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cyber hunter  作者: M MAN
ブランヴァンサー編
19/27

[ビル内]

 リーダーは躊躇いもなく、足をビル内へと入れた。

 その姿はどこか怖いもの知らずという感じで、憧れの存在に近い。

「入って来い。遅れないでついてこい」


 リーダーの後に、どんどん入っていく。

 ライルは最初怖さがあったが、皆の活気に負け、少し遅れを取ってビル内へと足を踏み入れた。

「ちょ...」


 何か言うまでもなく、ビル内は凄惨な状況だった。

 入ってすぐ見えた光景は、血まみれの変死体。

 ある者は顔を引き裂かれ、ある者は顔そのものがなくなっていた。

 泡を出し、窒息死しているような者もいる。


 ライルは思わず吐き出しそうになってしまった。

 他のメンバーも眉をひそめ、足元をよく確認しながら進んでいく。

「酷いな...」


 ガイアンは思わず声を出してしまった。

 他のメンバーも同じことを思っているだろう。


 足元を確認しないと暗闇で死体が見えず、踏んでしまうかもしれない。


 ビル内は足音立てたら2階まで響き渡るくらいに静かで、暗い。

 エントランスはまだ地上の光が差し込んで、ギリギリ見えるくらいだ。

 ラッチがライトを出し、スイッチを押した。


「静かに上に行くぞ...それぞれいつでも戦えるように準備しておけ」

 リーダーは後ろを向いて、アリの大きさのような声で言った。

 アドナスは唾を飲み込んだ。



 

 階段は監視カメラの赤い点々が点滅し、暗闇の中を照らしている。

 ほんの一部だが。

 勿論監視カメラは機能していない。セキュリティールームにはパソコンに寄りかかって静かになっている男が2人いる。


 皆周りを見回している。

 一番後ろはラッチだ。



 カン...

 ラッチは咄嗟に後ろを向いた。

 明らかに今、音が聞こえた。

 何か鉄の音だ。絶対自然には聞こえない音。


 ライトを片手に固まる。

 汗をかき始め、口を半開きにし、ずっと階段の下を見ている。

(出て来いよ...いるんだろ...!)


 心の中で彼はそう何回も唱える。


(出て来い!)



「チウ...チウ...」

 ラッチは眉を顰める。

 よく見ると、ネズミだった。

 ラッチはほっとし、また階段を上がり始めた。


 


 血がにじんで、階段に広がる。

 ネズミは潰れ、内臓が飛び散り、様々な器官が丸見えになった。

 ネズミの上には足が乗っていた。

 人のだ。




「2階...」

 まずライトを持っているラッチが飛び出した。

 前後ろどちらにもライトをかざす。

 幸運にも誰もいないそうだ。


「...GO...!」

 リーダーが合図し、皆が飛び出す。

 皆目を大きく開け、暗闇の中を警戒して前後ろを向く。


 少し歩くと、どこか広い場所に出た。

 血の匂いがする。


「...職場か...?」

 アドナスは呟いた。

 ラッチはそっちの方面にライトをさっと向けた。



 その瞬間皆が退けた。

 足を引っ込め、中には転びそうになったライルがいる。


 ライトが照らした場所には目を上にし、腹から頭まででかい穴が開いている女性の死体があった。

 足は消えた。腕も。口も裂けている。


 皆はしばらくたった後、やっと職場を手分けして捜査し始めた。

 バグが卵でも産んでいるかもしれない。


 ライルは壊れた机の下を見た。

 勿論あるのは頭だ。

 ライルはゆっくりと手を翳して、目を閉じさせ、その場を後にした。

 

 ガタ!

 アドナスの足元に椅子が引っ掛かり、音が鳴った。

 アドナスは口を歪ませて、奥へと進んでいく。


 

「何もないか...?」

 リーダーは皆に確認をとった。

 皆頷く。


「よし...次の階に行くぞ...」

 そういい、リーダーは全身を後ろにした。


 皆合わせて前を向く。

 ライトの光が、職場の四方八方に移動する。


 ゆっくりと足音が鳴らないように歩いて行く。


 


 コッ...

 足音が聞こえた。


 皆はリーダーの方を見つめる。

 前の方にはリーダーしかいない。リーダーが足を滑らせでもしたのだろうか。

 ただリーダーは無反応で、立ち止まった。



 コッ..

 リーダーは振り返った。


「足音を鳴らすな馬鹿野郎...!」

 みんな困惑する。

 ガイアンは眉をひそめながら言った。


「あんたじゃないのか...?」

「は...?」

 リーダーはまた前へ向いた。

 ライルは不思議な感覚に陥る。



 コッ...

「まただぞ!誰だ!」

 リーダーは目を大きくして後ろへ振り向いた。

 ただし、皆さっきと位置が変わってない。

 足も。

 誰も動いていない。



 コッ...!

 音はでかくなった。

 皆息をはぁはぁ出す。

 皆はわかった。

 リーダーは唾を飲み込んで、ゆっくりと前を向いた。


 コツ!

 ラッチは咄嗟にライトを前に向けた。


 ライトの光には、まだ灰色の地面しか見えていない。


 

 

 暗い動いている小さい影がライトの光に照らされた。

 足の先端だろう...


 続いてふともも辺りまで見えた。

 影はしっかり動いて近くまで移動してきている。


「誰だ...!」

 アドナスは小さい声で言った。

 だが、影は止まらない。



 やがて、上半身まで見えてきた。

 皆唾をのんで汗を流す。

 腕のスイッチ部分に手を置き、ほぼ押し込んでる。



 全身が見えた。

 外から少しだけ照らされている夜の光が、顔の半分を移していた。

 全身は人と同じ。いや人そのものだ。

 顔は真顔。

 手は血まみれ。白いスーツが赤いスーツへと変わっている。



 目は殺気で血走っていた。

 皆はスイッチを押し込んだ...



「構えろー!!!」

 ラッチの声が、激しく響き渡った...

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