不思議な鏡
「聖先輩・・・実は裏表紙に鏡がありまして・・・・・・・」
「裏・・・?あ。本当だ」
聖先輩は鏡を見ているがなんのリアクションもない。普通だ。
「聖先輩!その鏡・・・」
「鏡がどうしたんだ?そりゃ昔の物にしては綺麗だな」
「え・・・?」
何ともない?ありすは恐る恐るもう一度鏡を見たがやっぱり姿の違う人物が映っている。
―銀の髪に紅の瞳。
ありすは自分の頬に思わず触れてみると鏡に映ったその娘も同じように頬に触れた。
勘違いじゃない!ありすは確信した。だが、その事を聖先輩に伝える勇気は無かった。
「・・・"鏡に血を捧げよ"か・・・・」
ありすは鞄の中の簡易裁縫セットの中から針を出すと左手の小指にそろりと刺した。
「ーッ!!」
思ったより痛い。ありすは少し後悔した。
ぷっくりと血が出てきたのを確認したありすは鏡にそれを少し擦るようにして付けてみた。
「あ!」
するとどうだろう、鏡に付いた血がじんわりと吸い込まれるように消えてゆく。
やがて血が全て無くなりまた元の綺麗な鏡へと戻ってしまったが何も起こらなかった。ありすは不思議に思いもう1度本を文字のあった所を開いてみた。
「聖先輩!また文字が追加されています!!」
「ん。解読するね。それにしても不思議な本だ」
「そうですね。でも聖先輩が読み解ける文字で良かったです。私1人じゃ無理でした・・・」
「俺も親父が考古学やってなかったら無理だったよ」
―5分後。
「解かったよ。"暁の明星の名の元に誓約は成されん。汝暁の涙を受け入れよ"だ」
「暁の涙?何だろう?そんな物無いですよね??」
ありすは本を持ち上げてみた。
ポトッと本のどこからか小粒状の緋色の石らしき物が落ちてきた。
「・・・聖先輩。これどうするんでしょうか?」
「"受け入れよ"とあるから飲み込むじゃないのか?」
飲み込む・・・。凄く勇気がいるなとありすは思った。