第7話:勧誘
長らくお待たせしました。
続きになります。
「成程・・・それで戦いを教えて欲しいという事ですか。」
種を庭に植えた翌日・・・帰ってきたプルートに自分の今の心境を伝えて戦いを教えて欲しいとお願いする。さて、後は首を縦に振ってくれるかどうかだ。
「魔王様は何故、戦う力を身に着けたいとお思いになったのでしょうか?」
「スキルを上手く扱いたいからだよ。」
「成程・・・」
僕の答えにプルートは深く頷く。おっ?これってまさか・・・
「ですが、今はやめておきましょう。」
「ええっ!?なんで!?」
まさかの断りの返事が来て驚きと同時にショックを受ける。なんで教えてくれないんだ?
「理由としては先ず私は魔法を扱えるのですがこれが少々玄人向けなのです。戦闘未経験の魔王様には少し難しすぎることでしょう。」
「じゃあ、どうしたらいいんだよ。」
口を尖らせる僕に対し、プルートは人差し指を上げながらこう提案する。
「簡単な事です。戦いを生業としている者を仲間にするのです。」
「それって・・・勧誘しろってこと?仲間を?」
その問いにプルートは迷わず頷きを入れると僕は深く考える。仲間を勧誘する・・・確かにそれも手段の一つだろう。でも、魔王である僕の仲間になってくれる人が居るのだろうか?魔族ならまだしも野蛮な彼らが僕に付いてくれるか怪しいし・・・
「魔王様はご自分の能力を理解してくれる方が居ないと思っているでしょう。ですがそんなに悲観的にならなくても良いのです。」
「そうは言っても・・・。」
「ご安心ください。魔王様の元に付いてくれる方はきっと見つかります。さあ、早速行ってみましょう!善は急げですよ。」
「えっ、ちょ・・・待っ・・・!!」
僕は心の準備をさせてもらえないままプルートに手を引かれるとそのまま屋敷の外に連れ出されてしまうのだった。
◇◇◇
ソルバース王国からやや東にあるビクトリア村・・・そこでは今日もまた魔族残党の討伐に成功した一人の女魔導士が村人達に歓喜と称賛の声を上げられていた。
「マーキュリー様のお帰りだ!!皆!今日も彼女が魔族残党を討伐したぞ!!!」
「流石はマーキュリー様!!」
そんな声と共にマーキュリー本人は気だるそうに溜息を吐きながら村人達の前を横切る。元々私は魔族の生態と魔力の研究をしたいがために魔族狩りをしていたのだが気が付けば滞在していた村で英雄扱いされてしまっていた。
あぁ、めんどくさいわ。私は貴方達の為に魔族を倒している訳じゃないのに。マーキュリーがそう心の中で愚痴を零していると目の前に村長が現れて労いの言葉を告げてきた。
「いやぁ!!流石は"水星の魔導士”ですな!!」
「いえ、当然の事をしたまでです。」
いつものように適当な返答を返すも村長はしつこく彼女に声を掛けてくる。
「流石は魔導士様!!どうですかな?宴を開きますが?」
「勝手に開けばいいじゃない。私は休みたいの。」
「左様ですか!!ではゆっくり休まれてください!!」
あー!もう!鬱陶しい!!誰が貴方達の宴なんかに参加するのよ!!・・・そろそろこの村に居るのも飽きてきたわね。マーキュリーは与えられた民泊の一室に戻るとまた愚痴を零して大の字でベッドに横になるのだった。
◇◇◇
プルートに無理矢理外へ連れ出された僕はそのまま彼に手を引かれて暫く歩くと草原地帯に立つ穏やかそうな村へ辿り着いた。
「到着しましたよ。魔王様。」
「それはいいけど・・・ここは何処なの?」
ようやく足を止めたプルートに顔を向けてそう尋ねる。ここまで歩いてきたけど結構な距離があったなぁ・・・おかげさまでこっちは脚がパンパンだよ。
「ここはビクトリア村。私達の屋敷がある森を東に進んで出たすぐ先にある場所です。」
「あの森を抜けたら村がすぐそこにあったんだ・・・で?ここで何するの?」
「決まっています。勧誘ですよ。」
プルートの答えに僕は思わず「えっ?」と口に出してしまう。こんな穏やかな村で勧誘?それってさっき言ってたことだよね?そもそもこんな村で戦いに長けた者を勧誘できるのだろうか?農業が出来そうな人は勧誘できそうだけど・・・
「プルート。この村で本当に戦いを生業としている人を仲間に出来るのか?」
「戦いに長けている・・・となると少々当てはまらないかもしれませんが実力は確かだと伺っております。名は・・・マーキュリーと言うそうでこの村では”水星の魔導士”という異名で称えられています。」
マーキュリー・・・名前と魔導士と言う職業からして女性だろうか?でも、そんなに腕のある魔導士がなんでこの偏狭そうな村に居るのだろうか?
「それで?そのマーキュリーって人に会いに行くの?」
「そうしたいのですが私も正直、まだお会いしたことが無いのです。村を訪れたことはあるのですが・・・」
プルートの言葉からしてマーキュリーという人は留守にしていることが多いのだろう。にしても水星の魔導士か・・・どんな人なのか見当もつかないな。それより・・・この村はとても心地が良い。畑もあるみたいだがここで作物を育てればいい野菜が育つだろう。野菜の種を売っていた店もあったし時間があれば寄ってみよう。
「こんにちは旦那様。」
するとプルートは丁度通りかかった村人に声を掛ける。
「おう、見ない顔だな。」
「えぇ、隣の町から来た者でして・・・」
「ほう?そんな奴が何の用だ?」
僕らに興味を持った村人が顎に生えた無精髭を撫でながらプルートにそう尋ねてくる。あの感じだとこの村に部外者が来ることは滅多に無さそうだ。他所者は嫌うというより興味を持つ辺り、外の世界にはある程度関心があるようだ。
「えぇ、”水星の魔導士”の噂を聞きましてねぇ」
「おぉ?お前さんも知ってるのか?彼女はなぁ・・・」
水星の魔導士の話を出した途端、村人はまるで自分の事のように嬉しそうな顔をすると彼女の話をしてくれた。なんでも村にいきなりやってきては魔族残党を次々仕留めていき、気が付けば皆が慕う存在になったほどだという。唯一の欠点は宴を開いても断られて来ないこと・・・だそうだ。
「あの人、魔導士の話をしてる時、凄く目がキラキラしてたね。」
「それだけ慕われているのでしょう。どうやら・・・もう少し聞き込みをしてみる必要がありますね。」
プルートは村を見ながらそう言うと村での聞き込みを続けるのだった。




