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機甲伝  作者: あきあかね
1/1

第一話【暗闇】

重く爛れ込む夜の森林の中


一寸先は闇とはこのことをいうのだろうか


上を見上げれば微かに月の光が見えるかどうかである


「…………い、おい!特工兵S、応答せよ!」


思わず体が反応した


知らぬまに後衛部隊から無線通信がかかってきていたのだ


きっと寝ぼけていたのだろう

俺は慌てて通信機へと返答した


「こっ、こちら特殊工作兵S。まもなくBポイントを通過……」


「了解。そのポイントから機甲兵の警備区域だ、現状に応じて対処せよ。」


「了解。通信終了。……………………ふぅ。」


はっきりといえば眠いの一言である


元はといえば先日しっかりと睡眠をとれなかった俺が悪い訳なのだが......


まあ、それはそれとして時々見え隠れする赤く細い光の筋が恐ろしく見えて仕方ない


何しろ相手はこの地形に最適にカスタマイズされたいわば専用のAIを積んだロボットの兵隊である


こういう真っ暗闇は奴らにとってお手の物なのだ


「やっぱり気が重くなるよ…………」


俺はため息混じりにそう呟いた


ジーーーーーー……


「――――――――まさか、な?」


俺は近くの茂みに見を潜めじっと耳をすませた


ほんの僅かであるが機甲兵の脚部モーターの駆動音が聞こえた…そんな気がしたのだ


「…………ゆっくり動かしても結構な音のなるあのモーターの駆動音をここまで殺すなんてな。流石は専用機ってか。」


技術力に驚いている場合ではない


すぐそばに機甲兵が近付いているのだ


「音の方向からして......右後方。」


俺はその方向へと振り向いた


無人機特有のスコープが向かいの木の幹から見え隠れしていたのがぼんやりとであるが、目視できた


スコープの高さからして大きさは4~5メートルといったところか


同僚の偵察兵によるとここの警備を任されている無人機甲兵の装備は対人兵器のみだと聞く


まあこんな夜中専用の機体なのだしこの時代ステルス迷彩なんていかしたもんもないし――――第一、一般的な機甲兵は隠密行動に向いていないのだから


「何にせよ、見つかればお陀仏だな。」


そんなことを頭に巡らせているうちに、先程の無人機は別方向へ


俺はほっ、と一息ついた


だが警備に使う無人機が、この広大な森林たった一機というわけであるはずがない


「敵拠点まであと......ざっと3キロ。もう少しだな。」


俺は気を引き締めひょっこりと茂みから顔を出した


右見て…


左見て…


右見て…


「――――よし。」


何がよしなのか俺自身もわからなかったが取り敢えず前へ前へ


目的地を目指して歩いた





「ふぅ、こちら特工兵S。目的地に爆弾の設置終了、これより帰投する。」


「了解。」



なにはともあれ目的は果たしたわけだ


疲れが出たのか欠伸がでた


「さーって、帰るかね。」


時間帯はもうすぐ朝を迎えようとしていた



だが、辺りは一向に明るくなる気配がなかった


「どういう……ことだ……?」


むしろ暗くなる一方である


俺はふと、【漆黒の霧】と呼ばれる特殊部隊の噂を思い出した


一切の光の侵入を許さない特殊な煙を用いた電撃攻撃を得意とする所属不明の部隊だ


「もしこの暗闇の原因がそうならば――――」


考える暇はなかったようだ


まだ爆弾の起爆予定時間でもないのに爆発音がはっきりと聞こえたのだ


しかし爆発音が聞こえてきた方向は前方


敵拠点は後方


次はドスッという軽い地響きとかすかに聞こえる金属の擦れる音


この感じを俺はよく覚えている


「機甲兵の着地音だ......!!」


このままでは戦闘に巻き込まれる恐れがある


俺は後方部隊と連絡をとりながら右方に走った


「こちら特工兵S!! 第三勢力の出現を確認‼」


「こちら後方部隊、敵拠点一帯に黒い煙を感知。そちらに回収用のホバーバギーを送った。速やかに合流地点へ移動せよ。」


「了解‼」


こんなときに厄介なことに巻き込まれたものだ


次第に聞こえてくる独特の駆動音、銃声、木々のなぎ倒れる音


俺は合流地点へ走った


時たま飛んでくる流れ弾に怯えつつも合流地点へたどり着いた


「......無人かよ」


どうやらこのホバーバギーはここまで遠隔操作で送られてきたようだ


つまり後方部隊は自分で操縦して帰って来いというのだ


「――ええい!!どうにでもなれぇ!!」


俺は置かれていた鍵をさしてエンジンをかけた


正直乗り物の操縦は必修でやらされた機甲兵しか出来なかったのだが俺は躊躇わなかった


「イヤッッホォォォオオォオウ‼」


俺は気を紛らわせるために叫びながらフルスロットルで運転をした


どうせこの状況なのだからバレることはないと思ったからである


そこから先のことは無我夢中で覚えていない


気づいた頃には医療班のベッドの上


どうやら俺は後方部隊に合流する一歩手前で大木に衝突してバギーをクラッシュさせてしまったらしい


俺は一応無事だったそうだ


「始末書......」


俺は深くため息をついてベッドに潜り込んだ




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