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「うん、()()(とい)の告白は、確かに阿久井さんが関係してるよ」


 月崎さんはあっさり認めた。彼女の言葉に僕は泣きそうになった。


 どうやら僕は、心のどこかで月崎さんは本心から僕のことを知ろうとしてくれてるんじゃないかと期待していたようだ。


「それじゃ、やっぱり僕への嫌がらせだったってことなんだね」


「え、嫌がらせ?」


 月崎さんが不思議そうに(まばた)きを繰り返した。「意味が分からないんだけど?」


「だから、阿久井の意志を受け継いで僕に嫌がらせを」


「ちょっと待ってよ」月崎さんが僕の言葉を遮った。


「さっきから嫌がらせてなんのこと?阿久井さんがそんなことするわけないでしょ」


 月崎さんの表情に変化はないものの、声に怒りが混ざった気がした。


「たぶん小野塚くんは阿久井さんのことを勘違いしてるんだよ」


 そんなことはないと思うけど、彼女の静かな怒りを感じ取った僕は萎縮して言い返せない。


「・・阿久井のこと、信用してるんだね」


 思わず皮肉めいたことを言ってしまったが、月崎さんは言葉を額面通り受け止めたようだ。


「当たり前でしょ。彼女と私は小学生の頃からずっとライバルで、親友だったから」


「そうなんだ・・・」


 阿久井のことをこんなに大切に思っている人がいるなんて、今まで考えたこともなかった。それがそのまま口から出てしまった。


「阿久井が死んで悲しむ人がいたのか・・・」


・・・あ、バカ!何おかしなことを口走ってるんだ!今のはデリカシーがなさすぎた!おもわず目線を落とした。さすがに今の発言には静かな対応をしていた月崎さんも怒りの言葉を浴びせてくるはずだ。


 しかし数秒経っても何も起こらず、周囲のお客さん達の話し声がやたら鮮明に聞こえる。恐る恐る顔を上げると、彼女はうつむいていて、小刻みに肩が震えている。


 ・・・グッ ヒグッ ウウ・・・ 


 聞こえてきたのは嗚咽だった。テーブルに彼女の涙がボタボタと落ちている。予想とは違ったけどこれはこれでやばい!


「月崎さんごめん、変なことを・・・」


「あたしなの」


 へ?アタシナノ?何がどうアタシナノ??と思ったら月崎さんがもう1度いった。


「阿久井さんを死なせたのは、私なのっ」


 え?どういうこと?僕は何かやばいことに巻き込まれてる?


 どうしたらいいか分からないけど、それでも何か言葉をかけようとした時だった。背後に誰か来た気配があった。


「おい、小野塚!お前はもう喋るな!」


 いきなり怒鳴られて振り返ると、知っている顔が立っていた。


「え、あれ、どうして?」


「どうしてじゃねえよ!それと月崎さん、あなたは阿久井の事故には一切関与していません。何故なら」


 クラスの学級委員の網谷さんは、一旦言葉を止めた。


「阿久井美貴を殺したのは俺だからです」


 網谷さん、何で【俺】とか言ってるの?ダメだよそんな言葉を使っちゃ。君は我がクラスのマスコットで良心なのだから。えっと、他にはなんだっけ。阿久井を殺したのは網谷さん・・・?


 でも網谷さんて確かよその中学から入ってきた人だから阿久井のことは知らないハズなのに・・・ダメだ、キャパオーバーだ。ワケわからん。


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