金がない
思ってたより描くのに時間かかる。本来書こうと思ってたとこまで書くより先に、目の限界が来た。1m先がぼやけて見えるぅ。
改めて、少し自己紹介をしよう。
俺とソフィアは8年前、故郷である知恵の国を謎の魔物襲撃によって失った。
当時、幸せに暮らすただの子供だった俺は、突然両親と、大切な妹を亡くした。
意気消沈したまま騎士に拾われ、王女を護衛しながら隣国に避難する騎士団に同行したが、魔物の追撃によって全員命を落としかけた。
その時、幸運にも俺の魔力と王女の魔力によって、前騎士団長の剣が覚醒、俺がそれを使い魔物を撃退し、無事隣国まで逃げ延びた。
副騎士団長に剣の使い手として見込まれ、俺自身も今度こそ大切なものを失わない為、今はただ一人の王家の生き残りたるソフィの兄がわり兼筆頭騎士になった。因みにソフィってのは、ソフィアに利便性と親しみを込めた呼び方だ。
ミネルウァの復興の目処が立ってきた事と、ソフィが成人を迎えた事をきっかけに、中央大陸の事実上トップである聖王へ、謁見の旅にきた。
大陸の端から中央へ、実に一年近い旅路だったが、ようやく片道が終わったところ。
しかし今この瞬間、長々と語った俺達の物語はバッドエンドで終わろうとしていた。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様でした....。」
故郷、とその隣国、オデュッセイアから遠く離れた光の国の聖都、ユピテルで俺たちは路頭に迷いかけていた。
「どうなってるんだよソフィ、ここまでの旅で貯めた金が底をつきかけてるんだが。俺、言ったよな?俺の金も無限じゃないぞって。」
「ユピテルって、色んな美味しいものがあって、つい。えへへ。」
「えへへじゃねえよ。いくら聖都の物価が高いとはいえ、スイーツ代で金がなくなるってありえねえだろ。」
「レオ兄さんだって食べてたじゃないですか!」
「最初はな!でもお前が途中からどんどん頼んで、俺は見てるだけだっただろ。途中で止めなかったら、冒険者カードに刻まれてる残金がマイナスになるところだったぞ!」
聖都の大通りで少し遅めの昼食を取ることにした俺とソフィは、ソフィが甘い匂いを嗅ぎつける能力で選んだスイーツ店に入った。
そこでソフィが、あろうことか店のメニューを全て頼んだのだ。もちろん、最初は二人で分け合おうと4つか5つのスイーツを頼んだだけだった。それが、俺の胃が甘ったるさで限界を迎えかけている間に、ソフィがどんどん注文を重ねていくのだ。
最後の方は、奥の厨房から店員がこちらを指さしながらヒソヒソ話をしていた。サインを求められた時は、思わず天を仰いだほどだ。
「あのな、ソフィ。俺達は旅人で、金がないと宿屋に泊まれないんだ。わかるよな?」
「はい。ごめんなさい、レオ兄さん。」
コイツ、可愛い顔で申し訳なさそうにすれば許されると思いやがって。
可愛いじゃねえかちくしょう!
「分かった、反省してるなr「それじゃあ!これとこれとこれ、美味しかったのでもう一回お願いします!」...もういい。」
甘やかして育てすぎたのだろうか。いや、俺のせいじゃない。大体はあのゴリラ騎士のせいだ。金はオデュッセイアから十分にもらえるからって、なんでもかんでもソフィに買い与えるからこうなるんだ。
だがまあ実際、成人祝いを終えたばかりのソフィにこの1年の旅はキツかったと思う。
俺と二つしか変わらないとはいえ、ゴリラに死ぬほど鍛えられた俺と、甘やかされたソフィでは、あまりに基礎体力が違う。そう思えば、これぐらいのワガママなら受け入れてあげるのが、兄がわり兼騎士の、俺の役目なのではないだろうか。
店員に閉店までまだ十分時間がある事を確認し、ソフィを見ておくよう頼んでから、俺はソフィに言った。
「それじゃあ俺はこれから適当な依頼を終わらせてくるから、大人しくここで待ってるんだぞ。」
「はい!食べすぎないように注意しますね。」
「もう遅えよ」
店員に預けていたローブと剣を受け取り、俺は店を出た。
「よし、急ぐか」
もちろん、今から普通にギルドに戻って依頼を受けてからでは、どれだけ急いでも間に合わない。そこで俺は、先に都市付近の森で魔物を倒してから、その魔石をギルドに持ち込み討伐報酬をもらうことにした。
魔石とは、魔物の心臓内に生成される、魔物の魔力の結晶だ。通常、魔物は全身の血流に乗せて魔力を巡らせ、その強靭な肉体と凄まじい攻撃能力を得るが、その際に魔力の一部が老廃物と反応して上手く機能せず、心臓で濾過されて溜まっていく。そして、それが心臓から流れ出す魔力を増大させ、長く生きた魔物ほど力を増していくのだ。
その魔力の結晶である魔石を利用し動くのが魔車や飛空艇、そして魔具だ。
魔具は、世の中に満ちる神の力である魔力を、魔石を通じて取り込み、所有者の身体強化や魔法といった恩恵をもたらす。ちなみに、発動する効果は魔具に刻まれた神の紋章によって種類が決まる。
俺の魔具?それはちょうど目の前に現れたゴブリンくんで実演してあげよう。
「よお、初めまして。死んでくれ。」
こちらを認識する前に飛びかかり、その脳天を勢いよく剣でぶっ叩いた。
グシャ、という音と鈍い感触が五感に伝わり、俺はゴブリンの命を奪ったことを確認した。
え?いつ魔具を使ったんだって?だから使っただろ。思いっきりゴブリンに叩きつけて。
俺の魔具はこの剣、正確に言えば、太刀だ。黒い血で表面を汚しながらも、ソフィの髪と同じ銀色の眩い光を放つこの太刀が、俺の持つ魔具である。
じゃあどんな効果だったのかって?知りたがりだなあ。でも残念ながら、この魔具の効果は発動させていない。
これも正確に言えば、発動出来ないんだが。なんなら、太刀を抜きさえしていない。だから態々剣を叩きつけたのだ。
ゴブリンを倒した方法も、ここまで言えばわかるだろう。そう、ただの筋力だ。もちろん、魔具や魔物という高い魔力に囲まれたまま訓練をしたため、魔具を発動しなくとも多少は魔力の手助けはあるだろうが、基本的には筋力だけだ。
俺がこんな魔物と大差ない戦い方なのは、主に俺の師匠の影響だ。
俺の師匠は、中央大陸最強の騎士団と言われた、知恵の国の副騎士団長だ。あの小父さんもといゴリラは、その地位に魔具を使わずに辿り着いた本物のゴリラだ。
アイツは俺に、ソフィの騎士として相応しい人物にするという理由で、当時まだ八歳だった俺に、自分の身長と変わらない大きさの真剣で毎日素振り1000回を強要したマモノだ。何度思い返しても、なぜまだ自分の両腕が付いているのかが理解できない。
まあおかげで、大抵の魔物には魔具の力なしで勝てる様にはなった。
さあ、長話をしている間に店に戻って来れた。結構時間がかかってしまったが、あれから倍ぐらい頼んだりしていないだろうか。
「あ、お兄さん。こっちです。」
店に入ると、若い女性の店員に呼ばれた。あ、こいつソフィにサイン頼んだ奴だ。
案内されるまま奥の部屋に向かうと、ソフィが寝ていた。
「この子、食べ終わって暫くしたら眠くなっちゃったみたいで、従業員用の部屋で寝かせてあげてたんです。荷物は全部こちらで預かってます。」
あまり待たせすぎたようだ。それに、長旅で疲れていたというのも嘘ではなかったのだろう。
「ありがとうございます。ご迷惑おかけしました。」
「いえいえ、面白いものを見させて貰いましたし、サインまで貰っちゃいましたしね。ところでお兄さん達、今日聖都に来たんですよね?」
「どうしてそれを?」
「いえ、この子があんまりにもはしゃいで色んなスイーツを食べていたので、初めてなのかなって。」
これが田舎者丸出しというやつなのだろうか。聖王への謁見の時にまでこんな調子だったらどうしよう。観光をしてる間に落ち着いてくれるといいが。
「それで、まだ泊まるところが決まってないんだったら、良かったら私の叔母さんがやってる宿にどうかなって。」
「それはありがたい話ですが、どうして?」
「その宿、冒険者ギルドから少し離れたところにあって、全然人がいないんです。後、私も部屋を借りているので、この子の顔も見れますし。」
「そんなにこいつが気に入ったんですか?」
「はい。珍しい銀髪の綺麗な娘ですし、何よりあんなに美味しそうにスイーツを食べてくれましたしね。宿の朝食をあんなふうに食べてくれたら、きっと叔母も喜ぶと思うんです。」
なるほど、ソフィの見た目と人の良さが生んだ縁だな。これはソフィに感謝するとしよう。
「分かりました。じゃあ暫くの間、そちらの宿にお世話になります。」
「決まりですね。もう敬語は要りませんよ。お兄さん。
私、アンネローゼって言います。アンって呼んで下さい。」
「分かった。ありがとう、アン」
「いえいえ、こちらこそ。」
無事金も集まったし、宿も決まった。とりあえずこれで路頭に迷うことは無くなった。
後はソフィが起きるのを待つだけだ。新天地での暮らしだが、意外と上手くやっていけそうな気がしてきた。
この作品に出てくるゴリラは、どこかのダンジョンに出るとされる人型2足歩行の魔物で、実在のゴリラとは見た目とパワー以外一切関係ありません。
次回は、明後日までにあげます。




