが言ってた!
これから何が起こるかわからない。
けどナナとなら何とかやっていけそうだ。
「ああ、おやすみ」
そうして俺は、ナナの頭に手を置こうと…
「GYAOOOOOOOOOOOOON!!!!」
すると突然!聞いた事のある魔物の咆哮が耳を貫く!!
「この鳴き声は!?」
まさか!?ヤツなのか!!?
そうして森の中から飛び出してきたのは!!
「象ライオン(仮)!!!」
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
【ハヤト式!誰でも簡単!楽チン☆火種作り】
ハヤトが考案した、画期的な火種の作り方!
これさえマスターすれば、何処でも好きな時に焚き火ができるようになる!!
用意する物は、【木の棒 木の板 木くず 枯れ葉 ナナ】
たったこれだけ!さあ君も今すぐチャレンジだ!!
【象ライオン(仮)】
再び登場
前のヤツの父親だったりする
彼は無事、息子の敵をとれるのか!?
【次回予告】
ハヤト達の目の前に現れたのは
逆襲の象ライオン(仮)!!
この強大な敵を前に、ハヤト達に活路はあるのか?
次回「ハヤト 死す」こうご期待!!
ネタバレする次回予告
ある意味伝説ですよね。