06
「見たか?小野塚くん」
「うん、見たよ」
そりゃそうだ。一緒に同じ方向を見ているんだから。
「どう思った?」
「どうって、月崎さんと鈴田さんが一緒に帰ったなぁと思ったけど・・・」
「見たまんまの感想じゃないか!心配にならないのか!?」
勝又くんが鼻息を吹いた。白い蒸気が見えた気がした。
「でも鈴田さんも見た目はちょっと怖いけど、勉強とか学年トップだし大丈夫じゃない?」
「勉強出来る人が全員良い人だったら今の日本はこんなに混迷していない!」
いったい僕は何に巻き込まれているのだろうか。心の中でため息を吐きながら話を会わせる。
「それじゃあ、どうするの?2人の後を追う?」
「いや、校門を出てから後をつけたらストーカー認定されてしまうから」
あ、その感覚はあるんだね。
「それじゃ、あの2人が校門を出たことだし、僕らも解散だね。それじゃあ」
そう言って僕はさっさと勝又くんから離れた。彼は何か言いたそうにしていたけど、後を追っては来なかった。相手が男でも校門を出たら彼のストーカー法は適用されるらしい。
1人帰宅しながらため息を吐いた。肩がやたらと凝っていて、首を左右に捻るとゴキゴキと派手に鳴った。
高校に入ってからはずっと平和だったのに、昨日からおかしくなり始めた。
不意に中学時代のクラスメイトの顔が浮かんだ。柔道部に所属していた女子だ。
その女子も柔道がそうとう強かったと聞いている。月崎さんと面識はあったのかなぁ、とボンヤリ考えた。