EP3
学校を出て家に向かっている途中嫌な視線を感じた。早歩きで帰ろうとすると声をかけられた。
「よお、ノロマじゃないか。久しぶりだな。お前別の学校行くとか聞いてないんだけど。」
「え、それは言う必要なんて......」
「はぁ?お前俺に口答えする気か?」
「ち、違う!」
「はー。イライラする」
殴られたと気づくことに時間がかかった。ズキズキと痛む頬を抑えて立ち上がる。頭が逃げろと指示を出す。それでも体は動かない。恐怖に支配されていく。
「お前相変わらず反応薄いな。まぁ、ストレス発散にはなるからいいか。良かったな今日は俺としか会わなくて。さっきまで4人と話してたんだよ。学校は違っても家は近所だからな。引っ越すぐらいしかお前に逃げる道はない。もちろん引っ越すなんて言わないよな。」
「うん、そんなことしないよ。」
「分かってるならいいんだ。今日は気分がいいからなこのぐらいにしておいてやる。じゃあな。」
そう言って去っていく。あいつは平坂遥斗という小学生時代からの同級生だ。あいつから受けた暴言暴力は今でもトラウマになっている。さっきのように体全身が硬くなり恐怖に支配されてしまう。僕の中で最も怖い人間だ。
またあいつに会うと痛い目に遭うということは分かっている。いつまでも止まってるわけにはいかない。そう思い無理やし足を動かした。家に帰ると親は居なかった。きっと仕事にでも行っているのだろう。僕はそのまま寝室へと向かった。
しばらくするとガチャっと音が聞こえた。寝室から出てリビングに向かうと母さんがいた。母さんは僕に気づくとため息をついた。
「あんた帰ってたんなら洗い物ぐらいしなさいよ。私も疲れてるのよ。」
「ごめん母さん。ちょっと課題の量が多くて出来なかった。」
「あら、そうなの?それなら仕方ないわね。それでそのほっぺたどうしたの?赤いわよ。」
「今日友達が出来てドッヂボールしてたんだよ。その時に思いっきり当たっちゃって.....」
「そうだったのね。気をつけるのよ。それと流石私の息子ね。もう友達が出来たなんて。」
「だろ。とりあえずもうちょっと残ってるからやってくる。ご飯はハンバーグがいいかな。」
「分かったわ。勉強頑張るのよ。」
そうして僕はまた寝室へと向かった。僕は聞こえないぐらい小さなため息をついた。