第一話
上手い具合に煮詰まって来た影無し万屋のお話です。
名前は後日ってことで
「・・・・・なんじゃありゃ」
全身真っ黒なスーツに身を固めた17歳ほどの少年は一人つぶやいた。目の前にはとぐろを巻いた蛇に巻きつかれたブレザー姿の中学生の少女の姿がある。
彼は昔から妙なものを見る眼があった。妖怪、幽霊、そういったものの類である。
しかし、アレは彼の見た中でも一番大きいのではないだろうか?
「ねえ「喰って」もいいかい?」
何処からか声がした。しかし姿は無い。
「あ、いや・・・あの女の子から事情を聞いてからだよ。流石にいきなり「喰って」もしも命レベルで繋がってたら拙いし」
「なんだ、つまらないなぁ」
声はなんと彼の影から聞こえてきた。
少年は少女に声をかけるために近寄った。
☆
『バケモノ』
『近寄るな!!』
あたしはバケモノじゃないんだよ。何で何で、みんなあたしの話を聞いてくれないの?普通に話したいのになんでなの?
「ねえ、君」
暗く閉ざされたあたしの世界に一筋の光が差した瞬間だった。
☆
「あなたは?」
「うーん・・・・通りすがりの悪魔かな」
「悪魔・・・・」
少年の一言に少女は固まった。
少年が慌てて訂正する。
「あ、ごめんね。別に悪魔って言っても悪いやつじゃないから」
「この際悪魔だって何だっていいわ、お願い、助けて!」
「一体どうしたのかな?」
「実は・・・・・」
彼女が訥々と自分の身の上を話し出す。
少年はうなづきながら話を聞いた。
「なるほどね、「文字」が美味しいんだ」
「ええ、お医者さまもどうにもできなくて」
「できないだろうなぁ、普通の人じゃ」
「あなたならどうにかできるのよね!」
悪魔だと名乗った少年に少女は縋る。
「ま、できないことはない。ただね、それが正解かもわからない」
「正解?」
「人とバケモノはね共存しながら生きたりお互いを駆逐しながら生きてる。もしかしたら君の体は極端に食べられるものが偏っていて、この問題を解決したら逆に生き辛くなるかもしれないんだ」
「え?」
少年の意外な答えに少女が固まる。そんなこと考えもしなかった。
「だからね、ハナシ聞いてみよう」
少女と少年を黒い影が覆った。
影が消え去ったとき、少年の姿も少女の姿も消えていた。