第3話 イセカイコワイ
名前:幸泉 乃愛
種族:人族・帰還者
性別:女
職業:ーーー
AGE年齢:16【40】
Lv:1
HP(生命力):7678/7678
SP(体力):121/121
MP(魔力):0/0【∞/∞】
STR(攻撃力):61
VIT(防御力):1000
AGI(俊敏性):53
DEX(器用):392
INT(知力):388
MND(精神力):375
LUK(運):∞
CHA(魅力):39【548】
スキル:『全言語理解』『全ての魔法』『取得経験値増』『必要経験値減』『神眼』『隠蔽』『創造』『具現化』『ドロップ』『無限収納』
加護:『神々の加護』『異世界神々の加護』
へー、加護なんてあるんだー。それも2つあるー、こっちの神様とあっちの神様ってこと?ありがたいねぇ。おぉ全言語理解かー。これのおかげで、この世界の言葉がわかるんだね。全魔法って全部の魔法が使えるってこと?スゴイじゃん!夢なのに・・・っていうか夢であってほしい・・・。
現実逃避をしていると、数ヵ所に【】がついている数字に気付いた。
あれ?この【】ってなんだろう。年齢【40】は全くその通りだけど、左側の16は何?魔力のところは・・・これ無限のマークだよね。まさか、魔力が無限なんてあるわけないよね・・・。それに、左側が0になってる。魅力のところも似たような感じになってるし 、変なの。 タッチパネルみたく触ったら説明が出てきたら良いのにな~。
そう思いながら年齢の【40】を何気なく指を近付けると、ピロン♪と音が鳴ってステータスの上に同じ画面が現れた。
おぉ、何か出てきた。なになに・・・。
『二つの世界では時間の流れが異なるため、年齢の誤差が生じる。元の世界では40歳だが、こちらの世界では16歳である』
「じゅう・・・ろ、く・・・?」
いやいやいや、ないないない。40歳のこの重力に負けた皮膚のたるみとハリの無さ、小じわが気になり出す今日この頃、それでも目を逸らさずに毎日鏡を見てきた自分の顔と体型。そんな16歳に若返るなんて、夢のようなことが・・・。鏡ないかな?
「じゅう?・・・あぁ、時間の流れが違うからな」
「へー、そんな設定なんだね」
かなり、自分にとって都合の良い夢だな・・・。
「・・・信じられないのなら、ベタなことをしてみたらどうだ?」
「ベタ?」
「あぁ、ベタなことだ。夢かどうか判断するお約束事だ」
「え?・・・痛いの嫌なんですけど」
「それが手っ取り早いだろ」
「じゃ・・・」
そう言いながらカインさんの方に手を伸ばすと、身を引かれた。
「何故、俺にやろうとしている。自分に試さないと意味がないだろう」
「良く本などで見る、お決まりな展開?」
顔が見えないが、相手の出方を窺うようにジリジリとお互いを見ていると、素早くカインさんの手が私の頬をギュッと引っ張った。
「痛いんですけど!普通、女の顔を引っ張る!?・・・あれ?痛い・・・」
「痛いということは?」
「・・・夢じゃない?」
「ついでに」
そう言うとカインさんは、頬を引っ張っていた手を離すと頬に添えるように近付けた。また引っ張られるのかと身を引こうとしたが、その前に手が当てられた所が白く光った。
「え、光?・・・」
カインさんの手が離れていくのと同時に、自分の頬に手を当ててみた。
「また痛いか?」
「あれ?痛くない・・・」
ふにふにと触ってみるが、引っ張られた頬は先ほどまではジンジンと痛かったはずなのに、光った後は痛みが消えていた。
「それが回復魔法だ」
「回復魔法?」
「あぁ、これが火で、これが水、風に、土に、光に、ここで出せるのはこんなものかな」
カインの手から小さな火の鳥が現れ軽く飛び回ると消え、水の龍が上に向かって水を霧状に吐くと消えて変わりに虹ができ、風が渦を巻き小さな竜巻となり、きらきら輝く砂がサラサラと滝のように流れ、星形の光がくるくると回るという不思議な現象が、目の前で繰り広げられては消えていった。それをマジックみたいで、キレイだなと漠然と思った。だが、それと同時に突然不安が混み上がってきた。
「・・・元の世界には?」
目を背けたいけど、聞きたくないけど、一番確認をしなくてはならないことだと思う。
「いろんな人に聞いたが、戻れた者は確認されていないそうだ。・・・どんなに調べても、帰れる方法が見つからない」
カインが悔しそうに首を横に振る。それを見て、空気が薄くなったように感じ、思わず息を大きく吸い込んだ。
「カインさんも?」
「カインで良い。俺もノアと呼ばせてもらう。そうだ、俺も同じく渡ってきただ」
そうか・・・彼も私と同じで、一人でこっちに来て帰れないでいるんだ・・・いや、私より過酷だったかもしれない。私は今こうやって彼に助けてもらったのだから・・・。
「じゃ、カインと呼ばせてもらうけど、カインはこっちに来てどのくらいになるの?それと、来訪者?それとも帰還者?」
落ち込んでいられない。目の前に私より先にここに来て、苦しんでいる人がいるのだから。
「・・・同じ帰還者だよ。こっちに来て10年になる」
「10年か・・・長いね」
「こっちに来て、一生を終えた者に比べたら長くないさ」
「・・・そう。じゃ、カインも若返ったの?」
一生か・・・まだ、どんな所かわからないから、この世界で一生やっていけるか不安だな・・・。
「あぁ、それで困ったな」
「若返って嬉しくなかったんだ?」
「知らない世界で子供になって、どうしろって感じだったな・・・。まぁ、いろいろ苦労はしたけど、あっちでこの手の本を読んでいたから何とかなったよ」
「じゃ、私はラッキーだね。カインに拾ってもらって・・・」
「・・・まぁ、働いてもらうけどな」
「働かざる者、食うべからずだね」
あっちの世界にいた時とは、気持ちが違った。自分に自信がなく不安だらけでネガティブ思考だったが、今は違う。この世界に来たからか、何故かそれが不思議と消え去っていた。
それに私ってこんな性格だったけ?もっと陰キャで、悪く言われないようにや虐められないように言いたいことも言わず、自分を押し殺してきたし、私には無理だとすぐに諦めていたのに、こっちでは何でも出来そうな気がする。なんでだろう・・・。
止まっていた目の前にあるステータスの画面の確認を、再度始めた。先ほどカインが言っていたチート的な言葉が頭に浮かんだので、そのステータスの画面の【帰還者】に、恐る恐る指を近付けた。
ピロン♪と【40】の説明画面が消えて、【帰還者】の違う画面が出てきた。
『この世界で誕生するはずが何かしらの理由で異世界に渡り、適性のある女性のお腹の中に吸収され誕生した。歪みを正すために、本来誕生するはずだった世界に戻された者。こちらの世界の者は、魔力がないと異世界では生きていけないため、自分自身で魔力を生み出す能力が備わる。その能力に加え、時空を渡る時の何かしらの力により、基本能力やスキルなどが非常に高くなったり、特殊なスキルが備わったりする。帰還者は来訪者より数値が高くなっている』
これは、カインに教えてもらった内容とほぼ同じだ。そんなチート能力いらないですと思いながら、次に魅力と書かれてある【548】に恐る恐る指を近付ける。
もう一つの方を後回しにしたのは、決してビビったわけではない。決して・・・。
ピロン♪。【帰還者】の画面が消えて、【548】の画面が出てきた。
『本来の数値は548だが、異世界に渡ったことにより魔力詰まりが起きて滞り、魅力が下がっているため数値が低くなっている状態。改善されれば元の数値に戻る』
これもカインの説明通りか・・・。くっ、どんなに運動しても、どんなに食事制限しても痩せなかったのは、こういうことなのか・・・。私の苦労と努力を返せっ!!・・・ヨシッ、もう怖いものはないぞ、出来れば避けて通りたかったけど次に行く!
【∞】を躊躇なく指を近付ける。ピロン♪と【548】の画面が消えて【∞】の画面が出てきた。
『魔力詰まりにより魔力が使えないため数値は0となっているが、本来の数値は∞である。改善されれば元の数値に戻る』
この記号は、やっぱり無限だったかー!カインが言っていた能力ってコレのこと!?・・・これは誰にも言えない。信頼できる人がいないこの世界で、誰かにバレてしまったらヤバイことになりそう・・・。運も∞だしっ!ちょっと、運と魔力が無限ってどいうことですか!?神様!!
はぁ・・・なんか、驚きっぱなしで疲れたよ。
疲労を感じて肩を落とすと、笑い声が聞こえてきた。
「・・・クックックッ。まるで、百面相だな」
あっヤバイ、一人じゃなかったんだ・・・。ステータスを見るのに夢中で忘れてたよ・・・。
「アハハハハ・・・」
笑って誤魔化しちゃ・・・えないか。どうしよう・・・。
「珍妙な動きをしていたけど、ステータスに何か不具合でもあったか?」
珍妙なって・・・私そんな変な動きしていたかな?それよりも、この数値なんだよね。そのまま言ってしまったら、かなりヤバイよね。ここは魅力だけを言おうかな。
「いや~、魅力の数値が39でかなり低いなって・・・」
「それは、改善されれば戻るってあるだろう。その他にあるんだろう?他人に知られたくないことが・・・」
うっ、すっ鋭い!いや~そうだけどさ・・・言えないよね~。同じ帰還者でも会ったばかりの人に・・・。直感では悪い人ではないとわかるけど、直ぐには信頼できないよ・・・。
「ノーコメントで・・・は、無理ですよね」
「そに反応は、何かあると言っているものだぞ」
そうだよね、バレバレだよね。如何にも何かありますよと言っているようなもんだよね。ここで渋ってもしょうがない!どう転ぶかはわからないけど、助けられてるし、これからも助けは必要だし、ここは覚悟を決めるか。
「えっと、魔力と運が∞みたいです。魔力の方は、魔力詰まりによって使えないみたいですけど」
「何だ、それか。ノアは魔力と運なんだな」
「え?」
あれ?驚いてない・・・心配しすぎ?自意識過剰!?すっごい恥ずかしいかも!!
「そういえば、言っていなかったな。帰還者は能力の二つの数値に∞がある」
「え?」
「俺は、魔力と精神が∞になっている」
「えーーーーー!?」
それは先に言ってください!余計な気を揉んでしまったじゃないの!!
頭を抱えていると、カインがどこからか一枚の紙を取り出した。
んんっ?それ、どこから出しました?手品のように、何もないところから出したように見えましたけど!
「え?それ・・・」
「この世界の騎士や冒険者のステータス登録で集計された、女性の平均数値が書かれている」
私の驚愕を無視して、その紙を手渡してきた。
Lv:49
HP(生命力):2058
SP(体力):252
MP(魔力):278
STR(攻撃力):198
VIT(防御力):180
AGI(俊敏性):177
DEX(器用):205
INT(知力):159
MND(精神力):202
LUK(運):128
CHA(魅力):161
これはヤバイ・・・攻撃と俊敏性だけが下回っているけど、私って化け物?これ以上レベルが上がったら化け物の次は何になるのか・・・。
「来訪者は、これより数十から数百プラスされた数値くらいだ。これを参考にステータスを隠蔽するぞ」
「・・・隠蔽?」
「あぁ、帰還者は来訪者より力があるからな。それに元はこっちの世界の者だからと言って、便利に都合良く使おうとする奴らが多いんだ」
おう・・・そんな輩がいるのですか・・・イセカイコワイ。
「隠蔽やりましょう!今すぐやりましょう!」
「悪いが、今すぐは無理だな・・・」
そんな私の勢いに若干引かれながらも、カインは言った。
「え?無理?」
「魔力を使うから、今は無理だ。まずは、魔力を使えるようにしないと」
それを先に言ってよ・・・。私のさっきの勢い返してよ!それ、いつ魔力が使えるようになるかわからないじゃん!もう、どうするのよ。魔力が使えるまで引きこもり?もしかしたら、何年も・・・。あぁ、私はただ飯食らいの穀潰しになってしまうのでしょうか・・・それとも追い出されて・・・。
悪い想像が次から次にと出て来て項垂れていると、肩に何かが掛かるのを感じた。それはカインが着ているものと同じだった。
「・・・ありがとう」
「・・・まぁ、この世界にはピンからキリまでいる。各国の騎士団はレベル200超えが基本だが、冒険者の殆どがレベル20から30くらいだ。その中でも一部、飛び抜けて高い者たちがいる。冒険者にはランク付けというのがあってAやS、SS、SSSというレベル1,000を超える者たちだが、殆どが人族ではない」
「・・・」
ふと、遠くを見るように目線を上げる。ちょっと大半は何を言っているのかわからないけど、1,000か・・・スゴイな~。私には程遠いな~。元の世界ほど遠いな~。ていうか、このままのレベルで良いしっ。
グッと握りこぶしを作る。
あ、人族ではないというのも気になる・・・モフモフだったら良いな~。でも強いということは、狼や熊の可能性もある。もしくは蛇みたいな・・・コワゴワやザラザラだったら嫌だな。思わずワキワキと手を動かしてしまった。
「だから、大丈夫だ。来訪者や帰還者以外で鑑定能力を持っている者は、名前や種族、性別、職業、年齢、レベルまでで、その他は見れないはずだから気付かないだろうと思う」
うっ励ましてくれるんですね・・・変な奴だと思って、ごめんなさいっ。不審者だと思って、ごめんなさいっ。モフモフが気になって途中から気が逸れてました、ごめんなさいっ。
「ありがとう・・・」
も言えないので、感謝の言葉で・・・。
「じゃ、まずは腹ごしらえをしてから魔力詰まりをどうするか考えようか」
その言葉を待っていました!というように、ノアのお腹の虫が鳴いた。思わずお腹を押さえると、恥ずかしさで顔が赤くなるのがわかる。
「ふっ、お腹は正直だな。口に合うかわからないが、直ぐに用意させるから。おい、ジャック!」