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ストール・ターン  作者: 柚木原
序章
1/1

序章1

初投稿作品となります。いろいろ拙いところもありますが、よろしくお願いします。

 身体にのしかかる強烈なGに歯を食いしばる。こらえきれず、かすかな呻きが漏れ出すのも構わず、僕はさらに操縦桿を引いた。



 真上に顔を向けると、主翼と尾翼の先端をオレンジ色に塗装し、胴体と主翼に14と書かれた高等練習機が飛んでいるのが見える。その機体を操る操縦士も僕と同じように歯を食いしばり、こちらを見上げているはずだ。



 同じ軌道をたどりながら、徐々に操縦桿を引いて、二機で描く円の内側に切り込んでいく。

 互いの機首が向き合ったのはほぼ同時だった。機体を垂直に立てたまま、ナイフエッジですれ違う。

 すれ違った瞬間にエレベータ・アップ。首を限界まで上にあげ、すれ違った相手がどう機動したかを確認。14番機は斜め下に切り返したみたいだ。



 そのまま背面ループへ移行。ループの頂点で一度ロールして失速寸前まで速度を殺す。さらにエレベータ・アップ。

 背面急降下。

 14番機は無防備に背中をこちらに晒していた。

 撃つ。

 目測を誤ってこれは当たらなかった。



 驚いたのか、さらに下に逃げようと機首を翻すのが見えた。

 相手はターンの途中だ。見越し射撃は必要なく、ただオレンジ色の光学式照準器の中央に機体を捉えるだけでいい。

 撃つ。

 右フットバーを蹴って修正。

 撃つ。



 尾翼から機体前部にかけてまんべんなく赤いペイント弾が命中するのを確認した僕は、軽く機体をバンクさせて周囲の状況を確認。乱入をしてくる教官機がいないか索敵を開始する。勝ったからといって油断すると模擬戦闘中はどこかに隠れている教官機が急襲してきて、それに撃墜判定を下されると大幅に減点されてしまうからだ。



 高度は現在五千五百メートル。ロールしながら上昇し、隠れていそうなところを探る。

 空というのは隠れるところなどないように思えるけど、そうでもない。少し先にある入道雲なんて格好の隠れ場所だし、さらに上空の帯状の雲にだって隠れられる。それに下に広がる雲海の中に潜り込んで不意打ちを狙うやつだっているんだ。

 今回はなにもないようだ。高々度を飛行する観測機から無線通信が入る。



『試験終了だ、遠崎学生。乃木坂学生と二機編隊を組んでRTB』

「了解。遠崎学生、帰投します」

 応答してから無線を切り替える。封鎖されていた乃木坂との無線はすでに開通している。

「帰投する。ポイントは?」

『B332。高度は・・・二千五百』

「了解。雲の下か、南西から向かう、ポイントB350で合流」

『了解。B350で合流する』



 今日の模擬戦の相手だった乃木坂は一回生の時の同室で、座学も素行も実技も優秀な男だ。普段は物静かなくせに模擬戦中はしつこいくらいケツにかじりついてくる攻撃的な性格なんだけど、どうも先手を取られると怖気づいて中途半端な逃げ方をしてしまう癖がある。つまり先手さえとれば大したことのない相手だ。地上では気のいい奴なんだけど、なにもかも完璧な人間がいてもたまらない。

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