第6章A ― 一生ものの傷(前編)
シゲルとフォーカスの戦いがついに火蓋を切った。
組織でも屈指の実力を誇る二人の狩人が、迷いなくぶつかり合う。どちらも譲れない信念を抱え、その衝突はオーラの震動となって戦場全体を揺らし始めた――。
しかし、第三の存在が均衡を崩す。
マサルの予想外の介入によって形勢は一変し、フォーカスは一気に不利へと追い込まれる。狩人の刻印を発動させた二人を同時に相手取るなど、いかなる強者であろうと容易ではない。
たとえ相手が雷電の弟子である天才フォーカスであっても。
(フォーカスとシゲルが対峙する。
言葉も挑発もない。ただ視線だけが交差し、先に動くのを待っている。)
マサル ― 科学者
なぜフォーカスはいつもと違う動きを……?
まさか、早く決着をつけるつもりなのか?
いや、それより――(はっとして)
……そうだ。
この戦いを長引かせるのは、誰にとっても不利なんだった。
シゲル ― ヴァイキング
準備はいいか?
フォーカス ― カラス
来い。
(シゲルが右手の斧を振り下ろし、フォーカスがマチェーテで受け止める。
衝突の瞬間、莫大な衝撃波が放たれ、周囲の地面が砕け散る。
村一・二の志願者たちが、その余波に弾かれる。)
ノル・タケダ
(驚愕と恐怖の入り混じった表情で)
すご……たった一撃でこの威力。
これが正規ハンター同士の戦い……。
フョードル・レベデフ
(攻撃を飛ばす。ノルは気づいて剣でギリギリ受ける)
気を抜くな。
不意打ちで勝っても、つまらないだろう?
(再びフォーカスとシゲル)
(シゲルが左の斧で首を狙い、フォーカスは身を低くして回避。
即座に足払いを放つが、シゲルが跳ねて避ける。
シゲルは距離を取るため後方へ跳躍。
フォーカスは立ち上がり、両手にマチェーテを構えて腕を交差するように構える。)
フォーカス ― カラス
炎式 ― 残火法
(刃に淡い炎が宿る。技名を告げると同時に、フォーカスは一気に加速してシゲルへ迫る。)
(右手の刃で連続斬撃を繰り出し、斧に当たるたび体を回転させて左手で斬り込む。
舞踏のような連続回転と攻撃。
その独特の戦い方に隙らしい隙はない。
シゲルは全て受け止めるが、後退を強いられる。
攻撃の軌道には細かな火の粉が舞い、空気が赤く散る。)
(押し込まれたシゲルは焦りを見せ始める。)
シゲル ― ヴァイキング
水式 ― 断流斬
(斧から中距離の水刃が放たれる。
地面を裂きながら立ち上がるその斬撃は短命だが、フォーカスを後退させ体勢を崩すには十分だった。)
(フォーカスは漂う火の粉の位置まで下がり、身を沈めて構える。)
フォーカス ― カラス
炎式 ― 交叉刃
(漂っていた火の粉が一気に吸い込まれ、刃は深紅に染まる。
フォーカスが十字に空を切ると、巨大な炎の斬撃が高速でシゲルへ向かう。)
シゲル ― ヴァイキング
水壁
(斧を地面に叩きつけ、逆瀑布のような水の壁を造る。
炎撃と激突し、蒸気が爆発的に立ちこめ、視界が一気に白く染まる。)
(フォーカスは濃霧に突っ込む。
離れているせいで、シゲルの目には一切動きが見えない。
突然、激しい炎撃が迫り、シゲルは反射的に迎撃。
斧に水膜をまとわせ、必死に炎を弾き返す。)
(だが、一つの大きな隙――
シゲルの大振りの一撃を、フォーカスは斧の下を滑るように回避し、宙へ跳ね上がる。
強烈な蹴りが後頭部に炸裂し、シゲルはよろめき膝をつきかける。)
フォーカス ― カラス
炎式 ― 烈鞭
(蹴りの勢いのまま刃を振り上げる。
二条の炎の鞭がマチェーテから生まれ、シゲルの背中へ叩きつける。
シゲルは地面に押し倒され、足場が崩れる。)
(最後の力で立ち上がろうとするシゲル。
しかし、フォーカスはすでに背後に回り込んでいた。)
フォーカス ― カラス
終わらせる。
炎式 ― 焔海衝
(高く跳躍し、両腕を頭上へ掲げる。
刃の周囲に濃密な炎が集まり、巨大な焔がシゲルを押し潰そうと迫る。)
シゲル ― ヴァイキング
(斧を地面に突き刺し)
水式 ― 海珠殻
(半球状の水の防壁がシゲルを包む。
フォーカスの炎撃を完全に受け止め、その反動でフォーカスは大きく後退。
足を擦りながら何とか体勢を整える。)
マッサル ― 科学者
よし、そろそろ俺も出るか。
土属性・破砕。
(戦槌の柄の下部を杖のように地面へ叩きつける。直径五メートルほどの大地が一気に砕け散る)
(砕けた岩の一つひとつに戦槌を振り下ろし、ベースボールのボールのように次々と空へ打ち上げ、フォーカスへと投げ放つ。数も速度もどんどん増していく。フォーカスは炎を纏ったマチェーテでそれらを次々と斬り裂く)
(マッサルは一気に勝負を上げるため、巨大な岩を一つぶん投げ飛ばす。フォーカスはそれを容易く両断するが、その影からシゲルが姿を現す。岩に視界を遮られた一瞬を利用して距離を詰めていたのだ)
(シゲルは水を纏った両手斧で連撃を仕掛け、フォーカスは炎で応じる。互いの属性がぶつかり、戦いは拮抗。その勢いでは、時折フォーカスが押される場面もあった)
(シゲルが右の斧で大振りの一撃を放つ。しかしフォーカスはすんでのところで回避し、露わになった脇腹へ斬撃を繰り出す──その瞬間、マッサルの戦槌が割って入り、斬撃を受け止めた)
(そこから二人の連携が始まる。フォーカスはマッサルの攻撃をかわしつつ、シゲルの繰り出す斬撃を両方のマチェーテで受け止めるのに必死だった)
(ついにマッサルの戦槌がフォーカスの脇腹にクリーンヒットする。フォーカスの顔が苦痛に歪み、唾を吐き飛ばすほどの重い一撃だった。フォーカスは吹き飛ばされ、背後の木を粉砕しながら地面へ転がり落ちる。起き上がろうとするが、明らかにダメージが大きい)
シゲル ― ヴァイキング
(その瞳には憎悪が宿っている)
水属性・潮牙。
(斧を完全に水で包み込み、回転させて投擲しようと構える。しかし放つ直前、マッサルが前に出てフォーカスへ攻撃を続けようとしたため、シゲルは動きを止める)
マッサル ― 科学者
どうしたフォーカス?
“雷電の愛弟子”ともあろう者が、もう限界か?
フォーカス ― 烏
落ち着けよ……まだまだやれるさ。
(ふらつきながらも立ち上がる)
マッサル ― 科学者
なら、証明してみろッ!
(戦槌を振り回し連撃を開始。重量武器とは思えない滑らかさで攻撃が続く。縦回転させながら杖のように扱い、フォーカスは必死に回避する。その最中、マッサルが戦槌を垂直に構えた)
マッサル ― 科学者
土属性・王断の裁き
(技名と共に、戦槌が地面へと凄まじい勢いで叩きつけられる。フォーカスはギリギリで避けるが、衝撃で地面が爆ぜ、小岩が弾け飛び、フォーカスは砂埃に包まれながら転がるしかない)
フォーカス ― 烏
……何だ、今のは……!?
(初めて動揺が露わになる。その目には驚愕と恐怖すら混じっていた。戦槌は地面に深く突き刺さったままだ)
マッサル ― 科学者
俺の“狩人特性”のおかげでな、
この戦槌の密度を“百倍”まで上げられる。
そして面白いのが――
解除できるのは、この俺だけってことだ。
(狂気じみた笑顔を浮かべ、羽のように軽く戦槌を引き抜く)
シゲル ― ヴァイキング
怯えたな、フォーカス……
その表情、最高だぜ。
(不気味な笑みを浮かべる)
ー 一方その頃、ノルたちの戦い ー
(ノルは腕や頬に切り傷があり、息も荒い)
ノル・タケダ
このままじゃ……!
早くこいつらを倒して、フォーカスさんを助けないと……!
(ジンジョウはノルを援護しながら戦っていた。彼女も同じく傷だらけで疲労が濃い)
ジンジョウ・ワン
わ、私たちじゃ……勝てるかどうか……。
フョードル・レベデフ
やっと理解したか。
“強い者だけが生き残る”。
それが現実だ。
(三人の間合いへ踏み込み、連続攻撃を仕掛ける。ノルとジンジョウは必死に防御する。フョードルの剣術はアクロバティックで、
① ノルへ一撃
② すぐにジンジョウの剣を受け流し
③ 後方へ下がり同じ流れを繰り返す
という三段構えの連携だった)
(同じパターンを繰り返すことで、ノルとジンジョウの動きを読み切ろうとしている。
その最中、フョードルはタイミングをずらし、ジンジョウの脚へ蹴りを叩き込み、彼女は倒れ込んだ)
(ジンジョウがやられる前に、ノルは体当たり気味に剣を突き出し、フョードルの動きを止める)
フョードル・レベデフ
お前に俺は倒せない。
ノル・タケダ
……そうだろうな。
でも、“俺たちなら”話は別だ。
(ノルは不敵に笑う。その瞬間、フョードルの右腕を掴み、力で抑え込もうとする)
ノル・タケダ
今だ、ジンジョウッ!
(ジンジョウが立ち上がり、全力でフョードルへと斬りかかる。
フョードルはそれに気づき、とっさに剣を左手へ持ち替え、全力でその一撃を受け止めた)
(ジンジョウの新たな攻撃を警戒していたフィョードルだが、彼女が突然剣を手放したことで一瞬混乱する。その隙に彼女は素早くフィョードルの左腕をつかむ。ノルとジンジョウは同時に足へと掃撃を放ち、フィョードルの足を払う。フィョードルはまるで完璧なスプリットのような形で倒れ、苦痛の息が漏れた。二人はそのまま身体をひねり、露出した股間へ同時に強烈な一撃を叩き込む。)
(フィョードルは目に涙を浮かべ、あまりの痛みにその場に崩れ落ちて動けなくなる。)
ジンジョウ・ワン
「や、やった……」(微笑む)
ノル・タケダ
「完璧だったな。……まさか君まで、あんな攻撃をするとは思わなかったけど。」敵に回したくないな、あれで倒すなら。」
(軽く笑いながら)
ジンジョウ・ワン
「し、しずかにっ……!わ、わたしはノルの動きを真似しただけ……そんなこと言わないで……。」
(真っ赤になりながら)
(場面はテンセイの戦いへ移る。テンセイはアキラという少女と対峙している。彼は軽々と攻撃をかわし、受け止めており、本気というより遊んでいるようにさえ見える。)
アキラ
「少しは……本気で相手してくれない?」
(苛立った声)
テンセイ・ブシダ
「まあまあ、焦らなくていいよ。君の弱点をもう少し克服してほしくてね。攻撃が硬すぎると、隙が大きくなるよ。」
(本当に親身な様子で、嘲りも悪意もない)
アキラ
「……生意気。」
(怒っている)
(その頃、ヒソカはガバードを羽織った少年と戦っていた。褐色の肌、背中まで届く一本結びの髪、そして最も特徴的なのは銀色にグラデーションが入った髪。名はヴァダント。剣技に長けた実力者だ。二人とも体中に傷を負い、それでもなお激しい剣撃を繰り返す。)
ヴァダント・ナイル
「君は強い。それに、戦いながら仲間を気にしている。誰が苦戦しているか、常に目で追っている。……君は良いリーダーだ。」
ヒソカ・アハネ
「残念だけど、俺はリーダーじゃない。今回のリーダーはノルだ。」
(戦いが一瞬止まる)
ヴァダント・ナイル
「ノル? フィョードルに食ってかかったあいつか。ひとつ聞きたい。最後の試験に挑むかどうか決めた時……最終判断をしたのは彼なのか?」
ヒソカ・アハネ
「答える義務はない。」
ヴァダント・ナイル
「なるほど……。君のようなタイプが不利な条件で戦うなんて変だと思った。てっきり、傷ついた仲間を守る作戦なのだろうと。……残念だ。」
(悪意はない、純粋な感想のようだ)
ヒソカ・アハネ
「ノルは“勝つ”と言った。だから俺は信じてる。……あいつには必ず勝利に導く策がある。」
(再び斬りかかる)
(ノルとジンジョウの場面に戻る)
ノル・タケダ
「ジンジョウ、俺はフォーカスさんをできる限り支える。テンセイの戦いを早く終わらせてやって、あとは皆の援護を続けてくれ!」
ジンジョウ・ワン
「はい!」
(2人は背を向け、逆方向へと駆け出す)
(場面転換:椿が戦いながら、横目でノルを見ている。相手はアレックス)
椿イカリ
「ノルゥーーーー!!」
(怯えと不安が混じった表情)
すべての行動には必ず代償がある。
そしてノル・タケダは――その事実を、次の章で思い知ることになる。




