……転生……
FF14が大好きで、根性版からずっとやっています。
そんなFF14の世界に異世界転生できたら楽しいだろうなぁと思って、書き始めました。
ただ、そのままだと、スクウェア・エニックス様に怒られると思うので、色々と変えていますが
もし問題になる様でしたら直ぐに削除します。
プロローグ
「あれ、私は死んだのかな」
さっきまで自分が寝ていた病室には、息子達夫婦に孫が居て孫達も息子の嫁達も泣いているようだ。
ベッドの上には自分がまだ寝たままだが、顔色に生気は無く、何より先ほどまで身体に取り付けられていた各種の計測装置が外されている。
「そうか、何かで読んだな死んだら自分の姿を見る事ができるって、幽体離脱だったっけ」
『源 義氏』、それが私の名前だ、
「まぁ、でも悪く無い人生だったかな」
祖父、父と受け付いた家業を発展させて、全世界で社員数万人のグローバル企業へと発展させて、会長職を長男に譲った後は末期癌で入院するまで相談役として、悠々自適の生活を送っていたのだからそれも当然だろう。
「思い残すことは無いなぁ、結婚以外は問題無かったし」
父母の反対を押し切って結婚した妻は、資産目当ての女で、次男が生まれた後は育児、家事を放棄して
遊び回っていた、そして浮気をした挙句に義氏に離婚されてそれ以来音信普通になっていた。
そんな事を思い出していると意識が一度途切れ、次に意識が戻ったのは、本社ビルの中にある相談役室だった。ここは、本社ビルが竣工以来、社長室、会長室、相談役室と名前を変えてずっと義氏が使っていた部屋だ
「へぇ、もう花が飾ってあるのか」
秘書課の誰かが飾ったのだろうか、義氏の愛用していたウォールナット製のデスクの上には白いカサブランカがバカラのクリスタルベースに飾られている。
義氏は窓から見慣れた外の景色を見た、天気が良ければ夕焼けに染まる富士が見えるこの部屋からの景色は義氏のお気に入りの物だった、そこでまた意識が途切れる。
次に義氏の意識が戻った場所は生家だ、ここは祖父が建てた和式の大邸宅で、今は祖父の記念館として使われている、庭には桜の木があり義氏の子供の頃は良く花見の会等が行われていた。
「懐かしいなぁ、あっちに行ったら爺さんや婆様に逢えるのかな……」
そう考えていると、自分の身体が金色の光に包まれるのを感じた
「お迎えが来たか……」
第一章 転生
「ペッコ、ペッコ」
「う、うん」
「ペッコ、良かった誰かお父さんを呼んできて、ペッコの意識が戻ったって」
「ここは、私は……」
気がつくとベッドに寝ている様だ、
「う、痛い……」
頭、胸、腕、脚と全身に痛みが走る、そして目を開けると……
「何だ、看護師がコスプレ? ああ、もうすぐハロウィンだったっけ」
目の前にいる数人の女性看護師は白衣では無く、みんなアラビアのダンサーの様な服で、頭には猫の耳の飾りがついている。
「こんなに緩い病院では無かったはずだが……」
痛みは酷いが首は動く様だ、そして周りを見渡して愕然とした
「どこだここ?……あ、そう言えば私はさっき死んだのでは?」
今寝かされているのは病院の個室では無く、石造りのコテージの様な建物の中だ。
「おう意識が戻ったか」
建物の中に男性が二人入って来たが、この二人も仮装をしていて、どちらも頭に猫の耳を付けて、30代後半位に見える男性の方は、銀髪で、猫の耳も同じ色をしている、やはりアラビア風の衣装を着ている。
「ペッコ大丈夫か? リド、もう一度頼む」
リドと呼ばれた若い方の男性は、白髪で猫の耳も白髪だ、こちらは中世ヨーロッパ風?の衣装で、左脇には最近ではほとんど見かけなくなった大判の書籍『エンサイクロペディア』の様な物を持っている。
「この人は医者なのか?」
と一瞬思ったが、聴診器も持っていない様だ、だがこの男性が本を開き、何か印を結ぶ様な仕草をすると、自分の身体が一瞬光に包まれて、全身の痛みが引いて行く様な気分がする。
「オドさん、これでもう大丈夫です、二、三日したらペッコ君は元気に動けますよ」
とリドは歳上の方の男性を見て話しかけた。
だが、義氏はその男の横顔を見て
「耳がない!」
そう叫んでしまった、男性の顔の横、本来耳がある筈の場所に何も無い、髪の毛で隠れているのではなく、耳が存在しないのだ
「おい、ペッコ大丈夫か、やはり頭を強打したせいでまだ変なのか?」
そう言う歳上の男性もやはり耳が無い……良く見ると、周りの女性達も全員耳が無い、義氏が仮装だと思っていた頭の上に有る猫の耳の様な物が彼らの耳だと言う事にここで初めて気がついた、しかもよく見ると全員猫の様な尻尾も生えている。
「これはもしかして?」
義氏はこの種族に見覚えがあった、自分が危篤状態になるつい数日前まで、病院のベッドで寝ながらプレイしていた、世界で4000万人がプレイしているMMORPGゲームの世界の住人『ウェアキャット族』だ、義氏自身のゲーム内のキャラクターもこの種族で、名はド・ペッコ
「そうか、死んだと思ったけど、夢か、ゲームの世界にいるなんて楽しい夢だな」
そう思った義氏はまた目を閉じた。
次の朝、窓から入る日差しの気配で、義氏は目覚める。
「そろそろ朝の検温の時間だと思うけど」
と目を開けると……
「嘘だろう……」
ベッドから体を起こして見ると、やはり昨日と同じゲームの世界だ。
「これは、もしかして 病室で孫と一緒に見ていたアニメの『異世界転生』っていうやつか?」
等と思って、自分の両手を顔の前に持ってくると
「私の手じゃない」
手も腕も先程まで危篤状態でベッドに寝ていた自分の物では無い、4、5歳位の幼児の物だ。
身体も脚もそうだ
「どっかに鏡は無いかな」
と周囲を見回したが、どうやらこの部屋には鏡は無い様だ。
「一体何が起こった……私は確かに死んだのだよな、まさかゲームの世界で人生をやり直せって感じなのか?、でもゲームだと最初はちゃんと大人で『鳥馬車』に乗っている所から始まって、商人と会話をして指輪を貰ったりしたのだけど……」
義氏のゲーム歴は長い、中学生の頃に『Altair 8800』を買ってもらって以来、PCゲームの世界にどっぷりとハマり学生時代には自作のゲームを作りそこそこの利益を上げた事も有る。
今でもゲーム用のPCを自作するのを趣味にしていて、孫達が使っているPCも義氏が作った物だった。
しばらく考えていると、自分の頭の中がスッキリとして来た
今の義氏の記憶が二種類有ると言う事に気が付く。
一つは日本人『源 義氏』の記憶、この中には10年以上プレイしてたこのゲームの世界の記憶も有る。
そしてもう一つが、今のこの身体、5歳位の幼児である「ド・ペッコ」の物心がついてからの記憶だ
ゲーム内マップと同じ『南ジャズィー』の『忘却のオアシス』を統治する『ウェアキャット・ド族』の族長『ド・オド』の嫡男で、父には数人の妻が居て、ペッコには腹違いの姉が何人かいる、そしてオアシス内には先代の族長である伯父の元妻や子達……ペッコには従兄従姉に当たる……も一緒に暮らしていて、姉や従姉達には可愛がられているが、ペッコよりずっと年長で既に成人している二人の従兄からは疎まれている……そんな記憶が頭の中に流れ込んできた。
「なるほどね、やっぱり異世界、それもあのゲームと同じ様な世界に転生したってのが正しいのかな?
そうなると私のレベルってどれ位なのだろう?」
そう思った義氏は色々と試してみたが、肝心のステータスウィンドーが出ない、病院の個室で孫達と見た
異世界転生系のアニメだと、主人公は直ぐに自分のステータスを調べられる様になっていたが、どうやらこの世界はそんなに便利な所では無いらしい、そして
「喉が渇いた、腹が減った」
ペッコがそう呟くと、ペッコの側の床でベッドに寄りかかる様にして寝ていた女性……ペッコはこの女性が自分の母だと認識した……が目を覚まして。
「ペッコ、大丈夫、母さんの事わかる?」
「うん、母さんお腹すいた」
「良かった、すぐに朝食の支度をするわね」
そう言って母は部屋の隅の小さなキッチンで何か作り始めた。
義氏の記憶が
「介護士さんを呼んでトイレ行って顔を洗って歯を磨いて、シャワー浴びて……」
と少し前までの病室での朝のルーティンを思い出すが、幼児のペッコの意識が
「トイレは隣の部屋そこには鏡も洗面台も有る」
と頭の中に浮かんで来た。
ペッコがトイレを使用して、踏み台を利用して洗面をしながら鏡を見ると、想像していた通り、今の自分の姿は『ウェアキャット族』の男児の物だった。ベッドに戻ると母が着替え……下着にシャツとパンツとサンダルと言う質素な物だ……を用意してくれていた。
そして、
「あらまぁ、顔もちゃんと洗ってきたの?偉いのね」
と褒めてくれた、どうやらペッコ少年はあまり綺麗好きの子供ではなかった様だ。
キッチンのテーブルの上には固そうなパンと、何かの肉を焼いた物と、湯冷しをグラスに入れただけのこれまた質素な食事が並んでいた。
「この肉は、一昨日あなたが初めて倒した「サンド・ワーム」の肉の燻製よ、お父さんもまだ子供なのにたいした奴だって褒めていたの」
そう言われてペッコは一昨日の事を思い出した、姉、従姉達と砂漠に狩に行き、子供でも狩れる『サンド・アングラー』を何匹か仕留めた所に、急に大型のモンスター『サンド・ワーム』が出現したのだった。ペッコは父、オドから貰った短剣をサンド・ワームの急所に刺す事ができたのだが、その際に暴れた
ワームに跳ね飛ばされた……と言う事を思い出した。
「僕は、こいつを仕留め損なったんだ……」
なぜか悔しくて涙が出てきたが、母が
「何言ってるの、姉ちゃん達がちゃんと見ていたのよ、あなたは跳ね飛ばされたけど、姉ちゃん達が駆けつけた時にはワームはもう死んでいたって、しかも貴重な若い雌のワームだったのよ」
と慰めてくれる。
確かゲーム内の設定では、『エウロパ小大陸』の『南ジャズィー』というマップには北側と南側にそれぞれオアシスが有りここは南側の『忘却のオアシス』で周囲は完全に砂漠で、族長率いる『ド族』は極めて原始的と言える狩猟生活をしていてる、男も女も狩で獲物を倒して、初めて一人前と認められる、特に正式に部族の構成員として認められるには大型のモンスター「サンド・ワーム」を一人で倒す事が条件になっている。だから従姉や姉達も全員が弓や槍を持った狩人だ。
そしてこのサンド・ワームの雌の肉はこの世界で『エウロパ三代珍味』と言われて高価で取引されている。ゲーム内ではそんな珍味を集めるクエストもあった位だ。
「食事が終わったら、お父さんの所に行きなさい、それとあなたを治してくれたリドさんにもお礼を言いなさいね」
「はい、母さん」
前世……言って良いのか不明だが……では還暦をとっくに過ぎていた義氏だが、この世界のこの姿では
母の言う事を素直に聞く方が良さそうだ。
父オドは族長専用のコテージを持っていて、いつもそこで気難しそうな顔をしている。
そんな顔になるのも理由が有る、元々ド族は、ここから東方の『黄金平原』を縄張りにしていたのだが、オドの曽祖父の時代に爬虫類型の獣人『ドラコニア族』との争いに負けて、この砂漠まで逃げてきたのだった、ここでオアシスを発見して定住したのだが、ドラコニア族はこの砂漠地帯まで進出してきている。
ドラコニア族の戦士は強力で魔法も使える、一対一の戦いならオドでも勝てるが、集団戦となると人数の少ないド族の方が劣勢なのだった、しかも前族長の兄が残した二人の甥は、とっくに成人しているものの狩の腕も武術も半人前と言う情けない状況なのだ、表向きには兄に族長の地位をかけた決闘を申し込んで勝利した、と言う事になっているのだが、実際には病を患った兄から、二人の甥のうちどちらかを次の族長に、オドはそれまでの繋ぎの族長となって欲しい……と言われてイヤイヤながら兄と戦ったのが実態だった。しかし現状ではどちらの甥にも族長を譲る事など不可能なのだった。
『ドラコニア族』の方は『砂の都』の正規軍『不死隊』の駐屯地として、オアシスの一部を提供する事でとりあえずなんとかなってはいるが、オドに取ってはまさに内憂外患の状態だった、
ペッコが、父のコテージの警護をしている従姉達に朝の挨拶をして中に入ると
父と昨日のリドが朝のお茶を飲んでいる。
「父上、おはようございます、リドさん昨日はありがとうございました」
とペッコが言うと、リドは驚いた様な顔で
「おいおい、もう少し寝てないとダメだろう、もうどこも痛く無いのかい?」
「はい、全然、リドさんのおかげです」
するとオドが嬉しそうに
「流石は俺の息子だ、しかも5歳でサンド・ワームを倒すとは、俺だって10歳の頃だったのに」
と今日は上機嫌の様だ。
「ほら、お前の短剣だ、心核を見事に刺していたぞ、一突きで倒したから良い肉が沢山獲れた、見事な物だ研ぎ直してやったから受け取れ」
「父上、ありがとうございます」
「『海の都』傭兵団随一の剣士と言われたオドさんも親馬鹿丸出しですね、いや、でもやはり血統なのかな5歳でこれなら、将来楽しみですね」
とリドも話を合わせる。
ペッコ=義氏はここでリドの正体に気がついた。
「海の都」には『算術士』という魔法職のギルドがあり、そのギルド・マスターがリドだ、ただしゲーム内では勝手気ままに旅をしている様でギルドに居た事は無かったが……
「リドおじさん、僕を治してくれたのって算術ですよね、その本が魔法書ですか?」
「おう、小さいのに良く知っているな、でも一つ間違いがある、僕はおじさんでは無くてお兄さんだ」
「はいリドお兄さん(しょうもない奴だ)その本があれば僕も魔法が使えますか?」
「うーん、そうだね魔力をこの本の魔紋に流す事ができれば、誰でも使える……と言う事になっているんだけど、少しコツがいるんだ、やってみるかい?」
「はい」
ペッコは魔法書をテーブルの上に広げて……重いので当然片手で持つ事はできない……左手を魔紋の上にかざした。
義氏はゲーム内では、算術士の上位職である『召喚術師』を所得していて、そのレベルは最高位の100だった、もしかして魔法が使えたら良いな位で思いついた事だが、この幼児の体では精々低レベルの魔法が使えれば良い方だろうな思った。
壁際の椅子に目掛けてLV1の攻撃魔法『ロビナ』を放ってみた、魔法はちゃんと発動して、見事に椅子を破壊できた、しかし椅子の破片が飛んで、側にいた従兄に当たってしまった、
「おい、痛いじゃないか」
「あ、すみません」
今度は治癒魔法の『フィジコ』を従兄に向かって放ってみる。
「お……」
従兄の傷は瞬時に癒やされた、ついでに眠そうだった顔が少し元気になった様だ。
「これはこれは、君、魔法の才能があるよ、次は使い魔を呼び出せるかな?」
「使い魔ですか?」(知らないフリをするのも大変だ)
「そうこう言うのだ、算術士はこの使い魔で効率的に戦ったり治癒をしたりできるんだよ」
リドはそう言うと自分の使い魔「クリスタル・フォックス」を呼び出した。
「わぁ、可愛い」(使い魔は自分のイメージする動物なら何でも良いんだよな、じゃあ)
ペッコ=義氏は長年家で買っていた、アメリカンショートヘアの「華子」をイメージして猫型の使い魔を呼び出した。
「クリスタル・キャットだね、これは見事だ、オドさん彼が16歳になったら是非「海の都」に寄越して欲しいな、うちのギルドの優秀な助手が責任を持って預かるから」
(あ、やはり助手に丸投げにするつもりだ)
「いや、それはダメだ、ペッコにはちゃんと剣や弓、槍を教えるのが先だからな」
とオドは言うが、嬉しそうにしている。
「そうか残念だな、ペッコ君こっちの僕の予備の魔法書を君にあげよう、自分で算術魔法の練習をすると良いよ、使い魔を自分の思うように動かせれば色々と役に立つからね」
「はい、リドおじ……お兄さんありがとう」
「さて、じゃあ僕は海の都に帰るね、オドさんまた遊びに来るから」
「ああ、急に呼び出して悪かったな、息子の怪我を治してくれてありがとう、元気でな」
リドは、ペッコに手を振りながら転移魔法で帰って行った。
「すごいな、転移魔法、父上も使えるのですか?」
ゲーム内では転移魔法は各都市や村のメインクリスタルと感応すると使用できる様になる、このオアシスにもメインクリスタルは有るのだが、そう言えばあまり使われていない様だ。
「あ……ああ、使えなくはないが、あれをやると凄く疲れるからな、若い頃は大丈夫だったが……
それより、ペッコ今日からお前も一人前の男として扱うぞ、まずは弓と槍の訓練だ、剣は俺が直々に教えてやる」
「はい父上」
こうして、ペッコの狩人としての修行の日々が始まった。訓練相手には父や従姉達に加えて一個中隊いる「不死隊」の兵士も相手をしてくれた。
この兵士達は実は暇を持て余していて、ペッコの良い訓練(遊び)相手になってくれたのだった。
そこでペッコは気が付いてしまう
「へぇ、剣も弓も槍もレベル100までの技が全部使えるんだ」
もちろんまだ子供の身体なので技が使えても威力はそこまででは無いが、それでも従姉や一般の兵士が相手なら、そこそこの相手ができる、もちろん父には全く歯が立たないが。
なので、ペッコ=義氏は自分の経験を動員して……義氏は中学生の頃より武道を学び始め、大学生の頃には剣道、居合道、合気道、空手などの黒帯になっていた、その後も一年ほど前に末期癌が発症するまでは週に二回はジムや道場で体を鍛えていた。なのでその知識を活かして、木の棒と岩で手製のバーベルとダンベルを作って筋力と持久力を鍛えて、更に元々持っていた敏捷性も鍛える事にした。
算術魔法に関しては、狩のついでに人気の無い所で、召喚術を含めた色々な魔法を試してみた。
「なるほど、武術と違って魔法なら完全に使えるのね」
そしてレベル100で覚える『サン・バハムート』も召喚できる事がわかった。
(これは算術魔法は封印しておかないと色々と問題になるかな)
武術の方は手加減ができるが、魔法、特に召喚獣の方は常に全力の攻撃なので、そんな器用な事はできない、子供のペッコが召喚術が使えるなどとバレてしまったら色々と面倒な事になるのは明白だったからだ。
食事も質素で娯楽の無いこのオアシスでのペッコ=義氏の唯一の娯楽は水浴びだ……風呂やシャワーが無いこのオアシスでは、狩の後に水浴びをするのが日課なのだ、当然従姉や姉達も一緒に入るのだ。
ゲーム内ではレイティングの関係でここで水浴びをするNPC達は水着を着用していたが、この世界ではそんなルールが無いので、みんな何も身に着けていない。
そもそも義氏がこのゲームにハマったのはゲーム内の種族『ウェアキャット族』女性の美しさがきっかけだった。ゲーム内でもたまにこのオアシスに来て水着姿のNPCを鑑賞していた位だった
それが、その実物が目の前に居るのだ、しかも自分は幼児の姿なので、誰にも警戒されないでゆっくりと美女達を鑑賞できるのは眼福だった。更にそんなペッコを従姉や姉達が一緒に水遊びをしたり体を洗ったりしてくれるのは天国だった。
「充実していたけど、色々と苦労もあった人生だったから、きっと神様があのアニメの様にチートスキルをくれて、第二の人生を楽しませてくれているのかな?、だとしたらどの神様だか知らないけど感謝しないといけないよなぁ……ただ残念なのは、もう少ししたら姉さん達も一緒に水遊びとかはしてくれなくなるなぁ、あ、そうしたら今度はお約束の美少女に囲まれたハーレム状態になったりするかな?……」
と思うペッコ=義氏だった。
ペッコが成長するにつれて、狩の腕も上達して雌のサンド・ワームを定期的に狩れる様になったので
部族全体の収入が大幅に上がった。その結果食事の事情が改善されたのは嬉しかった。
商人から購入できる小麦の種類と量が増え、野菜の種類も増えたので、パンだけではなくクスクスも食べられる様に様になった、ゲーム内の義氏のキャラの料理スキルがMaxなのがペッコに受け継がれているので、色々な料理を作って母や姉、気難しい父にも喜ばれたが、父は料理をする暇があるなら、剣の修行をしろと煩く言ってくる。
ただ、ゲーム内と違うのは料理をするには実際に食材を切って、下処理をして味付けをして、焼いたり煮込んだりすると言う、普通の料理の手順が必要なのだが、元々料理が趣味で、義氏の所持していた会社の中には外食産業の会社も有り、義氏はそこで好物のイタリア料理の監修もしていた位なので、この程度は余裕だった、この世界では料理以外でも実際に武器や衣服などは素材から製作しなくてはいけないし、剣等は手入れを怠れば錆びる、ゲーム内の様にワンクリックで、装備を全部着替える様な事もできない。この世界は魔法は使えるものの、より現実的な世界なのだった。
そんなペッコも12歳になる頃には身長も伸びて、従姉達を追い越す様になり、筋力も歳上の従兄達を
遥かに凌ぐ様になった……当然の様にもう一緒に水浴びをしてくれる事は無くなったが……。
その結果、父の代理として狩の指揮を取るようになっていて、歳上の姉や従姉達は全く問題なく
ペッコの指示に従ってくれる様になっている、更に狩の合間には駐屯している不死隊の訓練に参加して、教官の教導軍曹が
「お前ら、子供に負けて悔しく無いのか、情け無い」
と嘆く位になった。
この『塩の都』出身のハイヒューマン族の軍曹は、ペッコの事を可愛がってくれて
12歳の誕生日には不死隊の下士官用装備の簡易鎧『サージェント・タパード』とその他の装備一式をプレゼントしてくれた。
今、ペッコが狩の時に着ているのはその装備を自分でド族の部族色である深紅に染めた物だ。
「うーん、赤くすると『海の都』の同業者みたいになるんだな」
と軍曹には不評だったが。
そしてそんな有る時、世界が少し変化した。東の『黄金平原』に、禍々しい塔が突然現れたのだった。