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仮面と決意



シャルテの屋敷で仮面舞踏会が開かれることとなり、

メイド達は大忙しでセッティングや招待状やらで忙しかった。

そんな中シャルテはパーティーなんて堅っ苦しい行事は苦手だった。

乗り気になれないが、一応グレイシス家のお嬢様として、

シャルテは渋々仮面舞踏会に出ることにしたのだ。





舞踏会当日は多くの領家の人たちが集まり盛大に盛り上がっていた。

そんな中一人つまらなさそうにしていたシャルテは外の空気を吸いに出た。



「はぁ〜〜〜…息が詰まるわ。領家のパーティーなんてつまらない。着飾って、ただ自分達の見栄の張り合いなんてして、交流という名目であってダンスもただの飾りもの…それに、上手く踊れないし、尚更つまらない」



パーティー会場を外から眺めていると、突然声がかかった。



「そこのお嬢さん。よろしければ私のダンスのお相手をお願いできますでしょうか?」



そこには顔に仮面を着けた背の高い男性が手を差し伸べていた。



「ダンスって…私は踊りは苦手なの、残念だけど他をあたってください」



「かまいません。型には嵌らず少々締まらないというのもダンスの一つの楽しみ、

自由で良いではないですか」



「そ、そう?それじゃあ…」



差し出された男性の手にそっと手を重ねる。



「私がエスコート致しますので、そう堅くならずにしていてください」



スッと軽やかなステップに導かれるままシャルテは足が軽くなる感覚に驚いた。



「……!(なにこれ…今まで踊ってきたステップとは違う…足取りが軽い)」



フワッとしてなめらかだけど何処か芯のあるような動き、

シャルテは段々と踊るのが楽しくなってきた。



「あはは、なにこれ面白い!」


「……」



ダンスが終わるとシャルテはご満悦の表情でクルクルと回って見せた。



「フフフ、楽しかったです。こんな踊りがあるなんて知らなかったです」



「お気に召したようで何よりです」



一礼する男性にシャルテは少し食い気味で質問をする。



「ねぇ!一体何処の領家の方?仮面を外してお顔をよく見せていただけませんか?」



「…申し訳ございません。これを外すことは仮面舞踏会の意味がなくなってしまうので」



「あ、そうだった…」


「フフフ…面白い淑女レディですね。貴女は笑っている方が素敵ですよ」



シャルテに触れそうな距離で詰め寄られて目を見開いてしまうシャルテ。



「それでは、私はこれで失礼します」



「あ、ま、待って!また会えますか?」



「…えぇ、また、いずれ。…代わりと言ってはなんですが…私の名はホーンズ・サヴィナ……それでは!」




サッと男性はその場から立ち去ってしまった。








パーティーは終了し、シャルテは自室に戻り今日あったことを思い出しながら眠りについた。



「ホーンズ・サヴィナ様…不思議な方……でもすごく楽しかったな…………」



憂鬱だったパーティは最高のパーティへとシャルテの中で変わっていった。









・・・・・・






ある晴れた日、大きな大樹の木下の木陰でシャルテは涼やかな微風が吹く中、シャルテは木に触れていた。

ここでは時折、昼寝をしたり悩んだりした時に来ることがあるのだ。

木に触れシャルテが10歳の頃を思い出す。



シャルテはこの大きな大樹によじ登って遊んでいた時、足を滑らせ真っ逆さまに木から落っこちてしまった。

そこへ落ちた瞬間、フワリと抱きかかえられた。

ルヴァンが助けてくれたのだ。




ドクン…




「………(そう、あの時から私は…ルヴァンに対する気持ちが変わった。

いつもどんな時にでも側に居てくれたルヴァンへの想いが日に日に積み重なっていくのを感じていた…。でも、私は…こんな身なりをしていて、お転婆で、まるでーーー“男みたいだな”

そう、男、みたいだ…。女ならもっと可憐で、しなやかで、柔らかい、もっと女らしい。もし、もっと女らしかったら、そしたら…!もしかしたら振り向いてくれるかも……!なんて…そんなわけないか…。

ダメだダメだ!グレイシス家を守るには私が…兄の代わりに果たさなければ…!

私は、気高く、誇り高きグレイシス家の跡取りとして生きねば…。

いつも守ってくれるルヴァンを守れるぐらい強くならなきゃ、いつまでも甘えてはいられない…次期当主として…)」



そんな決意を胸にぐっと手を握りしめる。




「シャルテ…」


「クラーン」



と、そこへシャルテに用があってグレイシス家に足を運んできたクラーンが現れる。



「此処にいたのか、懐かしいな、よくこの木の近くで遊んでいたな」



「え、ええ」



「シャルテ、俺はあれからずっと考えていた。シャルテのことをどう思っているのかと。

今ハッキリとした。この木を見て思い出したんだ。俺は恋というモノを知らないと言った。

だが、あれは嘘だ。俺は昔恋というモノをしていたんだ…」



「それは…」



「俺は昔からシャルテのことが気になっていた。シャルテと共にいることが楽しくて嬉しかった。あの時の気持ちと、今のこの気持ちが同じなんだ。これが恋というならば…俺は昔からずっと君に恋をしていたのだろう。…今でもお互いに離れた時間トキを過ごしていてもこの想いは変わらない」





サラサラと微風が吹く。




「え…」



「シャルテ、俺はシャルテが好きだ」



「ク、クラーン…」



クラーンの思わぬ告白に驚きを隠せないシャルテは動揺してしまう。



「いや、でも、私はこんな身なりで、中身もお転婆で女らしさなんてなくて…

そんな、クラーン様が思うような女ではありませんよ」



「男のようなシャルテも好きだ。俺はシャルテを愛している」



シャルテは開いた口が塞がらない状態で呆然と立ち尽くしていた。



「今日はそれを伝えに来たんだ。それじゃあな」



そう言ってクラーンは立ち去ってしまった。


一人残されたシャルテはハッとして我に返り今起きたことを頭の中で整理をしようとするが困惑してしまう。



「え、え?えええええええええ!!??ど、どうしたらいいの…?うそ、告白された…?」






つづく…

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