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迷い犬を拾ったら竜王だった件。  作者: 斉藤はじめ
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序章

 竜王の居城。その最上階にある玉座の間は、その豪奢な作りが見る影もないほどに無残な有様となっていた。


「クハハ!やるな、勇者よ。我とここまでやりあうとはな。いいだろう。それでは、我もそろそろ本気を出すとしようか!!」

「御託はいいから、さっさと来い。俺は早く村に帰って戦勝報告をしたいんだよ。」

「ぬかしよるわ。いくぞ!!業火呼吸(フレアブレス)!!!」


 呪文の詠唱もなにもいらない。竜王が一息吹けば、それが炎熱系の最上位魔法と同等以上の威力となる。玉座の間は一瞬で業火の間へと変貌した。普通の人間ならば灰すらも残らない。

 しかし、絶対防御魔法を発動している勇者にダメージを与えることはできない。他の攻撃も、勇者にダメージを与えることはできない。


 一方、勇者の攻撃も、竜王の鋼より強靭な鱗に覆われた肉体に決定的なダメージを与えることはできず、多少ダメージを与えても、竜王の再生能力の前にはほとんど意味のないものだった。


 互いに決定打を欠いたまま、竜王と勇者との死闘は三日三晩に及んだ。しかし、常人では決して気付くことのない一瞬の隙を突き、勇者が命をかけた最強の一撃を放った。


「くらえ!!究極破壊斬撃!!!」


 勇者の咆哮と同時に、竜王の胸が大きく貫かれる。そのダメージは、竜王の再生能力をもってしても修復不可能なものであった。


「ク・・クフフ。見事だ、勇者よ。しかし、我は滅びぬ。何度でも蘇る。いずれまたこの世界に・・・」

「おっと。そうはいかない。」


 勇者はそう言うと両手を広げ、術式の印を結び始めた。


「何だ、何をする気だ?」


「竜王よ。お前は確かに永遠の存在だ。これまでも何度も転生を繰り返し、我々人類の前に立ちはだかってきた。我々は幾世紀も研鑽し、お前を完全に滅ぼす手段を模索してきたが、どうしてもその手段を見つけることは叶わなかった。

 だから、我々は考えを変えたのだ。お前の転生を止めることはできなくとも、転生先をずらすことならば可能なのではないかと。」

「な・・・!?貴様、まさか!!!???」

「くらえ!これが俺の、本当の最終奥義だ!!開け!転生門!!!」


 勇者と竜王の間に、禍々しい巨大な門が姿を表すと、歪な音を響かせながら左右に開いていく。


「お、お・・・おおおおおおおおお!!!!???」


 転生に備えて粒子化を開始していた竜王の肉体が、みるみる内に門へと吸い込まれていく。


「おのれ・・・おのれぇぇー!!!」


 必死の抵抗も虚しく、竜王の肉体は一片も残さず門の中へと姿を消していったのだった。

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