緋沙子は本当に黒幕だろうか?
では我らが悪女 緋沙子について考察して行こうと思います。
視力を失い、自家中毒の持病もあった緋沙子。満喜子の上の兄も言うように一人で生きていけない子でです。しかし視覚障害と自家中毒をあるが感覚は鋭い方であり、チェスも出来るし(私はルールが覚えられない)、兄さんと話している会話から頭もいいでしょう。また年の割に落ち着いていて、非の打ちどころがないとも言ってます。これは兄の望にも言えるようです。
だが一方で、ぼんやり見えている事を満喜子や周囲には言っていないようで意地悪なところもあります。
周りからミステリアスな女性のように書かれているけど、中年になって目が見えるようになると非常に周囲の目を気にしたり、子供っぽく怒ったりして、魔法が解けてしまった様に見えます。と言うか、精神年齢が幼いように思います。
まず第九章の【幾つかの断片】と兄さんと緋沙子の会話があります。S字のラブチェアで顔も分からない状況なので、緋沙子も本音で話しているようです。
そこでは「家がうるさい」「一人になりたい」と緋沙子は愚痴っています。
ただの愚痴かな? 思春期だからプライバシーが無いし、一人で何もできないから、もどかしいのかな? と考えていました。また家政婦の方は緋沙子が一人になれない事に苛立っていたという発言をしています。
でも彼女の持病【自家中毒】について調べてみると、嘔吐や腹痛の他に光や音への過敏と言うのがありました。
青澤家では緋沙子のために部屋ごとに音楽をかけていたけど、自家中毒になったら緋沙子はかなり辛かったんじゃ無いのでしょうか。更に悪化するでしょう。
普通にしていたって感覚も鋭いから様々な音楽をかければ、耳障りだったのでは無いのだろうか。
そもそも緋沙子はこういった事を家族に訴えなかったのでしょうか?
第十四章【紅い花、白い花】の384ページにて、満喜子は【ただのお嬢様、綺麗なお嬢様と崇めていた人はいたけれど】と言う言葉があります。
また緋沙子は独特な言葉を使っている。例えば【蝙蝠が来る】とかなど。まるで具体的な事は言わないのです。
恐らく養護学校では無く普通の学校に通っていたから自分と同じ世界を持った人と交流していなかったため、精神やコミュニケーション能力が不足している気がします。そして周りもお嬢様だからと言う理由で詳しく聞かないか、緋沙子は諦めている感じがあります。
また人の目を気にしないで自由に話したから目が見えるようになると人の反応に戸惑っていたのでは? と思いました。
こうしてみると緋沙子は孤独な子どもだったのだろうなと思います。本当に本音で話せるのは兄さんくらいしか居なかったと思われなす。
だから兄さんが自分のために事件を起こして犯人として自殺した後、【忘れられた祝祭】で緋沙子が黒幕なのでは? と周囲に思われても否定はしなかったんだと思います。
では緋沙子は黒幕なのか? 私は違うと思います。
少なくとも古本屋を放火しろと言う指示を緋沙子はしていないと私は考えています。
確かに緋沙子は第十四章で自分が指示したと言っているし、第九章でも花火をしようと指示する言葉があります。
しかし第九章 【幾つかの断片】で花火を指示したような文章があるが、最初の方にこう書かれています。
【たとえば、そうね、去年みんながママにもらったビスケットを覚えている?】
子供の頃を思い出すお爺さんの気持ちを分かってもらうために、この言葉を言っているのですが、矛盾が起きます。【去年みんながママにもらった】って事は、大量毒殺事件が起きる前の話しです。そもそもこの章は多分、緋沙子の事件前の過去が綴られているのだと思います。
だから大量毒殺事件が起きて何年も経った後に発言した物では無いと思われます。
なので緋沙子はやってもいないのに否定しないで、兄さんと共犯関係を示唆するように言っているのでしょう。