表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/133

6話 アカリの下層ソロ攻略 4


『レア』は、ずっとこのダンジョンで過ごしてきた。



敵などいない。

己が強いのを知っていたから。

自分以外の者は、全て捕食対象としか見てなかった。

腹が減ったら、同類やたまにやってくる人間を食べ。暇なら他の階層へと遊びに行き、逃げまどう同類や人間と遊ぶ。



レアモンスターは絶対的な強者と信じて疑わなかった。



今この時までは。



同じ様に無数の鎌の連撃を四方八方から繰り広げるが、先程とは違い、その都度斬りつけられた。

ウルグの爪も、マミーの針でも傷つかないこの体がいとも簡単に、豆腐でも切る様に斬られる。



徐々に感じる始める。


初めての感情。



【恐怖】を。



本能が言う。


『逃げろ』と。




ザザンッッッッッッッッッッッ!!!!!!!




左右同時に繰り出す鋭い鎌。



その二本の腕が宙に飛んだ。



レアモンスターは本能で、斬られたのを無視して逃げようと背中を向けたその時、アカリが言う。



「なんだ。その程度か・・・・・期待外れだな。」



『レア』は人間の言葉が分かる。


人間を捕食した時に覚えたからだ。


その言葉を聞いた時、もの凄い怒りの感情が沸き上がった。


今まで強者として在り続けた。


それを全否定させる言葉。


怒りが逃げるのを拒んだ。




「ガァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」




残り一本の鎌を振り下ろしたその瞬間。



アカリは消えていた。




・・・・・・チンッ。・・・・・・




背後に鳴ったその音を聞いた時、『レア』はそのまま振り返る事なく、バラバラになって地面へと落ちた。




「終わったみたいですね。」




<コメント>


■ファァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


■うぴょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■キャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!


■すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■アカリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!


■アカリ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


■サイコぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■かっこいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!


■チンッて音が!!!チンッてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!




コメントがひっきりなしに流れる。



「お疲れ様。」


「ん。ありがとう。」


僕は、水筒を取り出してアカリに渡す。



レアモンスターの死骸が黒い灰となって消えていくと、そこに大きな鎌だけが残った。

それをカメラでズームして映しながら言う。


「これは初めてのドロップアイテムなので分かりませんが、価値が結構高そうですね!」


リュックサックにはみ出るが、何とか突っ込んだ。






そして少し先に進むと、広い空洞に出る。


周りを見ると無数の洞窟があった。

そして中央には大きな門の様な物があり、門の中は光っていて、カラフルなグラデーションで渦巻いていた。



「・・・・・到着ですね!ここが下層の最終地点です。という事は、さっきのレアモンスターが下層の3階層のモンスターを倒しちゃったみたいですね!後、目の前にあるのは【ゲート】です。この中にはいると、最後の階層・・・・・【深層】に着きます。」


カメラをぐるりとまわして最後にゲートに向ける。




<コメント>


■へぇぇぇぇぇぇ!!!ここが下層の最終地点!!!


■ほぉぉぉぉぉぉ!!!


■初めて見た!!!


■門みたいな物がある!!!


■凄い!!!!!!


■こんな風になってんだ!!!


■あそこが深層の入口か!!!


■深層!!!


■俺達、凄い貴重な動画観てんじゃね???


■感動でごわす!!!




下層の最終地点に着いた事への感動コメントが流れている。

そのコメントを眺めていると、アカリが撮影している僕の方へとやってきた。



「ねぇソラ。視聴者は、このカメラを通して観てるんだよね。」


「うん。そうだよ。」



そう言うとアカリはカメラの方に向かって笑顔で言う。



「皆さん。どうでしたか?」




<コメント>


■サイコぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■素晴らしかった!!!


■感動しましたぁぁぁぁぁぁ!!!


■カッコよかったですぅぅぅぅぅ!!!


■アカリちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!


■やっぱり可愛い!!!


■もっと近づいて!!!


■ソラ!もっとアップ!!!


■アップ!アップ!!!




「フフフ。ありがとうございます。・・・・・でも、皆さんにお願いがあります。」




<コメント>


■ん?何???


■何でも聞くよぉぉぉぉぉぉ!!!


■何でも言って!!!


■何々???


■アカリ様ぁぁぁぁ!!!何でしょう!!!


■アカリちゃんの言う事だったら何でも聞くよ!!!


■聞く聞くぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!




アカリは顔を少し伏せて言う。


「皆さん。私達のリーダー・・・・・ソラの事は悪く言わないでください。彼は私達にとって、なくてはならない存在なんです。彼がいるからこそ、【星空】は成り立っているの。だから、そんな彼を悪く言う人は・・・・・嫌いです。」




<コメント>


■はい!!!分かりました!!!


■はい!!!了解しました!!!


■はい!!!ソラも好きになりました!!!


■好き好きです!!!


■大好きです!!!


■マジ好きです!!!


■好きです!!!


■僕は嫌いになった事はありません!!!


■めっちゃ新参者動揺してるwww


■俺達はずっとソラの味方さ!!!


■そうそう!ソラがいなけりゃアカリちゃん見れないからな!!!


■アカリちゃん!これからもずっとソラを支えていくよ!!!


■我々に任せるでごわす!!!




アカリは流れるコメントをのぞき込むと、今日一番の笑顔で答えた。



「ありがとう♪♪♪」




<コメント>


■いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!アカリちゃん大好き!!!===50,000円


■きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!アカリちゃん可愛い!!!===30,000円


■いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!結婚して!!!!!!!===50,000円


■君の笑顔にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ乾杯!!!!!===50,000円


■アカリちゃん!大好きです!ファンになりました!!!===10,000円


■きゃわいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!===10,000円


■もうアカリちゃんずっと追いかけます!!!===10,000円


■見つめ合った!見つめあっちゃった!!!===50,000円


■チャンネル登録しました!!!===5,000円


■僕も!!!===3,000円


■私も!!!===3,000円




すげぇな。


コメントが勢いよく流れてるけど、スパチャが半端ない。

万単位の投げ銭がどんどん送られてくる。

いったいこの瞬間にいくら入ったのだろうか。

流石に後でアカリにも・・・・・いや、受け取らないか。



僕はカメラをアカリに向けながら言う。


「さて!これで下層ソロ攻略の終了です!え~と・・・・・コメントの中から最後にアカリさんに質問しますね!!!」



うん・・・・・これかな。



「アカリさん!視聴者さんからの最後の質問です!刀を武器に『侍』っぽいスタイルにしたのは何でですか?」






-------------小さい頃---------------



ソラが言う。


「ねぇねぇアカリ!『侍』ってカッコイイよね!!!刀一本でビュッ!て感じなんだ!ビュッ!って!!!凄くない???」


「・・・・・そんなにカッコイイの?」


「うん!すっごいカッコイイんだ!!!もしアカリがなったら『女侍』だよ!!!いいなぁ!!!」



------------------------------------






アカリはカメラに向かって笑顔で言う。


「そうですね・・・・・『カッコイイから』です。」




<コメント>


■カッコイイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!


■カッコイイィィィィィィィィィィィィィィィ!!!


■やっぱり日本人は侍ぃぃぃぃぃぃぃ!!!


■女侍サイコぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


■アカリちゃんなら何でもオッケぇぇぇぇぇぇぇ!!!


■きゃわいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!


■チャンネル登録しました!!!


■俺も!!!


■僕も!!!


■私も!!!




僕はカメラをアカリに向けたまま言う。


「さて皆さん!どうだったでしょうか!長い時間観て頂きありがとうございました!!!次回は来週の日曜日!!!またメンバーの下層ソロ攻略をお届けします!最後に、気に入ってくれた方はチャンネル登録をお願いします!!!・・・・・それではさようなら!!!『空ちゃんねる』また来週ぅぅぅぅぅ!!!」


エンディング曲を絡ませながら配信を終了させた。






「・・・・・よし。終わった終わった!アカリ。お疲れ様!ウォーミングアップにはなった?」


「そうね。レアモンスターがいたからいい感じに出来たかな。」


「それは良かった。」



僕は屈むと撮影機材をドロップ品が入っているリュックサックに仕舞い始める・・・・・入るかな?



フワッ。



屈んでいる僕の背後からアカリが抱きしめる。



・・・・・おっふ。



アカリの息遣いが僕の左頬に伝わる。背中には柔らかい感触を感じながら。



やばい。



陰キャ一歩手前のチェリーボーイとしては刺激が強すぎる。本当にやめてもらいたい。

もう僕達は男女を意識する年頃だ。

でもアカリは関係なく相変わらず距離が近い。マジで近すぎる・・・・・まぁ女性陣は皆そうなのだが。



煩悩を殺し、背中から抱きしめられているのを無視して機材をかたずけているとアカリが言う。


「・・・・・うん。満足。・・・・・ねぇソラ。終わった事だし今日は皆はいないけど、一緒にご飯食べよ?」


「ん?」



毎週日曜日の夜は、撮影の為、家でご飯は食べないと親には許可をもらっている。

夕方からライブ動画を始めるから何時に終わるか分からないからだ。

いつもはチーム全員で食べているけど、二人というのも悪くない。



「そうだね。行こう!」


「うん!」



僕は撮影機材を仕舞ってリュックサックを担ぐと、来た道を戻って行った。






☆☆☆☆☆






「ふぅ・・・・・やっと終わった。」



アカリと夕食を食べて帰路に着き、今日撮影した動画を編集する。

その日にアップする為だ。

時間を見ると、すでに深夜3時。

下層ソロ攻略動画という話題性のある動画。

編集にも力が入る。


ファンを増やす為にも、アカリの良さを前面にだす編集をしないとね!!!


今日は結果としてライブ動画は10万人を超えた。


編集動画もチャンネル登録も間違いなく伸びるだろう。


明日は間違いなく寝不足だが、ワクワクが止まらない。



「さて。寝ますかね。」


PCを切ると、そのままベットへとダイビングして布団にもぐる。






「・・・・・・・・・・・・・。」


「今日は【エリア】なんだ。」



僕の布団の上に、半透明の可愛らしい女の子が浮いている。


()()()は小さい頃から夜現れて、話をしながら一緒に寝ている。

昼間は見えないが、僕の近くにいるのが分かる。たまに話しかけたり、やな事があったら励ましてくれるのだ。



僕は彼女達を『幽霊さん』と呼んでいた。



そしてこの子は【エリア】。


一番よく現れて、僕と一緒に寝ようとする甘えん坊さんだ。



【エリア】はそのまま僕の隣へと潜り込む。



「・・・・・・・・・・・・・。」


「うん・・・・・おやすみ。」






眠気MAXの僕はすぐに眠りについた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ