第7A話: 第三段階 ― 狩人を鍛える (前編)
気持ちを立て直したノルは、ハンター試験第3段階のための師匠を探しつつ、ハンター組織の外で初めて挑む任務――モンスターとの戦い――に備えて動き出す。
(ノルが家に戻ってきた様子。表情はまだ沈んでいるが、どこか肩の力が抜けている。)
ファクロ
来たか。……あぁ、これでフォーカスの“説得力”は本物だって証明されたな。
ノル・タケダ
やあファクロ。どれくらい待ってた?
ファクロ
二時間くらいだな。
フォーカスが「話してくる」って言ったからすぐ戻ると思ってたが……意外と時間かかったな。
ま、あいつの“すごい助言”とやらで頭がスッキリしたんだろ?
ノル・タケダ(心の声)
(え……? 数分しか話してないけど……。なんか、もっと早く来れた気がするんだけど……)
(フォーカスが木に寝そべって時間を潰してる姿を想像して、ノルが微妙にイラッとする)
ノル・タケダ
ま、まぁ……話は支えになったよ。
あ、そうだ。フォーカスが「ハンター試験の第三段階」のこと言ってた。
ファクロ
そうだ。まだ説明受けてないのはお前だけだし、今から話すぞ。
(腕のデジタル端末を起動する)
ファクロ
第三段階は“訓練”だ。
今からお前は“試験中の見習い”扱いになる。もうただの志願者じゃない。
ハンター本部の外に出る任務にも参加できる――ただし、サファイア級以上のハンター同行が条件だ。
ノル・タケダ
えっ……じゃあ俺、ハンターみたいにモンスターと戦えるの!?(わくわくした表情)
ファクロ
戦える……と言えば戦えるし、そうでもないって感じだな。
目的は“ハンターの現場”を知ることだ。
被害者、国家警備隊、災害区域……全部だ。
ノル・タケダ
国家警備隊? あれって民間案件だけじゃないの? それに政府所属だろ?
ファクロ
秘密な。
あいつら、実は“政府が管理するハンター部隊”みたいなもんなんだ。
昔から組織とはけっこう仲がいい。
ファクロ
それに、ハンター試験を途中で辞めた連中は――国家警備隊に回される。
ポテンシャルはあるからな。
ノル・タケダ
え!? それ聞いてた話と違うんだけど!
落ちたら一般人として暮らすしかないって……
ファクロ
あれはモチベ用の嘘だ。
本当は、警備隊に配属された後でも再挑戦できる。
ファクロ
(端末にメモを打ちながら)
……と、話しすぎたな。
ほら、このメモ持って中央の街へ行け。
ポータルで“管理棟”へ戻ったら、受付に行って
「任務申請です」って言って、このメモを渡せ。
向こうでお前の情報を確認するはずだ。
ノル・タケダ
分かった、すぐ行くよ!
(歩き出すが、ファクロに止められる)
ファクロ
おい、最後に一つ。
第四段階のために“正式ハンターの指導者”を見つけろ。
お前が知ってる誰かでいい。
ノル・タケダ
……つまり、師匠を探すのか。(少し真面目な顔になる)
ファクロ
そういうこと。見つけたら本部に申請だ。
書類もらって、師匠に判子もらって……まぁ、色々だ。めんどくさいぞ。
ノル・タケダ
うわぁ、すごく面倒くさそう……
ファクロ
(ドヤ顔で)
だろ? でもお前は運がいい。
なんせ、お前が誰を師匠に選ぶか――俺は分かってるからな。
ほら、俺の判子貸し――
ノル・タケダ
ありがとうファクロ! 行ってくる!(話をさえぎりそのまま走り去る)
ファクロ
……二、三言わせろよ……
(ポカーンと立ち尽くす。まさか断られるとは思ってなかった)
(ノルが中央の街へ到着し、ポータルを抜けてハンター本部の管理棟に入る。
人はほとんどいない。静かな受付エリアに向かう。)
(第一章で対応したあの受付嬢が座っている)
ノル・タケダ
あ、あの、おはようございます。えっと、この紙を――
受付嬢
用件。(不機嫌そうに)
ノル・タケダ
あっ……はい……任務の申請です……
(受付嬢は無言で手を突き出す)
受付嬢
(書類を印刷して渡す)
ノル・タケダ、あなたは村一のハンター、キョン・ランから指名されています。
報告書を読んで、詳細は本人と連絡を取ってください。
ノル・タケダ
キョン・ラン? あの……山の崖に建ってる豪邸の人?
受付嬢
私は書類の処理しかやりません。あとは自分で確認してください。
ノル・タケダ
(皮肉っぽく)やっぱり……あなたと話すのは、すごく“癒やされます”ね。
受付嬢
よく言われます。他に質問?
ノル・タケダ
えっと、その、師匠登録の手続きって──
受付嬢
質問がないなら、次の方が控えてます。場所を空けてください。
ノル・タケダ
えっ、次──?
(振り返ると、いつの間にかハンターの長蛇の列。ノルは肩を落としつつ列を避け、村一へ戻ることにする)
(森の木々を跳び越えながら移動)
ノル・タケダ
またスルーされたなぁ……まぁ、仕事が大変そうだし仕方ないか。
あんまりストレス溜めるのは良くないし……。
(村一に到着。崖にそびえる中国風の巨大な宮殿、滝の音が響く。ノルが扉をノックする。中から荘厳なパイプオルガンの音)
???(キョン・ラン)〈大魔導士〉
ーー我を誰と心得る!
このロットンロー随一の**“至高の魔導士”**たる我の館に、無礼にも手を掛けたのは何者だッ!!
(声が重低音で響き渡る)
ノル・タケダ
(ビクッとして)そ、そそそ、そんなつもりじゃ……!
ノル・タケダです! カツヤマでの任務に呼ばれたと……!
キョン・ラン〈大魔導士〉
ほう……ついに来たか。
我と任務を共にできる“名誉”を、しっかり噛み締めるがいい……!
(宮殿の扉が勢いよく開く。もくもくと白煙が溢れ、シルエットは身長2m超の怪物級マッチョ魔導士に見える)
(しかし煙が晴れると、中から出てきたのは 細身で175cmほどの男。立派な杖、ローブ、額に赤い鉢巻きの“雰囲気だけ強そうな”男。)
ノル・タケダ
……キョン・ランさん?(困惑)
キョン・ラン
他に誰がいる。
見て分からんかね?
ノル・タケダ
(ニコッと)いえ、イメージ通りでした。
(※ノルの高い適応力と愛想が光る)
キョン・ラン
では手早く手紙を。……うむ。
任務内容は理解しているな?
ノル・タケダ
はい。西の国境付近、カツヤマで“討伐任務”ですよね。
国防ハンターでは手に負えない怪物が出ている、と。
キョン・ラン
その通り。
明日の朝出発する。列車を乗り継いで二日ほどで到着だ。
向こうで国防組と合流し、日没までに片付けて、翌日には帰還する──
書類仕事は全部キミに任せる。
ノル・タケダ
ずいぶん余裕ですね……。
キョン・ラン
当然だ。何せ“この私”が行くのだからな。
ノル・タケダ
(半信半疑)……そうですね。
キョン・ラン
いずれ分かる。では下がれ、忙しい。
ノル・タケダ
はい、では明日──あっ、そうだ。
(ふと、以前の会話を思い出す)
ノル・タケダ
ランさんって、高ランクのハンターですよね?
キョン・ラン
見れば分かるだろう。
このあふれ出る“気配”で。
ノル・タケダ(心の声)
……オーラ?
ノル・タケダ
その、でしたら……お願いがあります。
“ハンター試験・第三段階”の師匠になっていただけませんか?
キョン・ラン
――断る。
ノル・タケダ
えっ!? なんでですか!?
(キョン・ラン)
僕と君じゃ、戦い方がまったく違う。
俺は遠距離の魔法型だが、君は近・中距離の武器が必要だ。
君にはそういう専門家の方が合っている。
ノル・タケダ
なるほど…ありがとうございます。では、失礼します。
(ノルは首をかしげながら歩き出す。今までの“狩人”の常識がどこかおかしく思えてくる)
ノル・タケダ(心の声)
……本当に強いのかな?
上位級の魔物を倒すには、首を落とすか、心臓を刺し貫くのが基本なのに。
近距離武器を扱えない狩人なんて──普通ありえる?
(悩みながら道を進んでいく)
(第一候補が却下されたノルは、次の候補であるフォーカスの家へ向かう)
フォーカス
(ドアを開ける)
……何の用だ。
(いつもの無関心な目)
ノル・タケダ
おはようございます、フォーカスさん。
忙しいと思うので、手短に言います!
フォーカス
それは助かる。
ノル・タケダ
どうか、第三段階の師匠として…僕を弟子にしてください!
(深く頭を下げる)
フォーカス
……嫌だ。
ノル・タケダ
受けられない、という意味ですか?
フォーカス
受けたくない。
まだ誰かを教える準備ができていない。
ノル・タケダ
でも、あの戦いを見ました!
炎の作り方も、攻撃への応用も…本当にすごかったです!
フォーカス
何かが得意でも、それを他人に教えられるとは限らない。
他を当たれ。
ノル・タケダ
……わかりました。ありがとうございました。
(しょんぼりして帰る)
(第二候補もダメ。ノルは“本当なら頼む気などなかった相手”──上司のライデンの家へ向かい、ノックする)
ノル・タケダ
誰もいないみたいだ…残念。
本当は一番頼みづらかったけど…あの時の気配は、本当にすごかった。
(シゲルとマッサルに向かっていこうとしたライデンの回想)
(その時の別の光景──木の上から矢を構えるファクロがふと思い浮かぶ)
ノル・タケダ
そういえば…ファクロさんって、ライデンさんと仲がすごく良さそうだったよな。
ってことは、ファクロさんも相当強いんじゃ…?
……よし、聞いてみよう!
で、でも……どこにいるんだろう?
(ノルは再びフォーカスの家へ戻り、扉を叩く。フォーカスが出る)
フォーカス
……弟子は取らないって言ったはずだが。
(少し困惑しつつ無表情)
ノル・タケダ
ち、違います! そのことじゃなくて…
ファクロさんの家ってどこにあるんですか?
お願いしたい事があって…
フォーカス
……最後の最後で来た相手に場所を聞くのか。
なかなか図太いな。
ノル・タケダ
え!? 最後じゃないです! 四番目です!
(慌てて弁解し、気まずそうに笑う)
フォーカス
……ヘタに言うな。
あいつ、意外と繊細なんだから。
それに──遅い狩人を相手にするのも大変なんだぞ。
(ノル、微妙に傷つく)
フォーカス
まあいい。
裏手に行って、地下に続く扉を叩け。
強めにな。あいつ、下の階にいると気づかない。
ノル・タケダ
(困惑)
あ、ありがとうございます……。
(心の声)
……え? 狩人って全員、自分の家を持つんじゃないの?
(裏口の扉を叩くと、ファクロが出てくる)
ファクロ
おお、ノルか。どうしたんだ?
(ちょっと不機嫌そうだが、必死に隠している)
ノル・タケダ
あ、あの…ファクロさん……
もし忙しくなければでいいんですけど……
第三段階の師匠になっていただけませんか……?
ファクロ
いやあ、どうだろうな。
今はやる事が多くてな。
話す相手も、片づける用事も、山ほどあってだな……
だから今回は断らせてもらう。
(背後をフォーカスが通り過ぎ、カゴを手に畑へ向かう)
ノル・タケダ
お願いしますファクロさん!
たしかに、ちょっと失礼な態度をとったかもしれませんけど……
本当に、あなたに教えてもらいたいんです!
ファクロ
……本当に俺でいいのか?
もっと凄い狩人がいいんじゃないか?
例えば、キョンとか、フォーカスとか。
(明らかに嫉妬してる。背後ではフォーカスが無表情で芋を刈り取っている)
ノル・タケダ
二人とも……断られました。
(落ち込んだ声)
ファクロ
堂々と言うなーーーっ!!!
(読者に向かって言ってるような騒ぎ方)
フォーカス
騒ぐな。
お前のせいで畑の調子が悪くなる。
(カゴいっぱいの芋を抱えながら通る)
ファクロ
……はぁ。
じゃあ仕方ない。
ちょっとくらい頼まれたかったんだがな。
ほら、これが俺の印だ。
登録が終わったら返せよ。
(腕輪の画面を出し、印章を取り出す)
ノル・タケダ
わぁ……ありがとうございますファクロさん!
訓練、全力でがんばります!
フォーカスさん、また明日!
フォーカス
……芋、持ってけ。
(ノルは喜んで中央の街へ走り出す。
後ろでは、ファクロが照れながらも嬉しそうに微笑んでいる)
任務が始まった。ハンター国家警備隊はすでに準備万端で、キョン・ランが彼らを勝利へと導く。




