はじまり
「今日はよく会うね?」クスクスッ…。
渡辺ありさ生まれていままで出会いに恵まれなかった暦19年。
――大学で憧れの先輩、有栖川聖にゼミで偶然出会ったときはラッキー!ぐらいにしか思わなかったが、今日3回会うとなるとちょっと偶然では済まされないかなとありさは思った。
まず大学の食堂でばったり1回。もちろんその後のゼミで2回目。極めつけの3回目は大きな旅行鞄を持ったお婆さんの手伝いの途中で出会った事である。
「ありがとねぇ。もうすぐしたら私の店までつくのでお礼にお茶でもしておくれ」とお婆さんが言うので今日はバイトもないことだし先輩も「じゃあお言葉に甘えて…」と言ったのでありさもそれに従うことにした。
3人で駅から10分程歩いて小さい商店街の曲がった先に行くとドアがステンドグラスに飾られたちょっと洒落た喫茶店?のとこでお婆さんが立ち止まり、ミニバックからアンティーク調の鍵を2本取り出しカチャカチャ鍵を開けながら「まぁまぁ狭いですが、どうぞお入り。」と2人を手招いた。
「俺、この近くに住んでるけどこの店はしらなかったなぁ」
「聖先輩そうなんですか?私、駅の中にあったモネの絵が見たくて立ち寄ったんです」
そう言いながら中に入るとありさは驚いた。