表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/133

87話 アルフリーン8


「・・・・・・・何だこれは。」



数千匹のキングバードに乗って到着した先行隊三千人は、その光景を見て絶句していた。


第二の都市『リレイン』から、10キロ程国境へと向かった広い草原。




魔物。魔物。魔物。・・・・・・・モンスター。




そこには、おびただしい程の魔物の死体が転がっていた。



茫然と立ち尽くしていた先行隊は、先に国境にある砦を確認しに行っていた数人の兵士達が戻って報告をする。



「隊長!国境の砦ですが、魔物達は無視して素通りしたそうで、全員無事です!後、国境から数キロ離れた所に巨大な転移魔法陣を発見しましたが、既に破壊されてました!」


「了解した。」



報告を受けた隊長は、もう一度目の前の光景を見る。


「・・・・・・・一番最初に破壊された【神樹】・・・・・・・結界が消失されて、魔物の来襲を止める為に、一つの冒険者パーティが向かったと聞いた。・・・・・・・『リレイン』に強力な結界を張り、増援させない様に転移魔法陣を破壊し、最後は魔物の大群を殲滅するか・・・・・・・【異人】のパーティ【星空】。」



隊長は振り返り皆に指示を出す。



「よし!まずは魔物の残党がいないか確認した後、『リレイン』に戻って遅れてくる大隊と合流したら、国境に行って警備をするぞ!」


「「「「 ハッ!!! 」」」」



先行隊の兵士達は、安堵の顔をしながら敬礼した。






☆☆☆






「将軍。ほぼ全てのダークエルフを捕らえました。」


「そうか。捕らえた者達は一ヶ所に集めておけ。それと、まだ油断するな。リーダー格の者がまだ見つかっていない。周りに目を張り巡らせ、虫一匹見逃すな。」


「ハッ!」



王都『アルフ』にある【神樹】を、王城の屋上でテルミ王女と一緒に見ているジェイクス将軍は、逐次報告に来る隊長達に指示を出していた。



「ダークエルフの秘技か・・・・・・・。」


ジェイクス将軍は呟く。



十万の騎士大隊。


王都を取り囲むようにして、九万の騎士達が守っている。


そして一万の騎士が【神樹】を。



しかし、その厳重な防衛をかいくぐり、あざ笑うかのように侵入してきた。




ダークエルフの秘技【闇走り】。


隠密移動の最高峰技術。




ジェイクスは、隣にいるテルミ王女を見る。


「どうですか?テルミ王女。」



テルミは王都全体を見渡しながら答える。


「・・・・・・・そうですね。もうこの王都には、捕らえたダークエルフ以外はいませんね。」


「そうですか。」



テルミ王女が持っている【真実の目】。



全てを見抜くその目には、【闇走り】や変装魔法でも欺くことは出来ない。



おそらくダークエルフは、テルミ王女が帰国するのを知っていて、すぐに行動を起こしたのだろう。


【真実の目】で見破られる前に。



「それでは、私は捕らえたダークエルフの元へ向かいます。」


「あっ。待ってください。私も行きます!」



そう言うと、ジェイクス将軍の後にテルミは付いて行った。






「・・・・・・・この者達か。」


「ハッ!」



【神樹】と王城の間にあるとても大きな広場。


いつもは憩いの場として露店が建ち並んでいるが、今は大勢の騎士と、その中央に200名程のダークエルフが捕らえられていた。



全員後ろに腕をまわされ、両膝を地面に付いている。


ほぼ全員が負傷していた。


ある者は頭や腹から血を流し、ある者は腕を斬られて失っていた。



その先頭のダークエルフにジェイクスは近づくと言う。


「貴様がダークエルフの隊長だな?報告によると、この計画で動いていたダークエルフは約1,000名。800名は全て倒した。後はお前達だけだが・・・・・・・あと一人足りない。・・・・・・・お前達の長はどこにいる?」



先頭の男、隊長のリューは笑みを浮かべると答える。


「フン・・・・・・・答えるとでも?我々は死を覚悟してここに来ている。貴様達はいつも・・・・・・・いつでも我々を見下す。我々の数千年の恨み・・・・・・・ここで味わえ!!!!!」




ゴーン・・・・・・・ゴーン・・・・・・・ゴーン・・・・・・・。




昼の音鐘が鳴る。



ジェイクスの後ろにいたテルミは、違和感を覚え【神樹】を見た。




・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・!!!!!




「ジェイクス将軍!!!」



テルミが叫ぶ。



「【神樹】に・・・・・・・ダークエルフが!!!」


「なにっ?!!!」



全員【神樹】の方を見ると、根元に一人の女性が立っていた。



銀色の髪。深紅の目をして肌が黒い。



ダークエルフの長。



シエナだった。



「捕らえろ!!!!!」



ジェイクスが叫び、近くで【神樹】を守っている騎士達が駆ける。


シエナは、駆けてくる騎士達を無視して【神樹】に魔道具を取り付けると振り返る。



「・・・・・・・これで我々の全ての計画が完了した。・・・・・・・最後の王都『アルフ』の侵入。【真実の目】で防がれるのは分かっていたわ。でもそれはおとり。私だけ【真実の目】が届かない王都の外で鐘が鳴るのを待っていた。・・・・・・・既に隠して設置してあった一人分の転移魔法陣を使うのをね。もし、王女様が【神樹】の元まで行って調べられたら気づかれたけど・・・・・・・我々の侵入を見破るのに、いっぱいいっぱいだったでしょう?」



シエナは、真っ青な空を見上げると小さく呟いた。



「・・・・・・・ごめん。おじいちゃん。」



右手に持つ鍵を、魔道具にさした。




ズンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!




鈍い音が鳴り、地面が揺れる。


【神樹】の中心が内側から徐々に赤くなっていった。


そして最後は真っ赤になり、その場所から上が徐々に崩れていく。


美しく緑色に光っていた巨木の色は消え失せ、大きな枝が、緑の葉が崩れる様に落ちていく。・・・・・・・そして、最後は赤く染まった所から折れる様に【神樹】が倒れた。



「あっ・・・・・・・あぁ!!!」


その光景を見ながら、テルミは両手を口で覆う。



「テルミ?」


後ろから聞きなれた声が聞こえて振り返ると、ソラ様が親友達と一緒に立っていた。



「ソラ様!皆様!・・・・・・・【神樹】が!・・・・・・・【神樹】が!!!」



私はソラ様の胸に飛び込んで叫んだ。


そんな私を貴方は優しく抱きしめる。



「将軍!捕らえました!!」



倒れた【神樹】の方から、両手を後ろに縛られながら、数人の騎士達に連れられてくる一人の女性。


ダークエルフが捕らえられている、大きな広間の先頭に跪かせる。


そこには、騎士の隊長、騎士の精鋭達が周りを取り囲み、その中心にいるジェイクス将軍が、そして王を入れたこの国の主要人物達が全て揃っていた。



見下ろしながらジェイクスは言う。


「貴様がダークエルフの長だな。・・・・・・・名は?」


「・・・・・・・シエナ。」



シエナが答えると、横から『三大老』の一人、オークスが怒鳴る。


「貴様っ!【神樹】を全て破壊するなど正気か?・・・・・・・何て、何て事をしてくれたのだ!!!」



シエナはオークスを冷たい目で睨みながら答える。


「・・・・・・・お前達はどうなんだ?・・・・・・・千年前、一緒にこの国に住んでいた祖父や祖母・・・・・・・ダークエルフを自分達エルフと違うからと言うだけで、迫害して奴隷以下の生活を送らせ、そして最後は追放した。同じ様にこの国を愛していたダークエルフをだ。その気持ちが・・・・・・・その気持ちがお前達に分かるかっっっっっっっ!!!!!」




ピクッ。




貴方の胸に顔をうずめていた私は顔を上げる。


貴方の雰囲気が変わったから。


その後ろにいる皆様も、その雰囲気につられる様に顔が険しくなっていく。



オークスが返す。


「うるさい!!!【神樹】を失った事で、この国がどうなるのか貴様は分かっているのか?数ヶ月後には木も、草も、水も枯れ・・・・・・・荒廃した大地になってしまうのだぞ!そうなってしまったら、この『アルフリーン』にいる一億人以上の民全てが生活を追われるのだ!」


「昔・・・・・・・数百万人いたダークエルフを、飢えと強制労働で殺したその口がよく言う。」


「貴様!!!」



シエナに食ってかかろうとしたオークスを片手で阻むと、ジェイクスが言う。


「今生きる我々にとっては、貴様が言った事は初耳だ。・・・・・・・おそらく年長者か、ここにいる『三大老』なら真実を知っているのだろう。だが、貴様達が犯した罪は関係ない。この国を滅ぼした罪・・・・・・・当然極刑だが、お前達だけでは足らぬ。おそらく戦えない老人や女子供は別の国にかくまっているのだろう。すぐに調べ上げて・・・・・・・必ず殺す。一人残らずな。」



シエナはその言葉を聞き驚く。


「まっ、待ってくれ!『魔国』から受けたこの計画を、実行したのは私達だ!他の者達は関係ない!私達はどうなってもいい。それだけは・・・・・・・それだけはやめてくれ!!!」


「そんな事がまかり通ると思うのか?」


「そっ、そんな!!!・・・・・・・うっ。ううう・・・・・・・。」


「シエナ様!!!」



シエナは、絶望の顔を地面に付けてうめき声をあげる。


隣にいるリュー隊長が、憎悪の目でジェイクスを睨む。



絶望の顔をしている200名程のダークエルフを見渡しながら、オークスが言う。


「ジェイクス将軍の言う通りだ!貴様達ダークエルフは、ここで全て亡き者にしてくれる!!!」






「おい。」






貴方は小さい声で言う。




「・・・・・・・それでも、これからの我が民の事を思うと断腸の思いだがな!!!」






「オイッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」






綺麗で透き通る声が、広場一帯に響き渡る。



全員がその声を聞き、一斉に貴方の方へと向く。


貴方は黙って片手を軽く上げると呟く。



「エイセイ。」



後ろにいるエイセイ様が両手を天へと掲げる。



「・・・・・・・エリアヒール。」



すると、広間一帯が緑色に包まれた。



「なっ、これは!」


「おぉ!」



騎士達から声が上がる。


戦闘で負傷した騎士達の傷が、みるみるうちに治っていくのだ。


深い傷や、斬られた腕なども元通りに戻っていく。・・・・・・・瀕死の状態だったダークエルフ達も同様に。



シエナは、後ろで息も絶え絶えだった仲間達の回復を見て、初めて貴方を見る。



「ソラ殿。我々騎士達の傷・・・・・・・ありがとうございます。しかし、ダークエルフ達を治すのは・・・・・・・。」


ジェイクスがお礼を言いかけると、貴方は叫んだ。






「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!・・・・・・・奴隷以下の生活?・・・・・・・何で迫害したんだ?・・・・・・・なぁ?・・・・・・・・ダークエルフだからか?・・・・・・・皆と違うから?・・・・・・・目が赤いから?・・・・・・・髪が銀色だから?・・・・・・・肌が黒いから???」



それを黙って聞いている、王や王妃、そして三大老達。



「・・・・・・・ふざけんな!!!!!姿形なんて関係ないだろ!!!元は同じこの国で育ったんだろ!!!数の暴力で納得するんじゃねぇよ!!!自分達が逆の立場だったらどうなんだよ!!!・・・・・・・なぁ!!!!!!!」






-------------------数百年前-----------------------



『魔国』の外れにある小さな寂れた村。



そこで一緒に住んでいた、大好きなおじいちゃんに私は聞く。


「ねぇ、おじいちゃん!私達の国ってどんな所なの?」



おじいちゃんは、優しい顔で私の頭を撫でる。



「そうじゃな。この世界で一番、緑と水が豊富で、とても・・・・・・・とても綺麗で素晴らしい国じゃよ。」


「へぇ~。そうなんだ~♪ 私もいつか行ってみたいな~♪」


「いつか・・・・・・・いつか行けるといいのぉ。」



寂しそうな顔をして私に答えるおじいちゃん。



----------------------------------------------






ソラを見て、シエナは叫ぶ。



「私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!・・・・・・・私は・・・・・・・帰りたかった。・・・・・・・帰りたかったんだ。」



大粒の涙をシエナは流す。



ソラの近くにいたテルミは、前に出ると皆に言う。


「・・・・・・私は『ファイン帝国』で奴隷でした。故郷に帰れない。それはどんなに寂しく、辛く、そして死にたかったか。・・・・・・・ダークエルフは、ただ『魔国』へ移り住んだとしか学んでおりません。もし、彼女達の言っている事が本当なら、同じエルフなのに、肌の色や格好が違うだけで迫害した事になります。・・・・・・・それでは、ヒューマン第一主義の『ファイン帝国』と大差ないではないですか!!!」



ずっと事の成り行きを見ていたレイン王は、ソラを見て言う。



「・・・・・・・ソラ殿。ダークエルフにした事は、この国の歴史の闇。・・・・・・・これは今後どうするかは考えないといけないが、我が国の命・・・・・・・【神樹】が全て破壊されてしまったのだ。ジェイクス将軍や三大老が言うように、その罪は最も重い。ここにいないダークエルフの処遇は一旦保留にするにしても、ここにいる者達は極刑しかないのだ。・・・・・・・そうしないと国民が納得しないだろう。」



貴方はゆっくりと歩くと、跪いているシエナ達の前に立つ。そしてレイン王とジェイクス将軍、三大老に言う。



「この国が一番困っているのは、【神樹】が破壊されたからなんだよね?」


「その通りだが?」



レイン王が答える。




「・・・・・・・うん。いるね。」




貴方は何もない上空を見上げると小さく呟く。




「それでは皆さん!ここからの会話はちょっと機密なので、一回音声を切りますね。」



そうカメラの視聴者に向かって言うと、音声を切った。








そして貴方は言う。








「【グリーン】。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ