21話 エイセイの下層ソロ攻略 1
「よし!着いたな!」
「そうだね。」
やってきたきた日曜日!
いつもの下層に降りる場所に着いた僕は、今日も今日とてウキウキ気分だ。
「楽しそうだね。ソラ。」
「分かる?だってさぁ、皆のおかげで思った以上に視聴者数が伸びまくってるんだよね!」
「そうみたいだね。もちろん僕も毎週ソラの動画観ているよ。大成功じゃないか!」
「フフフフフ。もっと言って♪」
メンバーの親友達も、毎週僕の再生動画を観ていると言っていた。
僕と一緒に行動をする親友以外は、実は、時間をずらして毎週潜っているのだ。
今度全員で探索する時まで、ウォーミングアップを兼ねているらしい。
僕はしゃがんで撮影の準備に取り掛かる。
さて、今日で下層ソロ攻略も四回目だ。
もう残り二人だから、今回誰が登場するのかは、みんな予想がつくだろう。
機材を出しながら、チラリと親友の方を見る。
「何だい?ソラ。」
「何でもない、何でもない。ちょっと見ただけだよ。」
「そうかい?」
背が高く、スラリとした細マッチョの体。
ボトムはジーンズ。トップスは黒で文字の入った長Tシャツを着て、首には銀のネックレスを付けている。
そのコーディネイトは、誰がどう見てもカッコイイと思う。
そして髪は金髪で優しそうな瞳。
もうマジでイケメンだ。
ただ、その恰好で唯一特殊なのが、両腰にガンホルダーを付けている事位だろうか。
もちろん、ホルダーには二丁の銃が収まっている。
いやもうね。マジでカッコイイのよ。
毎週見ている僕でさえ、カッコ良くて羨ましいと思う時があるんだから、まぁ・・・・・凄いんだろうな。
そんな彼の名前は、山崎 英星。18歳。レベル『7』。
最高峰のヒーラーでいて、強力な中・後衛のスペシャリスト。
ヒーラーとしては、おそらく世界で一番だと僕は思っている。
でも、探索者協会には簡単な傷を治せる程度だと報告している。・・・・・この間の僕みたいに大変になるからね。
実際は、心臓が止まってなければ全て治せる程のヒーラー。
それでは何故『レベル7』と評価されているのかというと、後々分かるからスルーするけど、中・遠距離攻撃がハンパないのだ。
そしてプライベートでは、超人気の若手俳優。
更にモデルもやっていて、歌も出している。
平日は、アカリ達と同じカトレア学園で、芸能科に通ってはいるが、今はほとんど登校していないらしい。
テレビや映画に引っ張りだこで、学業が出来ないとこの間嘆いていた。
でも、どんなに忙しくても、【星空】が行く探索だけは昔から欠席したことはなかった。
それが本業だからとよく言っている。
まぁ、他の親友達もそうなんだけどね。
と言う事で、お分かりいただけただろうか。
そんな有名人が【星空】のメンバーの一人で、今日は下層ソロ攻略である。
どんな撮影になるのか、ある意味、想像もつかない。
カメラの電源を入れて、スタンバイ状態で見ると、まだ始まってもいないのに40万以上の数字が表示されていた。
マジか。
僕は慌てて準備を終えると、エイセイに話しかける。
「エイ。そろそろ始めるけどいいかな?」
親友達だけの時は、僕は彼を『エイ』と呼んでいる。小さい時は『えいちゃん』だったな。
「いつでもいいよ。」
エイセイは爽やかな笑顔で答える。
もうそれだけで、絵になるから恐ろしい。
「さてっと。」
片手にカメラを持ち、儀式の様に大きく深呼吸をする。
「すぅぅぅぅぅ。はぁぁぁぁぁぁぁ。」
そして配信をスタートさせた。
「みなさぁぁぁぁぁぁぁぁん!観てますかぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
☆☆☆
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■始まったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■観てるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■観てりゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■待ってた!めっちゃ待ってたぁぁぁぁぁぁ!!!
■一週間は長いぞ!ソラぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■ごわっ!ごわっ!ごわすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■回を追うごとに古参が壊れてるwww
「皆さん!今日もご視聴ありがとうございます!それでは・・・・・『空ちゃんねる』スタートです!!!」
オープニング曲を流す。
ダンジョンを撮影しながら言う。
「どうもこんばんは。ソラです!今日で四回目!本日もメンバーの下層ソロ攻略をお届けしたいと思います!」
<コメント>
■きたきたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■誰だぁ?誰なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
■あと二人!!!どっちだ?どっちなんだぁぁぁ???
■何となく予想はついてるけどなwww
■つぅか、古参と男どもだけが騒いでて、なんだか怖いんだがwww
■まだどっちか分からんからなwww
■それ待ちだろwww
■嵐の前の静けさwww
うん。僕も同意。
40万人超えていて、まだ女性のコメントがほぼ出てこない。
早く発表した方が良さそうだ。
「それでは皆さん!お待ちかねのメンバーを発表しますね。・・・・・今日下層をソロ攻略するのはこの方!!!」
カメラを下に向け、ゆっくりと足から胴体、顔へと移動して、アップで止める。
「どんな事があっても彼がいれば大丈夫・・・・・【星空】最高のヒーラーでいて、中・後衛のスペシャリスト!そして『レベル7』!・・・・・山崎 英星さんです!!!」
「みんな。よろしく。」
エイセイは、優しそうな瞳をカメラに向けて微笑んだ。
金髪が揺れながら、ダンジョンの光に反射して輝く。
<コメント>
■イャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
■エイセイィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!
■エイセイ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■お顔がぁ!お顔がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■近い!近いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■貴方は私だけのものよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■素敵ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■愛してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■もうダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
・・・・・うん。
やっぱり凄いことになった。
エイセイが出た瞬間、コメントがヤバい事になっている。
怒涛の様に流れるコメント。
ほとんどが、うって変わって女性のコメントばかりだ。
しかも悲鳴ばっかり。
サービスアングルと思って、テレビでもここまではやらない、顔をめっちゃアップにしたのがかなり効いている。
狂った様に終わらないコメントをとりあえず無視しながら、下層へと下りていった。
下りると無数の洞窟が現れる。
「下層到着です。いつもの場所ですね!さて、エイセイさん。どこの入口から入りましょうか?」
「そうですね。」
「よし!お前ら!!!着いたぞ!!!」
僕がエイセイに話しかけたと同時に、大声が響く。
カメラを向けると、八人のチームが僕を見ながら聞こえる様に叫ぶ。
「俺達【ライジング】はこれから下層を攻略するぞ!皆!気合入れてくぞ!!!」
「おぉぉぉぉぉ!!!」
【ライジング】と呼んでいたチームは、聞こえる様に叫び終えると、また僕の方へと笑顔で向き直る。
あれ?これは・・・・・。
「えっと。ちょっと邪魔が入りましたが、改めましてエイセイさんどうします?」
「それじゃ、あそこの入口から入ろうか。」
エイセイは、一つの入口を指さすと、そのまま入って行く。
僕も続きながら、カメラと一緒に後ろを振り返り、黙って笑顔で僕を見ている【ライジング】を撮りながら入って行った。
<コメント>
■うわぁ。あれ。多分『空ちゃんねる』だと分かって叫んでたぞ。
■やっぱりでてきたか。
■【ライジング】か。この動画、今一番旬だからな。便乗してあわよくば有名になりたいって輩だろうw
■日本ギルドのHP見ると、中層攻略メインのチームだな。名前を売っとこうと思ってついて来たかw
■目立ちたいんなら、同じ様に撮影すればいいのにwww
■下層で撮影はあり得ない。モンスターに全力を注ぐのが普通だ。稼げるしな。【星空】が異常なんだ。
■同業者さん。アドバイスあり。w
■ソラ!まぁしょうがない。有名税みたいなもんだw
■どうでもいいわ!!!
■そんな事よりエイセイをもっと映してぇぇぇぇぇ!!!
■早くエイセイ様を映して!!!!!
■エイセイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
下層ダンジョンの一階層を進んで行く。
エイセイは僕の斜め前を歩いている。
僕はカメラでエイセイの斜め後姿を映しながら、徐々にアップにしていき、エイセイのうなじが見える所までズームした。
「ん?何だいソラ。」
「何でもないよ。」
「そっか。」
気づいたエイセイが、歩きながら振り返り、爽やかな笑顔で話しかけた。
うん。その仕草でさえ、とても様になっている。
<コメント>
■きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■エイセイの首ぃ首ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■エイセイ様のうなじぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
■その笑顔やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■あぁ!!もうダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
■ソラさん!ナイスですぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■ソラさん!もっと!もっとぉぉぉぉぉぉ!!!
■ソラさん!ありがとう!!!
■ソラ。お前ふざけてるだろwww
■ソラ。お前、新規女性視聴者に甘くしすぎwww
■クソッ!悔しいけどカッコイイな。
■クソッ!悔しいけどイケメンだな。
■クソッ!悔しいけど背たけぇな。
■クソッ!悔しいけどスタイルいいな。
今日はエイセイのおかげで、新規の女性視聴者がとても多いように思う。
フフフフフ。
ならば、ここは合間合間にサービス撮影をして、この動画のファンになってもらわないとな!
移動中は、ダンジョンをメインに撮りながら、質問する時に親友達を撮っていたが、今回だけはエイセイを中心に撮っていこう。
するとエイセイが止まった。
エイセイからダンジョンの先へとカメラを移す。
そこから現れたのは、目が赤く、毛で覆わている二体のモンスター。
「接敵しました。・・・・・『ウルグ』ですね。」
<コメント>
■うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
■きたきたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
■お約束ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!
■またまた来ました!お約束の『ウルグ』!!!
■これで四週目www
■よっ!皆勤賞!!!
■今までのメンバーは瞬殺!エイセイはどうなんだ!?
■ずっと気になってたんだが、まさかあのハンドガンを使わないよな?
■まさかwww
■現代の重火器じゃ、ダンジョンのモンスターには傷一つ付けられないのが常識だよな?
■そうそう。武器はダンジョン産しか通じない。これ常識。
■そんなのどうでもいいわ!エイセイ様ぁぁぁぁぁ!!!
■エイセイ!頑張って!私が見守っているわ!!!!
■エイセイぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!
その時、静かなダンジョンの中で銃声が鳴り響いた。
ウルグをアップすると、二体の額に数個の穴が空いている。
そのままウルグはゆっくりと黒い灰となって消えていった。




