本や語りで意図的に変えた個所
こんな感じで【忘れられた祝祭】には意図的に変えていたり、満喜子自身が勘違いしている箇所がいくつかあります。
作中では古本屋があるはずなのに無い事。満喜子は【亭主にはお世話になったので、自分の小説の中に登場させるのはなんとなく生々しくて気後れした】と第十一章の【夢の通い路 二】の321ページに載っています。
それからどういう意図なのか緋沙子の家の前にある白い百日紅。実際は白ではないのでは? と思います。プロローグでは多分、緋沙子は「白いさるすべりが怖い」と言い、誰かが「白? 赤ではなく?」と言っているので、家の前の百日紅は白ではないのでしょう。
あと、前に私が指摘した緋沙子と上の兄が遊んだ将棋。これは緋沙子の神秘性を高める為に、満喜子が盛ったのでしょう。
そして最後に、衝撃的な変更箇所があります。
第七章【幽霊の絵】220ページに大量毒殺事件当日について書かれた文章。これは三人称で書かれた文章なので、インタビューのものに比べて信憑性は高いと思います。
【その日は小学校の登校日だったから、子供達も家の中もバタバタしていた】
基本的に情緒的な文章と関係ないモノローグが挟まれる文章なので時折、衝撃的な事実が見つけることが多いのですが、この文を見つけた時、「はあ?」と声が出ました。
確かに昭和の夏休みは一、二日、登校日があったらしいと言われています。だとしたら、満喜子は学校に行ったのではないのでしょうか? 緋沙子や他の兄弟はお祝いだからと言う理由で学校を休めるが、近所に住む満喜子は学校を休み理由にはならないでしょう。
多分、第三章の内容に出てくる黄色い雨合羽の男やお祝いの様子は古本屋で買った週刊誌っぽい雑誌を読んで書いたのだと思われます。
……だとしたら第三章の【遠くて深い国からの使者】である【忘れられた祝祭】の一部の半分以上が妄想の可能性が出てきました……。