大牧場
「さすがにここまで広いのは見たことがないですね」
手野グループの企業集合体の頂点、持株会社である手野産業の一社員である俺は、今、アメリカにいた。
「だろうさ。ここは全米でも5本の指に入るほどの大牧場だからな」
アメリカにいる理由は研修。
俺の研修先は、この本当に地平線まですべてを所有している大牧場だった。
牧場主は、手野グループの南北アメリカ大陸利益代表とされるテック・カバナー財閥。
その財閥長だ。
研修というよりか、むしろ観光で来ているようなものではあるが、それでもおおらかな彼から教わるものはとても多い。
この大牧場も牛肉用に肥育されている数万頭の牛や、特別肥育牛と呼んでいる数十頭など、その価格や売るための手段、さらには経営、販売ルート、財閥としてのあり方など。
様々なことを吸収し学んでいくことができる。
「それで、君はこの旅で、一体何を学んだ?」
研修最終日、彼が招いてくれた夕食会で、唐突にそんなことを聞かれた。
「学んだことですか。そうですね、世界は広いということでしょうか」
2週間という短い時間。
だが、吸収するにはあまりにも足りない期間。
「ほう、それはどういうことかな」
「日本では、おそらくここまでの大牧場を運営することはできないでしょう。まず土地が少なすぎる。そして、税金も高い。さらには何かあれば地元住民との軋轢ということもある。一方で、ここはそんなことを気にする必要がない。それだけでも十分な収穫だったと感じます」
「ふむ」
彼がさらに聞きたがっているのがわかる。
「アメリカという利点、逆に日本という利点。それぞれは高め合うことすれど、低め合うことはないでしょう。一つだけの視点から見るのではなく、他国からあるいはもっと身近な別の誰かからどう見えているのか。そういうことを知るいい機会となりました」
「ふむ、まあまあ合格だな」
彼はにっこり微笑み俺に言った。
「それはどういうことでしょうか」
「これから君は、ここでしばらく働いてもらいたい。むろん、給料はいいぞ。君のところの社長にはもう話はしてある。どうだ、この世界の新たな視点を見つけるということは」
ある意味願ってもないことだ。
研修では身につかないことも、何ヶ月、あるいは何年といればわかるかもしれない。
「……よろしくお願いします」
「よし、いいだろう。君もこれからこの牧場の一員だ」
研修はさらに続きそうだ。