暴走娘シャルロット④
リュカは途中で威圧したのは失敗だったと思っていたが、それでも話がうまく進んで心から安心した。
まだ4人の姫が残っているが、これで一組脱落だ。負担が2割減ったのだから喜ばないわけがない。
それを見ていたシャルロット以外の姫のうち3人は、そんなリュカの態度に危機感を募らせた。
リュカがハーレムに対しあまりいい感情を持っていない、その事に気が付いたからだ。
国の意向を汲んでいるセレストとマリアンヌは、「国の命令だから理由もなく捨てられることは無いはず」と子供も産めずに放逐される未来を否定する。
純粋にリュカを慕うディアーヌは心から自分が受け入れられていない事を知って悲しむ。
コレットはリュカの考えに気が付くが何も気にしていない。なるようになればいいと、投げやりに考えた。
笑顔を向けられたシャルロットは、なぜリュカが笑顔なのかと訝しんだものの、結婚せずに済むのだからなんの問題も無いと自分に都合よく解釈する。
結婚したくなければ去っていいとは、リュカの言だ。ならば早く帰ってしまおうと捨て台詞を残す。
「ふん。私はこれで帰らせてもらうわよ。
精々、愛の無いハーレム生活を楽しむのね」
リュカは笑顔のまま、無言で手を振った。
これ以上シャルロットに語る必要は無い。ただそのまま帰ってほしかっただけ。
彼の目的は達せられたのだ。
シャルロットが出ていき、侍女と騎士が逃げるように去って行く。
それを見送ったリュカは改めて残った女性たちに笑顔を向けた。
「さて。邪魔者がいなくなったので、これからの事を改めて話し合おうか。
ああ、その前にお願いがある。
彼女の件は、それぞれ親に話を通しておいて欲しい。こちらが帰っていいとは言ったが、帰ったのは彼女自身の意思によるものだと」
リュカはディアーヌらに、それぞれの国へ先ほどの件を説明をするように求めた。
これで、彼女への対処は終わりである。
少なくとも、リュカは何もしない。
ただ、それだけで話が済まない事をこの場にいる全員が理解していた。
リュカがシャルロットを罰しない事。
帝国がシャルロットの非礼を咎めない事。
それは、シャルロットの行為を認めたからではない。
もっと単純に、周囲が勝手に罰を与えるからである。