4 チート
ついに異世界冒険が始まります!
神殿を出て、大体一時間ぐらいたったろうか?
このし◯がみさまの森は中々に進みにくい…道と呼べる物はなく、道なき道を歩くしかない。
日本にいた頃はバイトで身体を鍛えていた俺だが、たった一時間程度でかなり疲れた…
正直旅を舐めていた…ファンタジー物の小説にも旅は厳しいとは書かれていたが、ここまでとは…
一方のレイアはというと…
「ハヤトさん 見てください!あの綺麗な花!あ、それに蝶までいますよ!!」
全く疲れている様子はない…むしろ元気だ。
何故かというと、なんでも魔法の力で身体能力の底上げをしているんだそうだ。
やっぱ便利だな、魔法…
クソっ俺にも魔法が使えれば!!
「あの…ハヤトさん?お疲れでしたら少し休憩します?」
いやいや、その気遣いは嬉しいが、まだ旅立って一時間…そんなすぐに休憩してたらいつまで経ってもこの森を抜けられない。
「いや、まだまだ大丈夫だ!どんどん逝くぞ!!」
別に女の子に体力で負けるのが悔しいとかそんなんじゃない!
半ばやけくそ気味なのも決してそんな理由じゃない!!
「そうですか…あの…辛くなったらいつでも言って下さいね?まだまだ先は長いですけど、私はハヤトさんのペースに合わせますから」
ああ…レイアの優しさが痛い。
「サ、サンキュー…ところでさ、人の住んでる村に着くのってどれくらいかかりそうだったっけ?」
「ええと、このペースで行くと…この森を抜けるのに大体三週間ぐらい……そこから天極山脈と呼ばれる山脈を越えるのに一ヶ月、そこからまた森を二週間ぐらい歩けば人が住んでる村があるはずです…」
ヤバイ…心が折れそうだ。
まさか人里に着くまでそこまでかかるとは…
それもこれもあの神殿があった場所に原因がある。
なんでもあの神殿があった場所は、この世界の東の最果て、秘境中の秘境にあったからだ。
確かに神様のいる場所が、そんなホイホイ行ける場所にあるとは思ってなかったが、まさかそこまで人里から離れているとは思ってもみなかった…
ああ…何か徒歩以外の移動手段を確保しないと本気でヤバイ…時間の問題とか俺のメンタル的に…
やっぱ異世界なんだから馬とかに乗りたいよな!いや、いっそのことドラゴンとか!
そういえばこの世界にドラゴンはいるのだろうか?
いるなら会ってみたい!
実は俺、ドラゴンがかなり好きだ。愛してると言っていいね!ファンタジーの醍醐味といえばドラゴンと言っても過言ではない!ドラゴンのいない異世界なんてチャーシュー麺にチャーシューがのっていないような物だ!!つまり詐欺だ!!もしこの世界にドラゴンがいなければ訴訟も辞さない!!!
いや、どこに訴えるかといったら主に目の前の神様にだが…
「なあレイア、この世界にドラゴンっているのか?」
「ドラゴンですか?はい、もちろんいますよ」
いるんだ!ドラゴン!
この世界はすばらしい!!ありがとう神様!!
「ちなみにドラゴンはこの世界の最強種に位置します。あと…その、とっても凶暴で、まずあったら殺されます。飛べるので逃げるのも不可能です。もし遭遇したら死を覚悟しましょう。あと二百年ほど前ですが、たった一匹で国を一つ滅ぼしたドラゴンもいました…ですのでドラゴンは、この世界において最強にして最悪の存在なんです…」
「マジか…」
ドラゴンさんコエー。誰だよ、ドラゴンに会いたいとかいったやつは?
ドラゴンさんと関わるのはよそう…死にたくないし。
「ドラゴンのほかにも魔物とかはいるのか?」
「はい、います。というかこの世界には魔物しか居ません。前も説明しましたが、この世界の物全てには魔力が宿っています。ですのでハヤトさんの世界のような普通の動物はいないんです。でもすべてが凶暴という訳ではなく、家畜として人間に飼われている魔物もいます」
「成る程、という事は俺の世界で言う動物のことを魔物って呼んでる感じか」
「はい!その通りです!」
「…ちなみに凶暴な魔物もいるんだよな?」
「そうですね。この世界の大半の魔物は凶暴です。旅の一番の危険は、魔物の襲撃などですね」
「そうか…じゃあ目の前にいるこのライオンに象を足して二で割ったようなコイツは凶暴なんだな」
「…はい?」
「GAOooooooooooooooN!!!」
そう言って象みたいにでかくて鼻の長いライオンの顔した魔物は襲いかかってきた!!!
ヤバイって!何この化物!こんなん余裕で死ねますわ!!
「レイア、逃げるぞ!!」
そう言ってレイアの手を取る!
とにかく逃げないと!こんな化物と戦っても勝てる気がしない!!
でも逃げきれるのか?コイツに?ヤバイ…どうにかしてレイアだけでも逃がさないと!!!
「ハヤトさん!大丈夫です!ここは任せて下さい!!」
そう言ってレイアは繋いでいないほうの手を象ライオン(仮)に向ける
「はっ!!!」
するとレイアの手から炎の塊が放たれた。
それに当たった象ライオン(仮)は激しい炎に包まれて絶命した…
一瞬だった。
…なんだろう。どうやら本当の化物は隣りの人物だったようだ…
ていうか今のメ◯ゾーマじゃね?まさか目の前で本物のメ◯ゾーマを見られるとは…
「ふぅ…危ない所でしたね。でももう大丈夫です!ハヤトさん」
そう言って満面の笑みで俺の手を両手で握り返してくる。
「いや…その、今のも魔法…なのか?」
「はい!火炎系の初級魔法です!」
「初級!?」
あれが!?メ◯ゾーマが!!?
「私の魔力量だと初級でもあれぐらいの威力になるんです…加減が難しくて、ついオーバーキルしちゃいました☆」
そんなテヘ☆ペロみたいな顔されても…
もしかしてこの神様、凄いチートの持ち主ではなかろうか?
「なあ…レイア、レイアの魔力量は、この世界の平均の何倍なんだ?」
するとレイアはキョトンとした顔をした。
「何倍…ですか?そうですね…大体一千倍ぐらいですかね?」
「なん…だと…」
究極のチートがここにいた…
チーターや!こんなんチーターや!!!
「どうしんですかハヤトさん?まさかどこかケガでも!?見せて下さい!すぐに治しますから」
そう言ってレイアが俺の服を脱がせようとする。
ちょっ、イヤン!エッチ!
「いやケガはないから!落ち着け!それにしてもレイア、お前ってかなりのチートなんじゃないのか?」
「私がですか?そんなわけないじゃないですか。確かに魔力だけは多いですけど、それだけですよ」
これである。
本人に自覚はないようだ…
「まあいいやそれで…。それにしても今のはビビったな。あんなのがこの世界にはうようよ居るのか?」
この世界、かなりのスパルタだな。
俺がこの世界の住人なら即ギブだわ…
「いえ、そうじゃありません。この辺の魔物だけこんなに強いんですよ」
「そうなのか?」
「はい、なんと言いますか…。この辺はゲームで言う所のボスを倒した後の隠しダンジョンみたいな物ですから」
そりゃそうだよな。
あんなのがうようよ居たらこの世界の人間は滅びてるわな…。
ていうかそれを瞬殺したレイアって一体…
「なあ、ゲームで閃いたんだが、レイアの強さをゲーム的な感じで俺に教えてくれないか?ついでにこの世界の一般的な強さと俺の強さも」
「ゲーム的なやつ?ですか?パラメーターみたな感じで良いですか?」
「ああ、出来るか?」
「うーん、出来るかは分かりませんけど、やってみるので待ってて下さい」
そう言ってレイアは紙とペンを取り出してぶつぶつと何かを呟いている。
「うーん、どうしようかな?相手の魔力を見る魔法にアレンジを加えて、相手の筋力や耐久度を見れるようにして、それから…」
どうやら、即興で魔法を作っているようだ。
どんだけ…
「よし!これなら!!」
そう言って紙に何かを書いている。
「ハヤトさん、出来ました!!」
そうして俺に見せてきたのは…
レイア
女性
体力7
筋力6
耐久5
俊敏12
魔力10000
技量9500
村人(一般的な物)
体力10
筋力10
耐久10
俊敏10
魔力10
技量10
…化物じゃないですかー、やだー。
まず数値がおかしい。
なんだこれは…
俺が呆然としているとレイアが説明してくる。
「体力や筋力、俊敏はそのままの意味です。耐久はその人の打たれ強さですね。魔力はその人の魔力量を示しています。後、技量なんですけど、これはその人の魔力の操る力を数値化しています。それじゃハヤトさんのも作りますね!」
そう言ってレイアは目の色を変えて俺を見た。
文字通り目の色を変えてだ!
え…それ魔眼じゃね?
「えーと…よし!ちょっと待って下さい。紙に書きますから」
いろいろツッコミどころはあるが、どうやら今ので俺のパラメーターもわかったらしい。
「出来ました!はい!これがハヤトさんのパラメーターです!」
そう言って新しい紙を渡してくる。
これがそうなのか。
ちょっとワクワクするな。ゲームじゃ当たり前みたいに自分の事を数値化して見れるが、リアルじゃ自分のパラメーターなんて見る事なんて絶対に出来ないからな!
それに異世界転移といえばチートだ!!
もしかしたら俺にも何かしらのチートが宿っているかもしれない!
どれどれ…
上村隼人
男
体力14
筋力15
耐久25
俊敏11
魔力0
技量0
…。
微妙だ。
当然のように魔力と技量は0だったが、ほかは平均より少し高い。
悪くはない…悪くはないが、正直レイアのを見た後だとどうしても見劣りしてしまう…。
そして俺には…なんのチートもないようだ。
マンガやアニメみたいに異世界に転移したくらいじゃチートなんて授からないようだ。
絶望した!俺に絶望した!!
「はぁ…」
俺の様子を見兼ねてか、レイアが励ましてくる。
「ハヤトさんは耐久が高いですね!凄いです!私なんてたったの5ですよ!!」
「そんな…レイア様の魔力に比べたらゴミですよ。フッ」
「ハヤトさん!?なんか私の呼び方変わってますよ!?」
「ゴミ虫のわたくしめにはレイア様を呼び捨てになんてそんな恐れ多い事出来ませんよ…」
「ハヤトさんはゴミ虫なんかじゃありません!元気出して下さい!それにこんなの所詮ただの数値です!数値なんかで人の本当の力なんて分かりませんよ!!」
「レイア……いや、そうだよな!!まだ俺の本当の力は隠されているだけだよな!!」
「はい!ハヤトさんはまだ本気出してないだけです!!」
「よし!それじゃ時間も食ったし張り切って進むぞ!」
「はい!!」
そう言ってなかばヤケクソ気味に歩き出す!!
決して現実逃避ではない。いや、本当に…
そこからの旅は順調に進んだ。
レイアの魔法で木々を吹き飛ばして道を作り、ただその道を歩くだけの簡単なお仕事だ。
環境破壊?ナニソレおいしいの?
時々魔物が襲ってくるが、レイアの魔法で瞬殺だ。
ちょっと魔物が気の毒だ…。
ちなみに俺は武器を一応持つ事にした。
なんか装飾が派手な西洋の剣だ。
名前はエクスカリバー(仮)にした。
このエクスカリバー(仮)だが、神殿にあった適当な剣を盗…借りてきていた物だ。別に俺の厨二心が刺激されて持ってきた訳じゃない…。
レイアにも武器を持つか聞いたがいらないそうだ。
そりゃそうだよな。
あんな魔法が使えたらいらないわな。
そんなこんなでもうすぐ日が暮れそうだ。
「レイア そろそろ野宿の準備をしよう」
「あ、そうですね。日が暮れる前にいろいろしなきゃですね!」
そう言って薪火の準備やら簡易な寝床を作っていく。
「今日はいろいろあったが、とりあえず順調だな」
「そうですね!これなら思ったよりも早く人里に着けるかもですね」
「ああ、ま!それもこれもレイアのお蔭だな!」
「そ、そんな!私なんて!!別に!!!」
そう言ってレイアは顔を真っ赤にして慌てている。
どうやら人に褒められるのが初めてのようだ。
「それに、元々は私のせいでこうなったんですし、お礼なんていらないですよ…」
レイアが暗い表現でそう答えた…。
「…そんな事言うなよ。確かに最初は帰れないって聞いてそれなりにあせったが、今はそうでもない。それになんだかんだで結構楽しいしな。だってアニメやマンガの世界に飛び込んでるみたいなもんだからな!アニメ好きには堪らないぜ?」
「あ、ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです…
私も!初めての事ばっかりでとっても楽しいです!!それに…こうして誰かと旅をするなんて夢にも思っていなかったですし、本当に楽しい事ばかりです!!」
そっか…。レイアにとっては何もかもが初体験なんだよな。
そう考えると神の力を失ったのも悪い事ばかりじゃないかもな…
「その…あれだ!これから何があるからわからない。でもきっと楽しい事もいっぱい待ってるはずだ!だから二人で乗り越えて行こうぜ!」
「はい!ハヤトさん!」
そうして俺たちは初の野宿を楽しむ事にした。
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登場人物
【上村隼人】
凡人
人より打たれ強い
Mではない
魔力は0
当然技量も0
チートなし
【レイア】
チート
魔力多すぎ…
技量も高いので新しい魔法も簡単に作れる
チートとは、彼女の為にある言葉
特技は環境破壊
【象ライオン(仮)】
正式名称エレオン
本当はかなり強い
熟練の冒険者でも敵わないほどには強い
その巨体と爪や鼻を駆使した戦いで相手を倒す
レイアにオーバーキルされた
???「ハヤトさんを危険にさらしておいて、ただで済むとは思わないで下さいね?」
この世界の普通の魔術師の魔力量は50~100ぐらいです。
100~200ぐらいが天才で、200を超えると歴史に名が残るレベルだったりします。
何が言いたいかと言うと、レイアさんマジチート