ねこがいる世界
世界は、静かだった。
空は青く、風はやさしく、塔はもうなかった。
金太郎は、丘の上に立っていた。
剣は背にあり、ねこは肩に乗っていた。
「おれ、ねこさがしてただけ」
「でも、みんながいたから、せかいをなおせた」
乙女たちは、もういなかった。
彼女たちは、記憶になった。
風のなかに、声がある。
火のなかに、涙がある。
水のなかに、願いがある。
リュミエール姫の笑い声。
エリシアのまなざし。
リリの歌。
それらすべてが、世界のなかに溶けていた。
ねこが、金太郎の肩から飛び降りた。
そして、草の上にすわった。
「あなたは、世界をなおした。
でも、世界は、またこわれるかもしれない」
金太郎は、パンをかじった。
「そのときは、またふる」
「また、さがす」
「ねこも、またいなくなるかも」
ねこは、目を細めた。
「それでも、あなたは、さがす」
「それが、あなたの“生きる”ってこと」
金太郎は、丘をくだった。
道は、どこまでもつづいていた。
人がいて、まちがあって、空があった。
誰かが言った。
「あなたが、世界をなおしたんですね」
金太郎は、パンをかじった。
「おれ、ねこさがしてただけ」
ねこは、金太郎の足元にすわった。
そして、空を見上げた。
空は、青かった。
風は、やさしかった。
そして、世界は、静かに、はじまりなおした。




