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第43話 アクセルの旧友

 足早に歩くアクセルの後ろに従いながら、先ほど盗賊もどきから聞きだした内容を聞かされたリオとティルは、驚愕の表情を浮かべた。

 

「本当の狙いは先生かイクミ!?」

「どこのどいつだか知らねぇが、二人を狙うなんて許せねぇぜ!」

 

 冒険者ギルドの一階に着くと、アクセルが軽食屋で声を張り上げる。

 

「ブレック! ステア! 居るか!?」

 

 アクセルの声に反応して、軽食屋のテーブルが並ぶ真ん中から二本手が挙がる。

 屈強な男性戦士と露出の激しい女性剣士だ。

 

「どうしたのアクセルちゃん。私達に声かけるなんて珍しいじゃない?」

「ニシシ! どうした? 探索にでも出かけるのか?」

「二人に手伝って貰いたいことがあるんだ」

 

 リオは自分の耳を疑った。先ほどの声は前者が屈強な戦士で、後者が露出の激しい剣士だったのである。アクセルも変わった性質を持つ人だと思っていたリオだったが、まさか友人まで異色だとは思っていなかった。

 アクセルが二人を近くに呼びだす。屈強な戦士は背も高くアクセルより二〇センチは高い。胴体を守る重そうな分厚い鉄板みたいば鎧は、肩から先を守る部分は付いていない。そこから覗く丸太のように太い腕は真っ黒に日焼けしていて、大小様々な傷はこの男性が数々の戦場を潜って来た事を物語っていた。露出の激しい女性剣士は、シャロンのようなスレンダーセクシーとは少し違い肩や腰、太腿の筋肉が発達していながらも機能美を感じさせる物だ。身を守る装備は胸部を隠す程度の金属で出来た胸当てと小手、すね当てのみで、それら以外は最低限の布しか付けていない。細かい傷が目立つがそれすら彼女の魅力を引き立てる物に見える。

 屈強な戦士がリオとティル、ユリアをに礼を取った挨拶をする。

 

「コイツらは? アクセルのダチか? 若いなぁ~冒険者なのか? 俺はステア! よろしくな!」

「お初にお目に掛かります。私はブレック。アクセルとは旧知の友人です。ん?……あらヤダ! この子たち三人とも可愛いわぁ~! アクセルぅ~私に頂戴!」

 

 リオ、ティル、ユリアは本能的に身の危険を感じて、三歩ほど下がって身構えていた。その腕を見ると三人とも鳥肌が立っている。

 

「おいおいブレック。あまりからかってやるなよ? それに残念ながら、真っ黒の奴は女だ」

「フフフッ、みんな身構えちゃって可愛いわぁ~……黒い子は女の子なのね。勿体無いわぁ~」

 

 リオは自分に『あれは敵じゃない、敵じゃない……』と言い聞かせ気を取り直すと、引きつる顔を何とか笑顔に変えながら三人の紹介をした。

 

「僕はリオ、リオ=アストラーデ。冒険者では無く、このレナスで錬金術の勉強をしています。隣の男の子はティル=ガーラント、王立魔術学園で魔術の勉強をしています。こっちの全身真っ黒の装備をしているのは、ユリアーヌス=ラインベルガーで剣を使って戦う冒険者です」

 

 ステアと名乗った女性剣士が感心したような声を上げる。

 

「へぇ~錬金術かぁ~……俺、シャロンって錬金術師とは何度か一緒に冒険したことあるぜ! 良い女だよなぁ~……涎が出ちまうぜ」

「先生のお知り合いなんですか。先生は、ちょっと他の冒険者の方達と外へ出ていて、後二日程は帰って来ませんけど」

「シャロンの弟子かぁ~そうかそうか! これから、いろいろと仲良く頼むぜ! 兄弟!」

 

 男よりも男らしい女性剣士のステアに、防衛本能をくすぐる屈強な戦士、暴走落ち込み癖があるアクセル……このメンバーで冒険なんて言ったら大変なことになるような気がするリオだった。

 

「自己紹介も済んだことだし、本題に入っても良いか?」

 

 アクセルが顔つきを真剣な物に変えて、ブレックとステアに声を掛ける。

 空気が変わったことを敏感に感じた二人もアクセル同様に真剣な顔つきへと変わっていた。

 

「さっきも言った通り、二人には手伝って貰いたいことがある」

「へっ水臭いな! 改まってなんだってんだ?」

「そうよぉ~私達の仲じゃないのぉ~何でも言っちゃってよ!」

 

 アクセルは二人の反応に小さく笑みを溢すと、本題を告げた。

 

「酒屋ガーラントでイクミという少女を守って欲しい」

「イクミ? イクミって誰だ?」

「あぁ~アレよ! ほらぁ~この間、魔術学園でやってたダンスパーティーで、ミスコン優勝した子よぉ~。最近、どこかの酒屋で看板娘してるって噂になってたじゃなぁ~い!」

「あぁ~!! 黒髪の美少女か! 俺も一度見てみたいと思ってたんだ! その子がどうしたんだ? 熱烈なファンから被害でも受けてるのか?」

 

 イクミのことを少しでも知っているなら話は早いと、アクセルは盗賊もどきから得た情報を二人に伝えた。イクミ、もしくはシャロンを狙っている貴族風の男がいるということ、リオを狙って盗賊に偽装した殺し屋数人が現れたこと、これから殺し屋が落合うはずだった場所でその貴族風の男を捕えようとしていること。

 二人は話を途中茶化すこと無く真剣に聞いていると、ニヤリと笑みを浮かべて頷いた。

 

「そんな卑怯な奴は許せねェ~し! 何より美少女を守るのは俺の使命だからな!」

「リオちゃんの命を狙うなんて許せないわ! 本当なら私がブチ殺しに行ってやりたいとこだけど、リオちゃんに貸しを作るのも悪く無いわね……良いわ! 引き受けてあげる!」

 

 二人は、了承するや否や、投げキスとガッツポーズを挨拶代わりにして酒屋ガーラントに向けて走って行った。


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