〜VRのゲームでウサギの振りをしている変態プレイヤーがいるらしい〜
ようやくここまで来た。
長かった。
剣聖になり大賢者になり教皇になり……。
そして遂に、このアバターを手に入れた。
自由に変形できる身体。
儂がそのアバターで形作ったのは、絶世の美男子でも世界の王者ドラゴンでもなかった。何の変哲も無い、どこにでもいるような一匹のウサギだった。
小さな身体。
茶色の毛並み。
つぶらな黒い瞳。
靴ベラのような短い尻尾。
一見、弱々しい小動物。
もちろん、これまでのジョブの積み重ねがあるので、身体は頑丈だし魔法も使える…というか恐らくこの身体のままでも国を滅ぼせる。それに念話で会話もできる。
だが儂は、あえて戦えも喋れもしない無力なウサギを装った。
今、儂がいるのは、フルダイブ型のVRゲームの中だ。技術の発展は凄まじく、現実と大差ない感覚を脳に伝えてくる。
世界観は冒険ファンタジーで、街の外に出れば危険な魔物が闊歩している。だが街中に入れば、無害なウサギや猫がウロチョロしているほのぼの系。
そこに儂みたいな愛くるしいウサギがいればどうなるか。
答えはーー
「キャー!可愛いー!」
ゆさゆさと揺れるおっぱいが突撃してきた!
来ただけではない。儂を抱き上げ、向こうからムギューっと顔に、肩に、背中に押しつけてきた。そのふわふわの双丘を!
何たる至福!!!
儂はもちろん、無力なウサギを装って、されるがままになっている。
「いやーん!大人しー!」
おなごの柔らかく細い指が、儂の身体を撫でくり回す。背中も尻も腹も脇の下も、それはもう容赦なくもふられる。
ククク。思う存分、もふもふするがよい!
儂を抱きしめるおなごは、おっぱいが大きいだけでなく顔も可愛い。
うーん、死んだ婆さんに少しだけ似ていなくもない、だろうか?
仰向けにされて腹を吸われる。
「ふぉおおん」とか言いながら。
くすぐったい。
もう、どうにでもするがいいー。
本来の身体ならば大変な事になってしまいそうな事態だが、幸いこの身はアバター。この世界の動物には、性別を示すような器官は付いていない。それを真似た儂の身体にも当然付けていない。
だから本来ならナニがナニな状態になってしまいそうな状況でもオッケーなのだ。
おなごの手が、儂のちっこい手を掴んだ。柔らかな手にきゅっと包まれる。
むむっ。これはこれでなかなか。
「ふぉお、可愛わわわぁああああぃああああああぃえええええああああ!!!」
儂のちまっとした手と握手しながら腹に顔面を擦り付け、言語野に支障を来しているおなご。
まぁ、そういう事もあるだろう。身体と身体のコミュニケーションに言葉は必要ないから問題ないしの。良き良き。
おなごの手に、クタリと身を委ねる。
………何故儂がこんな事をしているのか、説明が必要だろうか?
まぁ暇だし説明しよう。
古希を迎えるような歳になると、正直もう下半身をどうこうするのは面倒なのだ。ぶっちゃけ、おっぱいだけにデレデレしていたい。ただ柔らかな谷間に埋もれて、幸せな時を過ごしたいのだ。
こういうのが少数派かどうかは知らん。だが世間では『いくつになっても下半身が元気な老人が立派』という風潮が強いのだ。
少なくとも、儂の周りでは。
実際儂も、現実でおっぱいに顔を埋めようものなら、その先を期待されてしまう。
いや、期待とは違うか。だが「まだまだ元気ね」とか「どうせ下も触るんでしょ?」的な空気になる。
儂はそれに嫌気がさしたのだ。
皺くちゃの身体で、出涸らしを絞り出してどうするというのだ。腰も痛くなるし。
それよりも、柔らかなおっぱいに包まれている方がずっといい。双方が望んでいない行為など、無意味なのだ。
………少し説明が長くなってしまったな。
まぁ、そういう訳で儂はこの身体を手に入れる事にしたのだ。
生殖器官も付いていないただの小動物に欲情する高レベルなおなごは滅多におらんからの。
無害な小動物の身体ならば、儂は思う存分おっぱいだけを堪能できる。そしておなごは好きなだけ大人しいもふもふを堪能できる。
まさにウィンウィン。
そう思いついて、理想の肉体を手に入れる為に、フルダイブ型VRとやらを始めたのだ。キャラメイクとやらで、好きな外見になれると聞いて。
だが、事はすんなりとは進まなかった。
選べるアバターが、人型しかなかったのだ!
何たる事だ!
VRの世界で愛玩されたい。そんな願望を持つプレイヤーがいないとでも思っているのか!
だが折角始めたゲームなので、アップデートに期待しつつ遊んでいたが、一向に動物型アバターは追加されない。
それでも諦めずに攻略サイトを見たり掲示板で質問したりして怪しい噂も引っくるめて追っていたところ、ある情報に辿り着いた。
八つ以上のジョブをMAXにして転生すると、好きに身体を弄れるようになる。
普通は人型を、身長や髪の色、顔形などを弄ってキャラメイクする。だが、そこに到達すると、本当に身体を好きに弄れるらしいのだ。
ドラゴンにも、軟体動物にも、城のような無機物にも。形も大きさも質感も自由に。
ほぼデマとして扱われていたその情報に、儂は賭けた。
どうせ時間だけはあるのだ。
他に手が無いのなら試すまでよ。
そして儂は賭けに勝った。
情報は本当だった。
今、儂はずっと羨ましく思っていた小動物の身体を手に入れた。ただただ愛玩され、豊満なおっぱいで窒息し兼ねない存在になったのだ。
もう、いつ死んでもいい。
本物のお迎えが来る前に、儂は自力で天国に到達した。
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