[ビル内]
リーダーは躊躇いもなく、足をビル内へと入れた。
その姿はどこか怖いもの知らずという感じで、憧れの存在に近い。
「入って来い。遅れないでついてこい」
リーダーの後に、どんどん入っていく。
ライルは最初怖さがあったが、皆の活気に負け、少し遅れを取ってビル内へと足を踏み入れた。
「ちょ...」
何か言うまでもなく、ビル内は凄惨な状況だった。
入ってすぐ見えた光景は、血まみれの変死体。
ある者は顔を引き裂かれ、ある者は顔そのものがなくなっていた。
泡を出し、窒息死しているような者もいる。
ライルは思わず吐き出しそうになってしまった。
他のメンバーも眉をひそめ、足元をよく確認しながら進んでいく。
「酷いな...」
ガイアンは思わず声を出してしまった。
他のメンバーも同じことを思っているだろう。
足元を確認しないと暗闇で死体が見えず、踏んでしまうかもしれない。
ビル内は足音立てたら2階まで響き渡るくらいに静かで、暗い。
エントランスはまだ地上の光が差し込んで、ギリギリ見えるくらいだ。
ラッチがライトを出し、スイッチを押した。
「静かに上に行くぞ...それぞれいつでも戦えるように準備しておけ」
リーダーは後ろを向いて、アリの大きさのような声で言った。
アドナスは唾を飲み込んだ。
階段は監視カメラの赤い点々が点滅し、暗闇の中を照らしている。
ほんの一部だが。
勿論監視カメラは機能していない。セキュリティールームにはパソコンに寄りかかって静かになっている男が2人いる。
皆周りを見回している。
一番後ろはラッチだ。
カン...
ラッチは咄嗟に後ろを向いた。
明らかに今、音が聞こえた。
何か鉄の音だ。絶対自然には聞こえない音。
ライトを片手に固まる。
汗をかき始め、口を半開きにし、ずっと階段の下を見ている。
(出て来いよ...いるんだろ...!)
心の中で彼はそう何回も唱える。
(出て来い!)
「チウ...チウ...」
ラッチは眉を顰める。
よく見ると、ネズミだった。
ラッチはほっとし、また階段を上がり始めた。
血がにじんで、階段に広がる。
ネズミは潰れ、内臓が飛び散り、様々な器官が丸見えになった。
ネズミの上には足が乗っていた。
人のだ。
「2階...」
まずライトを持っているラッチが飛び出した。
前後ろどちらにもライトをかざす。
幸運にも誰もいないそうだ。
「...GO...!」
リーダーが合図し、皆が飛び出す。
皆目を大きく開け、暗闇の中を警戒して前後ろを向く。
少し歩くと、どこか広い場所に出た。
血の匂いがする。
「...職場か...?」
アドナスは呟いた。
ラッチはそっちの方面にライトをさっと向けた。
その瞬間皆が退けた。
足を引っ込め、中には転びそうになったライルがいる。
ライトが照らした場所には目を上にし、腹から頭まででかい穴が開いている女性の死体があった。
足は消えた。腕も。口も裂けている。
皆はしばらくたった後、やっと職場を手分けして捜査し始めた。
バグが卵でも産んでいるかもしれない。
ライルは壊れた机の下を見た。
勿論あるのは頭だ。
ライルはゆっくりと手を翳して、目を閉じさせ、その場を後にした。
ガタ!
アドナスの足元に椅子が引っ掛かり、音が鳴った。
アドナスは口を歪ませて、奥へと進んでいく。
「何もないか...?」
リーダーは皆に確認をとった。
皆頷く。
「よし...次の階に行くぞ...」
そういい、リーダーは全身を後ろにした。
皆合わせて前を向く。
ライトの光が、職場の四方八方に移動する。
ゆっくりと足音が鳴らないように歩いて行く。
コッ...
足音が聞こえた。
皆はリーダーの方を見つめる。
前の方にはリーダーしかいない。リーダーが足を滑らせでもしたのだろうか。
ただリーダーは無反応で、立ち止まった。
コッ..
リーダーは振り返った。
「足音を鳴らすな馬鹿野郎...!」
みんな困惑する。
ガイアンは眉をひそめながら言った。
「あんたじゃないのか...?」
「は...?」
リーダーはまた前へ向いた。
ライルは不思議な感覚に陥る。
コッ...
「まただぞ!誰だ!」
リーダーは目を大きくして後ろへ振り向いた。
ただし、皆さっきと位置が変わってない。
足も。
誰も動いていない。
コッ...!
音はでかくなった。
皆息をはぁはぁ出す。
皆はわかった。
リーダーは唾を飲み込んで、ゆっくりと前を向いた。
コツ!
ラッチは咄嗟にライトを前に向けた。
ライトの光には、まだ灰色の地面しか見えていない。
暗い動いている小さい影がライトの光に照らされた。
足の先端だろう...
続いてふともも辺りまで見えた。
影はしっかり動いて近くまで移動してきている。
「誰だ...!」
アドナスは小さい声で言った。
だが、影は止まらない。
やがて、上半身まで見えてきた。
皆唾をのんで汗を流す。
腕のスイッチ部分に手を置き、ほぼ押し込んでる。
全身が見えた。
外から少しだけ照らされている夜の光が、顔の半分を移していた。
全身は人と同じ。いや人そのものだ。
顔は真顔。
手は血まみれ。白いスーツが赤いスーツへと変わっている。
目は殺気で血走っていた。
皆はスイッチを押し込んだ...
「構えろー!!!」
ラッチの声が、激しく響き渡った...




