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89話 アルフリーン10


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」



僕はため息をつく。



ここは王都『アルフ』の王城。


【神樹】が破壊され、新しい【大神樹】を【グリーン】に創ってもらってから一週間がたった。


外は、今も賑やかな声が聞こえてくる。



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」



もう一度僕は王城の屋上で、王都の街並みを眺めながら大きなため息をつく。



もうね。



外はあれからずっとお祭り騒ぎだ。


テルミが帰って来た時もその反応が凄かったが、それがかすむ程だ。



だって、今もずっと続いているのだ。


そのおかげで、僕達は外に出歩く事がまったく出来ない。




一度、知らずに普通に外に出た時には・・・・・・・いゃ~。




何なん、これ。




もうね。




どこかのスーパースターが日本にやってくるレベルじゃないのよ。




凄まじいのなんの。




僕達が街中を歩き始めた瞬間に、あっという間に近くにいるエルフ達に取り囲まれる。


ある人は歓声をあげて喜び、ある人は泣いて感謝し、ある人はずっとお礼を言い、しまいにはひれ伏してお祈りをしている人もいた。


気づくと、数十人が数百人、数千人に膨れ上がって、騎士さん達が来て大変だったのだ。


何とか冒険者ギルドに行っても、エルフの受付嬢に泣いて感謝されてクエストどころじゃないし、その場にいたエルフの冒険者に抱きつかれて、女性陣達がぶちキレて大変だったし、何もいい事がなかった。


結局、『三大老』には当分この状態が続くから出歩かない方がいいと言われる始末。


そんなこんなで、ずっと王城で暇を持て余していたのだ。



・・・・・・・でも。



そろそろいいかなと思っている。



僕は、屋上から周りを見渡す。



緑豊かな美しい光景。


隣には、空に浮かぶ雲より高くそびえ立つ【大神樹】。



振り返ると、後ろにはいつもの親友達が笑顔で立っている。




「おっ?その顔は!」


「そろそろかと思ったんだよね。」


「ソラがゲーム以外で同じ場所に留まる事はないものね。」


「・・・・・・・動くと思った。」


「まぁ。私達はいつでもいいわよ?ソラがリーダーなんだから。」



親友達も分かっているな。


そろそろ僕が言い出すと思ってスタンバっていたみたいだ。



僕は親友達に言う。


「よっし!・・・・・・・テルミを故郷に帰す事が出来たし、そろそろ次の探索に・・・・・・・。」


「ソラ様!!!」



話を遮る様に、テルミがこちらへとやってくる。


その後ろには、レイン王や王妃、ジェイクス将軍や三大老が。そしてローワンさんとリュカやニナが続く。



「あれ。テルミや皆さん・・・・・・・どったの?」


「・・・・・・・行くのですか?」



僕の前まで来ると、テルミは寂しそうな顔をして言う。



「ハハッ!そうだね。僕達は異世界に来て、まず最初の目的がテルミを故郷へ帰す事だったからね。それが達成できたから、当初の目的に戻るだけさ!」


「当初の目的って?」



僕は親友達と横並びをすると、肩を組んで笑顔で言う。


「当然!異世界の探索さ!!!僕達や・・・・・・・『空ちゃんねる』の視聴者がまだ見た事のないこの世界を探索しないとね!!!」




<コメント>


■ナイス!!!


■よく言った!!!


■ソラ!偉い!!!


■ソラ!もうお前は立派なクリエイターだ!!!


■何かカッコいい事言ってないか?w


■テルミちゃんが観れなくなるのは寂しいけどな。


■テルミちゃん。おじちゃんが後で絶対に会いに行くからね!



視聴者さんも同意見のようだ。



僕はテルミの後ろにいるレイン王達に聞く。


「すみません。どなたか魚人族がどこにいるのか知りませんか?」



三大老の一人、外交を担当しているオークスが答える。


「魚人族?・・・・・・・魚人族は確か、東南の国『シーファン』が所有していた島を魚人族に譲渡したと聞いていますぞ。」


「東南の国・・・・・・・『シーファン』ですね。ありがとです!」



すると、ジェイクス将軍が前に出て言う。足元にはリュカやニナがくっついている。


「ソラ様。父上から・・・・・・ローワンから聞きました。リュカやニナの願いを・・・・・・・母上の心残りを解消してくれて、ありがとうございました。」



ジェイクスは深々と頭を下げる。


「ちょっ。ジェイクスさん!頭を上げてくださいよ!僕達は、リュカとニナに冒険者として依頼を受けただけですから。後、マジでその『様』はやめてください。呼び捨てかせめて今まで通りでお願いします。」



・・・・・・・あれから、何故か全員僕の呼び名をソラ殿からソラ様に変わっているのだ。ホント、マジでやめてほしい。



「ねぇ。ソラ兄ちゃん。行っちゃうの?」


「ニナ。もっとお話ししたかったな。」



寂しそうにしている二人の頭を笑顔で撫でる。



『それでは、私が送って行こう。』



空から突然現れたハクが、僕の元へと降り立つ。



「えっ?いいの?」


『・・・・・・・もう主はこの国にいるから問題ない。そなた達には返しきれない程の恩がある。せめて次の目的地位は送らせてくれ。』


「ラッキー!んじゃ、よろしく!」




私は皆様へと近づく。




「テルミ!元気でな!!!」



クウガ様。



異界の時から、いつもその大きな背中で守ってくれる頼りになるお兄ちゃん。




「テルミ。体には気を付けるんだよ。」



エイセイ様。



いつも気遣ってくれて、何でも相談に乗ってくれる優しいお兄ちゃん。




「テルミ。困ったことがあったらいつでも呼ぶんだぞ。」



アカリ様。



皆様の中で一番気高く、そして頼もしいお姉ちゃん。




「テルミ~♪ また遊ぼうね~♪」



ココセ様。



いつも同じ目線で、友達の様に話してくれるお姉ちゃん。




「テルミ。もう一生会えないわけじゃないから。また来るわね。」



スピカ様。



何でも気にかけてくれて、色々と面倒を見てくれた。もし姉がいたとしたら、きっとこんな感じなんだろう。




・・・・・・・そして・・・・・・・・・。




私は貴方を見る。



貴方はそれに気づくと、笑顔で屈んで私の頭を優しく撫でる。



チュッ。



私は屈んだ貴方の頬にキスをした。



少し驚いた貴方は、笑顔で言う。


「ハハッ!テルミから最高のプレゼントを貰っちゃったな!ありがとな!!!・・・・・・・それじゃ、皆さん!テルミ!・・・・・・・アディオス!!!」


「「「「「 アディオス!!!・・・・・・・ってソラ!通じないだろ!ハハハハハハハッ!!! 」」」」」



ソラ様と皆様は、ハクに乗って手を振りながら、真っ青な空へと飛んで行った。



見送りながら、レイン王が叫ぶ。


「よいか・・・・・・・今後、もしソラ様達に何かがあって、我々に求める事があったら、この『アルフリーン』国は全力で・・・・・・・我が騎士大隊25万を全て使ってでも助力をするぞ!!!皆の者!!!ソラ様に・・・・・・・敬礼!!!!!!」



王城の屋上にいる全ての者が、飛んでいるソラ達に向かって敬礼した。




「テルミ。本当に良かったの?」


サロン王妃が言う。



「うん。」



そこにいたのは、綺麗な金色の髪。宝石の様なエメラルドグリーンの瞳。そして見惚れる程の美しさ。二十歳前後の成人の女性が立っていた。



・・・・・・・これが私の本当の姿。国外に出る時だけ、子供になって姿を偽っていた。



「子供の姿で出会ったから、このままでいいの。」



もし私が元の姿になって皆様の前に出たら、きっとアカリ様、ココセ様、スピカ様が複雑な気持ちになるだろう。・・・・・・・だから、今回は我慢した。



テルミは消えゆくソラ達を乗せたハクを見ながら呟く。



「でも、次に会った時はきっと・・・・・・・。」




見送るテルミを王妃は見て微笑む。






その顔は、一人の恋する乙女の顔だった。






☆☆☆






「ん?・・・・・・・ハク!ちょっとストップ!」



あっという間に『アルフリーン』国を出た僕達は、誰も統治していない無法地帯に入っていた。



気持ちのいい風に当たりながら、景色を見ていると、地上で知っている人を見かけたのだ。



すぐにハクに言って、地上へとおりる。



「えっ!貴方は・・・・・・・ソラ???」


「おいっす!こんな所でどったの?」



そこにいたのはダークエルフのシエナだった。



聞くと、『魔国』から神樹の破壊の命令を受けた動ける者は、『アルフリーン』へと死にに行くので、せめて残りの女子供、老人達は種を滅ぼさない為にも、『魔国』から一緒に出て、この無法地帯へと置いてきたとの事だった。



僕達はシエナに話を聞きながら、その場所へと向かった。



着いた僕は言葉を失う。



そこにあったのは、木で何とか雨風をしのげる位の即席の屋根があり、簡単な布が地面に敷いてあるだけの家とは呼べない物だった。子供達が外で遊んでいる。体はやせ細っていて、明らかに栄養が行き届いていない。老人達もそうだ。そしてよく見ると、戦っていたシエナ達も全体的に痩せていた。



シエナは言う。


「我々は『魔国』に住処を与えてもらった。その恩を返す為に、何かの戦いには常に先頭に立って戦ってきた。昔は数百万人はいたとおじいちゃんが言っていたけどな。今はご覧の通り、二千人程だ。」


「・・・・・・・そっか。」



シエナ達が女、子供や老人達よりも痩せていないのは、戦えるギリギリの栄養を余分にとっていたからだった。


シエナにとっては苦渋の決断だったという。



僕は黙って、ポケットにある携帯電話を取り出して電話をかける。


「・・・・・・・・・あっ、スズさん?『空ちゃんねる』観てくれてる?・・・・・・・うん・・・・・・そう。カレーを作りたいから・・・・・うん。材料を四千人分多めで・・・・・・あと、一週間はもつ位の物を・・・・・・うん。至急よろしく。」



僕は電話を切ると、シエナに言う。


「ねぇシエナ。僕達すげ~今腹減ってんのよ!だからさ、ここでちょっと料理を作ろうと思ってるんだけどいい?」


「えっ?あっ、ああ。別にいいが・・・・・・我々も手伝おうか?」



「あぁ!よろしく頼むよ!折角だから皆の分も作ろうと思っていたからさ!」


「本当か?!それは助かる!・・・・・・リュー!料理が出来る者をここへ呼んでくれ!」






数時間後。



「エイセイ。よろしく。」


「あぁ。」



エイセイが何かを呟くと、目の前に大量の食材と、機材が現れた。



一個一個マーキングして呼び出すのは面倒だからと、エイセイはこの一年の間に、【星空】オフィスの倉庫自体をマーキング出来る様になったのだ。


だから、倉庫内の生き物以外の物は全て転移できるのである。



僕の前に親友達が横一列にならぶ。


その後ろに手伝いにやって来た、やせ細ったダークエルフの男女が。そしてシエナもいる。



「いょぉぉぉぉぉぉぉし!それでは~!いってみますか~!久しぶりの~!【星空クッキング】~!!!ドンドンドン!!!パフパフパフ~!!!」


「「「「「 イエーイ♪♪♪ 」」」」」


「「「「「「「 いっ、いえ~い・・・・・。 」」」」」」」



久しぶりの音頭に、嬉しそうに答える親友達。


それにつられて、恥ずかしながら合わせるシエナ達。




それからは戦場だった。


ココセが監修の元、おかわり出来る様に倍の四千人分のご飯を炊き、並べた大鍋に栄養をいっぱい取ってもらう為に牛肉と野菜を沢山入れ、隠し味にトマトやバターを加えてカレーを作る。辺り一面、カレーのいい香りが漂っている。


その匂いに誘われて、お腹を空かせた子供達や老人達が料理を作っている仲間や僕達に集まってくる。



気づくと空はすっかり夜になっていた。



スピカがここにいるダークエルフ達の空間だけに結界を張り、エイセイが魔法で光を灯す。



「・・・・・・・よっし!出来たぞ!!・・・・・・・名付けて、ココセ監修幸せカレーだぁ~!!!皆!いっぱいあるから、遠慮しないでどんどん食べてちょ!・・・・・・・それでは・・・・・・・いたまんご~!!!」


「「「「「 いたまんご~♪♪♪ 」」」」」


「「「「「「「 いっ、いたまんご~・・・・・。 」」」」」」」



楽しそうに合わせる親友達。


それにつられて、めっちゃ恥ずかしながら続けるシエナ達。



子供達を優先に、数列に並んだダークエルフ達に幸せカレーをどんどんと盛り、渡す。



「えっ?何これ・・・・・・・凄く美味しい!」


「お母さん!こんな美味しいご飯、初めてだよ!」


「とても食欲をそそる匂いじゃのぉ~。・・・・・・・おぉ、美味しくて止まらん。」


「うっ、旨すぎる!」



カレーをもらった人達は、ちょっと離れた所の地面に座って、感想を言いながら黙々と食べている。



よし。


カレーが好評で良かった。



僕は皆に聞こえる様に叫ぶ。


「まだまだいっぱいあるから~!おかわりしたい人は、また並んでね~!」



「本当か?!それじゃ、おかわり貰おう!」


「僕もおかわり~!」


「私も~!」


「ワシもじゃ!」



嬉しそうに食べるダークエルフ達。



その様子を見ながら、少し目に涙をためてシエナが言う。


「ソラ。・・・・・・・ありがとう。皆のあの様な笑顔・・・・・・・久しぶりに見た。」



僕は、皿にたっぷりに幸せカレーを盛ると、隣にいるシエナに笑顔で渡す。


「みんな気に入ってくれて良かったよ。・・・・・・・子供達には、ちゃんと食べて元気に育ってほしいよね。」


「・・・・・・・あぁ。」




倍の四千人分作ったカレーは、綺麗になくなった。




その様子を見ていた僕は、あまりにもバタバタしていて、全然見れなかったカメラを見る。




<コメント>


■美味しそうに食べてる。良かったわぁ~。


■カレーは結構スパイスあるからな!こっちの世界でもウケて良かった!


■良かった。本当に良かった。


■ダークエルフの人達、あんなに痩せてて・・・・・・・ソラ!お前マジで最高!!!


■やばい。また涙出てきそう。


■何なん。お前本当に。


■カッコ良すぎだろ。


■繰り返すけど、お前は主人公か!


■繰り返すけど、普通の顔なのに、たまにカッコよく見えるのは何故なんだろうw


■繰り返すけど、たまに付き合ってもいいかなって思っちゃう。普通の顔だけどw


■繰り返すけど!私にはエイセイがいるの!お願いだから惑わせないで!!!



あれ?


またディスられてないか?


一人でカメラにツッコミを入れた。






翌朝。



「シエナ!・・・・・・・それじゃ、僕達は行くね。あっ、そうそう!一週間分位の食糧は置いといたから。『カップヌードル』って言うんだけど、お湯を入れて少し待てば食べられるからね!」



シエナは答える。


「ソラ。あれから昨日の夜、皆と話し合った。今後どうするか。あんな美味しい物を食べて、皆の幸せな顔を見たら、やはりこのままではいけないと思ってね。・・・・・・・私達は故郷・・・・・・・『アルフリーン』へ行こうと思う。」


「そっか。レイン王はいい人だし・・・・・・・・何かあったらテルミを頼りなよ。テルミなら絶対に悪い様な事はしないからさ!それでも、何か困った事があったら僕達を頼ってちょ。」



そう言うと、連絡が取れる様に、テルミにも渡した携帯電話を渡す。


気づくと、シエナの後ろには、リュー隊長を含む、全てのダークエルフが立っていた。




シエナは叫ぶ。


「・・・・・・・皆の者!・・・・・・・ソラ達に敬礼!!!!!」




一斉に二千人のダークエルフが片膝を付いて両手をそれぞれの膝に置く。




「ソラ・・・・・・・我が神を呼べる者よ。王都でも言ったが、何かあった時は、必ず我々を呼んで欲しい。この二千人の命・・・・・・・ソラにいつでも捧げる事をここに誓う。」


「「「「「「「 誓う!!!!! 」」」」」」」


「だから!そんな重たいのいいから!!!」



同じツッコミをいれた。





ハクに乗ったソラ達は、手を振りながら真っ青な空へと駆けていく。


シエナ達は見えなくなるまで、全員敬礼しながら微動だにしなかった。


そして完全に見えなくなると、シエナが立ち上がり、それに合わせる様に全員が立つ。



シエナは振り向き、今まで見せた事のなかった笑顔で叫ぶ。



「さぁ、みんな!・・・・・・・帰ろう!・・・・・・・『アルフリーン』へ!!!」






数日後。



ダークエルフが『アルフリーン』国へと約千年ぶりに戻った。



レイン王は新たに街をつくり、ダークエルフの住居を提供する。



数年後、その街はダークエルフだけでなく、エルフや他の種族も住むようになり、第二の都市『リレイン』に負けず劣らず大きな都市となる。



そして大きくなったその都市を、レイン王は第三の都市として、新たに命名する。




自由と平等の都市。




『スカイ(ソラ)』と。





異人の冒険者パーティ【星空】。



この『アルフリーン』国の出来事によって、世界中が【星空】を認識する。



そして、そのリーダー。



ソラ。



『アルフリーン』が信仰する、司る者【グリーン】を召喚した者。



彼の名前は、全ての国の主要人物達の頭に刻み込まれた。



そして『アルフリーン』国では、エルフ、ダークエルフ、全ての民が彼を敬い・・・・・・・そして言う。




 




英雄。








ソラと。





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