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プロローグ

――空が、黒くなった。


最初は天候の異変だと思われた。

気象レーダーに映る異常反応、衛星画像を覆い尽くすノイズ。だがそれは雲ではなかった。数十万、いや数百万の黒い影が、秩序だった隊列を組み、世界中の都市上空を移動していた。


カラスだった。


東京、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン。

時差も国境も関係なく、同時に、同じ行動を取っていた。まるで一つの意志に統率されているかのように。


「ありえない……」


防災センターでモニターを見つめていた職員が呟いた。

カラスは信号機の上に止まり、電線に整列し、通信塔を囲むように旋回していた。偶然ではない。餌を求めている様子もない。攻撃も、まだ、ない。


だが――観察されている。


人間の動線、交通量、警備配置。

カラスたちは、学習していた。


その夜、世界中で通信障害が発生した。光ファイバーが噛み切られ、ドローンが墜落し、非常用アンテナが破壊された。無秩序ではない。明確な優先順位と役割分担があった。


専門家は「異常進化」と呼び、軍は「新種の脅威」と定義した。

しかし誰も、最も重要な可能性を口にしなかった。


――彼らは、もう“動物”ではないのではないか。


夜明け前、カラスたちは一斉に羽ばたいた。

数十万の羽音が空を震わせ、都市は影に沈む。


そして世界は、気づき始めていた。

この黒い知性が問いかけているのは、ただ一つだと。


人間は、共存に値する存在か。

それとも、排除される側か。

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