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Edge of Dystopia ―裂けゆく境界線―  作者: Mou
1 Prologue : First Contact ―樹海戦線―
3/3

#02分析会議

青木ヶ原での遭遇戦から、三日後。

 本部第七会議室には、冷たい空調の音と電子機器の低い唸りだけが響いていた。


 壁一面のスクリーンには、颯真のスーツHUD映像が映し出されている。

 紫の炎を纏う獣、そして槍を構える異世界の兵士。霧の中で波打つ光の円――。


「まずは生体反応の解析結果から説明するわ」

 榊原博士がスライドを切り替える。眼鏡の奥で、その瞳は鋭く光っていた。

「この獣の筋繊維構造、明らかに地球上の進化系統とは一致しない。細胞内に未知の結晶構造が確認できたの」


 隣で成瀬が、椅子に深く腰掛けながら映像を覗き込む。

「スーツのセンサーでも似た結果が出てます。ていうかこの結晶、エネルギー密度がやばいっすよ。常温でこれとか、バッテリーとして使ったら原子炉いらないレベル」

「……例えが怖いな」颯真は呟く。


「次に兵士の装備。黒い甲冑は未知の金属複合材で、現行のナノマシンでも解析不能。さらに槍の先端から発せられた電撃…」

 榊原博士はそこで言葉を区切った。

「電磁波スペクトルに、既知の物理法則じゃ説明できない波長が混じってたわ」

「つまり……魔法か」御子柴の低い声が会議室に響く。


 御子柴は資料に目を落とし、淡々と言葉を続けた。

「獣は兵士の護衛。兵士は周辺を偵察、あるいは我々の戦力を測っていた可能性が高い。次はもっと規模が大きくなるだろう」


 成瀬が苦笑しながらも、端末を操作する。

「スーツの損傷も直してますけど、正直、あの雷撃にはもっと耐性持たせないと……」


「ただ一点、不可解なのは――」榊原博士がそう切り出した、その瞬間だった。


 ――ウウウウウ……

 低く重い警報音が会議室を震わせた。赤い非常灯が点滅し、壁際の端末が自動で戦術マップを展開する。


『各員、緊急招集!青木ヶ原樹海に大規模熱源反応!』

 スピーカーから響く白峰蓮の声は、いつもより張り詰めていた。


 スクリーンが切り替わり、衛星からのリアルタイム映像が映し出される。

 霧の中に、複数の人型反応と大型獣型反応が蠢いている。数は前回の倍以上。


「颯真、行け」御子柴の声は短く、鋼のように硬い。

「修理途中ですが、戦闘は可能です!」成瀬が端末を叩きながら叫ぶ。

 整備班が立ち上がり、颯真のスーツの整備ベイへ走る。


 榊原博士が颯真の肩に手を置き、目を真っ直ぐに向けた。

「記録を残して。あの狭間の正体を掴むのよ」


 颯真は短く頷き、会議室を飛び出した。


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