94話 シーファン3
何が起こった。
【フェニックス】のリーダー、ミュランはその光景を見て驚く。
【魚人族】の兵士は、プライドが高く、屈強で、かなり強いと言われている。
その兵士達が、【星空】のリーダーの前で、全員跪いていた。
百人以上の兵士全員がだ。
ヒューマンに跪く。
そんなのは聞いた事も、見た事もない。
信じられない光景だった。
「ちょっ、ちょっと!皆やめてよ!まぁ、カッコいいけどさ。・・・・・・んじゃ、俺達も!」
そう言うと、僕は片膝を付く。
それに合わせて他のメンバーも同じ様に片膝を付いた。
【魚人族】の兵士達と僕達が、顔を見合わせると全員笑う。
「ハッハッハッ!ソラ殿には敵いませんな!」
僕は立ち上がって、ここの責任者らしい兵士と握手する。
「ソラ殿。我々はずっと待っていたのですよ?貴方達が尋ねに来るのを。・・・・・・・噂は色々と聞いております。アーミット将軍やローレット隊長が喜ぶでしょう。そして特に・・・・・・・王女・・・・・・・いや、レミリア女王が。」
「えっ?女王?レミリアが王様になっちゃったの?」
驚いて兵士に聞くと、嬉しそうに答える。
「おっと!これは失言でした。後でゆっくり本人に聞いてください。とにかく、すぐに島へ案内しますので・・・・・・いいか!私はソラ殿達をご案内する。お前達は、ここで警備を続けるように!」
「ハッ!」
僕は横目で信じられない顔をしているミュラン達を見て、兵士に言う。
「あのさ。彼らだけど、ダンジョンだけは挑戦させてもらえないかな?」
「ソラ殿。・・・・・・・フッ。ソラ殿に頼まれて、断れる【魚人族】はいませんよ。・・・・・・・おい!そこの冒険者をダンジョンへ案内してやれ!」
そう言うと、兵士はミュラン達を見て言う。
「いいかお前達。ダンジョンだけだ。それ以外の立寄りは一切許さない。よく肝に銘じておけ。・・・・・・・連れて行け!」
【フェニックス】を取り囲むように、【魚人族】の兵士達は、先のトンネルへと入って行った。
ミュランが黙って、僕の方を睨みながら。
あれ?
良かれと思ってお願いしたけど、まずかったか?
「さて、ソラ殿。貴方達はこちらです。」
そう言うと、責任者らしい兵士は、僕達を連れて何もないドームの透明の壁に手をあてる。
すると、もう一つのトンネルが突然現れ、その先へと進む。
その突き当りには、大きな転移魔法陣が。
兵士が言う。
「ここは、我々兵士の移動手段。・・・・・・・先程のトンネルから進むと、かなりの距離と検問があり、とても時間がかかりますが、この魔法陣なら、すぐに我々の島へと着きます。・・・・・・・さっ。こちらへ。」
僕達は兵士と一緒に魔法陣の上に乗ると、フッと消えた。
☆☆☆
目の前の景色が変わる。
周りを見ると、どこか大きな教会の中の様だ。椅子が並べられていて、その先には女性の像が建てられている。
僕達は兵士の後に付いて行き、外へと出た。
「おぉ~。」
思わず声が出る。
丘の上に建てられているみたいで、教会から出ると、この島の全体が見渡せた。
美しい海に囲まれた緑豊かな島。
所々に真っ白いレンガ造りの家があって、道には【魚人】の人達が歩いている。
そして下った先には、密集した城下町があり、大きくはないが城があった。
見る限り、城を含む全ての建物が白い為、周りの緑と相まって、とても綺麗に見えた。
エイセイが言う。
「この島。思ったより大きいね。グアム位ありそうだ。・・・・・・・しかも、建物が白で統一されていて、センスがいいね。」
兵士が先頭で歩きながら、嬉しそうに答える。
「ソラ殿達が我々を開放してくれたおかげで、様々な国で隠れて住んでいた者達もここへと集まって来ました。今は約100万人がここで暮らしております。そして、この白で統一しているのは、我が女王が、ここからまた一からはじめる皆の意思として、何も染められていない白で造ろうという事になったんです。」
「へぇ~。そうなんだ。」
【魚人】の国を必ず復興させると言っていたレミリア。
たった二年近くでここまでするなんて・・・・・・・凄いな。
城下町に入ると、様々な店が建ち並び、道には多くの魚人達が行き交い、楽しそうに歩いている。
魚人、魚人、魚人。
他の種族は一人も見えない。
兵士さんが言うには、まだ国を造っている最中なので、他の種族は入れていないとの事。
だから僕達が目立つ目立つ。
「あっ!ソラだ!!!」
「ほんとだ!ソラだ!他の兄ちゃん、姉ちゃんも!!!」
駆け寄って、僕達の足に抱きつく【魚人】の子供達。
どこかの国の【深層】(監獄島)で逃がした【魚人】の子供達だった。
「お~。お~。お前達!元気そうじゃん!良かった。良かった。」
子供の頭を撫でていると、周りがざわつき始める。
「えっ?ソラ様?」
「あっ!ソラ様とお仲間様だぞ!」
「本当に?!」
「キャー!!!ソラ様だー!!!」
「【解放者】様だ!!!」
気づくと超有名人みたいに、一斉に囲まれた。
「・・・・・・・やべぇ。マジやべぇ。」
「俺もきつかったぞ!ハッハッハ!」
「僕はよく囲まれるけど、これは異常だね。」
「全然進めなかったわね。」
「・・・・・・・【魚人】の子供。可愛かった。」
「はぁ。ソラに言われて結界に穴をあけたせいで、ここまで感謝されるとはね。」
城の城門内に入って一息ついている僕達。
もうね。全然進めなかった。
一気に【魚人】の人達が集まってきて、道にはもの凄い人だかり。
何かの優勝パレードより凄い事になった。
歓迎してくれるのは嬉しいけど、そこまでした覚えがないから、何か申し訳ないような気もする。だって僕は【深層】に行った時に、魚人達を見かけたら、スピカに言って結界に穴を空けさせた位だ。
「ソラ様!!!」
「ソラ殿!!!」
懐かしい声が聞こえる。
見ると、青い肌に薄緑色の髪をした、可愛らしい少女がこちらへと駆けてくる。
その後ろに鎧を着た男達二人を従えて。
レミリアだった。
レミリアは息を切らせて僕の前まで来ると、両手を握る。
「ソラ様!ずっと・・・・・・・ずっと、お待ちしておりました。」
「ハハッ!絶対に行くって約束したっしょ。本当だったら、この世界に来て最初に行く予定だったんだけど、ちょっと用事が出来ちゃってね。」
「【星空】の話は、『ファイン帝国』から一番遠いこの島まで届いている。」
「まったくよ!大したもんだ!」
後ろにいるアーミット将軍とローレット隊長が嬉しそうに言う。
「ソラ様・・・・・・・相変わらずですね。そういった所が本当に好・・・・・・・・。」
「ん?どったのレミリア?顔を赤くして。」
何故か女性陣の三人がムッとしている。
「なっ、何でもありません!・・・・・・・さぁ!今日は出来るだけ歓迎させてください!あと・・・・・・・変わらずカメラを持ち歩いているのですね。えっと皆様。・・・・・・・お久しぶりです!」
満面の笑顔で挨拶するレミリア。
薄緑色の綺麗な髪が揺れている。
<コメント>
■レミリアちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
■レミリアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■久しぶりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■やっぱ可愛い!!!
■何この笑顔!!!
■ホント付き合いたい!!!
■レミリアちゃん!こっちに来て!いや、俺が行く!!!
■愛に異世界は関係ないです!!!
■相変わらず可愛いでごわす!!!でもソラ先輩は渡さないでごわす!!!
ナイス!レミリア。
めっちゃ盛り上がっている。
その日の夜は、城で盛大なパーティがひらかれた。
☆☆☆
「こちらはですね。商店街になっています。・・・・・・・あっ、あとこの先は今はまだ建設中ですが、民を癒せる為に温泉街をつくろうかと思っています。」
次の日。
レミリアが僕を連れてこの島を案内していた。
後ろにはエイセイとスピカが護衛代わりに付いてきている。
他の親友達?
アカリはアーミット将軍に誘われて、クウガはローレット隊長に誘われて、模擬試合をしている。
そしてココセはアーミット将軍に頼まれて、兵士の訓練のアドバイスに行っている。
なので今は、レミリアを入れた四人だけだ。
いつもレミリアの周りには、十人以上の護衛が付くらしいが、アーミット将軍曰く、最強の【星空】メンバーの二人がいれば問題ないとの事。
何か、『アルフリーン』でも王女に観光案内させている僕。
いいのか?
そんな事を考えながら、僕達は城下町を抜け、丘の上の教会へと歩いている。
登りながら、所々にある白い家の庭から【魚人】が笑顔で挨拶をする。
子供達は、うれしそうにレミリアや僕達に近寄って来ては挨拶をして、笑顔で手を振って別れる。
途中、売店でおすすめの魚の塩焼きを食べながら、僕は思い出した様に聞く。
「そういえばレミリア。女王になったんだって?」
「あっ。聞いたのですか?・・・・・・・はい。将軍が民をまとめるなら、早く女王になった方がいいと言われまして。」
「そっか。おめでとう。」
丘の上の教会まで着くと、周りを見渡す。
あらためて見ると、本当に大きな島だ。
潮風がとても気持ちがいい。
景色を眺めながら、隣にいるレミリアが話始める。
「・・・・・・・10年以上前。『ファイン帝国』の更に西に私達の国がありました。でも、侵略されて、戦争で敗れて・・・・・・・父も母も、兄も殺されました。生き残った私や兵士達、そして民達は『監獄島』へ連行されて・・・・・・・うまく逃げのびた者達は、他の国に隠れて住んでいました。・・・・・・・でも、ソラ様達と出会って、助けてくれて。・・・・・・・あの後、唯一の友好国だった『シーファン』へと向かいました。王と面会して、同情して頂いたのか、この島を無償で譲渡してくれて。・・・・・・・暫くしたら、この島に他の『監獄島』から来た大勢の兵士や民が集まって来ました。そしてそれを聞きつけて、隠れて他の国に住んでいた民達も。・・・・・・・それで気持ちが固まりました。『ファイン帝国』を恨む事はもうやめようと。民の幸せだけを想って女王になろうって。」
「・・・・・・・強いな。レミリアは。」
僕が言うと、レミリアは顔を横に振って続ける。
「こんな気持ちにさせてくれたのは、ソラ様のおかげです。全ての『監獄島』に囚われていた同胞を助けてくれたから・・・・・・・そして、帰って来た兵士や民が皆、貴方達を敬っておりました。・・・・・・・ここでちゃんとお礼を言わせてください。・・・・・・ソラ様。ありがとうございました。」
レミリアは深々と頭を下げる。
「ハハッ。僕は何もしてないよ。結界の穴を空けたのはスピカだしね。」
レミリアはスピカに向かってもう一度言う。
「スピカ様。ありがとうございました。」
「なっ!フッ・・・・・・・フンッ!ソラがやれって言ったからやったまでよ!大した事じゃないわ!」
真っ赤になって答えるスピカ。
レミリアは顔をあげると、僕を見ていたずらっぽい顔をする。
「フフッ。でも、兵士や民達から、ソラ様が何て呼ばれているか知っていますか?【解放者】って呼ばれていますよ。」
「なにいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ???」
僕が素っ頓狂な声を上げると、楽しそうにエイセイとスピカが両肩に手を置いて言う。
「よっ。【解放者】!」
「【解放者】さん♪次いでとか言って、何でも首ツッコむからこうなるのよ。」
マジか。
ちょっと凹んでいると、レミリアは教会へと入って行く。
僕達もついて行くと、レミリアは美しい女性の像に膝を付き、祈りを捧げている。
喉が渇いた僕は、水筒を取り出して飲みながら待っていると、祈りが終わったのか、立ち上がる。
「いつもお祈りしているの?」
「はい。【魚人族】は必ず毎日一回はお祈りをしております。・・・・・・・水を司る我が神・・・・・・・【ディーレ】様を。」
「ブホッ!!!」
「きたね!」
「何やってんのよ!もう!」
僕は、派手に飲んでた水を噴き出した。
何か『幽霊さん』の中の一人と同じ名前だ。
うん。
僕はスルーした。




