EP6
「いつまで泣いてるんだ。そろそろ起き上がれよ。つまんねえな。」
「そうだ。金田もこう言ってるだろ。それに早く終わらせないと学校遅刻しちまうぞ。」
そう声をかけられる。どれだけ我慢しても結局はこうなる。もう全てを諦めようと思った。諦めた方が楽になる。
「ごめんなさい。」
「謝れば済む問題でもないけどな。まぁ分かればいいんだ。気が済むまで殴らせろ。」
そう言って金田くんはまた僕を殴った。吐き気が止まらない。気持ち悪い。何度も殴られ次第に立てなくなる。
「はぁ、まぁこれでいいか。平坂もストレス解消になっただろ。」
「あぁ、満足だ。ノロマくん遅刻しないように学校行くんだよ。じゃあな。」
2人の足音が遠ざかっていく。安心するとともに痛みが激しくなった。痛いのは嫌いだ。殴られている間まるで鎖に繋がれているかのように動かなくなる。まるで平坂くんや金田くんの奴隷のようだ。きっと2人はそう思っているに違いない。
ふと時間を見ると授業が始まる5分前だった。ここからなら走れば間に合うはずだ。そう思い傷だらけの体を無理やり動かした。
校門前まで行くと生徒指導の先生が立っていた。僕は身なりを整え挨拶をした。
「先生おはようございます。」
「おお。狭川珍しいな。いつも1時間ほど早く来るのに今日はギリギリだったな。」
「ちょっと寝坊してしまいまして。」
「そうだったのか。夜更かしは程々にな。」
「はい。そうします。」
すると後ろからぞろぞろと人がやってきた。やばい遅刻するなど言いながら走っていた。僕も急いで教室に向かった。教室に着くと石崎くんが話しかけてきた。
「陽翔おはよ。珍しいな。」
「石崎くんおはよう。寝坊しちゃった。」
「夜更かししてたのか?」
「まぁ、そんなとこ。危なかった。」
「遅刻じゃなくて良かったな。ところで3時間目の宿題やったか?」
「ん?やったよ。」
「まじ?!見せてくれ。俺やってないんだよ。」
「もちろんいいよ。」
「陽翔ありがとうな。」
そう言って石崎くんはノートを持って一生懸命書き写していた。バレなくてよかったと思った。見えないところばかり殴られていたから大丈夫だったようだ。まだ痛むが自分があまり顔に出すタイプじゃないことに安堵した。
放課後石崎くんは部活がないようだった。珍しく石崎くんは遊ぼうと声を掛けてきたのだった。断る理由もなかったので僕たちは公園に向かった。もちろんあの公園とは別だった。
「今日の学校もだるかったな。」
「そうだね。急に難易度上がったし。」
「それな。俺テスト不安なんだけど。」
「僕も不安だよ。」
「なら俺と一緒に今度勉強するか?テスト週間は部活ないんだよ。」
「そうなんだ。じゃあ一緒に勉強しようかな。」
「陽翔がいると心強いな。数学とか俺なんも出来ねぇよ。」
「とことん教えるよ。」
「お手柔らかに。」
石崎くんと話している時間はとても楽しかった。あの後軽くボールを蹴ったりキャッチボールをしたりして久しぶりに運動した気分だった。こうしてずっと石崎くんと仲のいい友達でいられたらなと思った。