コレットの侍女③
侍女達の間に起きた派閥間の対立は、もちろん狙って引き起こされたものだ。
ただ、それを狙った側が「自分たちから対立を引き起こした訳では無い」というのが肝になる。
姫の対立に引きずられる形で自分たちも対立するという構図が重要だった。
コレットを追い落とそうとする意思、粗を見付けようとする小姑染みた考えが問題発生の発端だと、それを証明する事が目的であった。
原因があって、結果がある。
リュカは最初から流れを見てきたので、何が発端かちゃんと理解していた。
最初は、コレットが部下を御しきれなかったところから始まっている。
それを面白く思わなかった三人が、コレット排除を方針として打ち出した。
この場合、「何が問題で」「どちらに非があるのか」を考えると。
「ディアーヌ。マリアンヌ。セレスト。
申し開きがあるのかな?」
排除しようとした三人の方が問題である。
リュカにしてみれば、それが当然の判断だった。
釘を刺されたマリアンヌはすぐに仲間、残る二人にも話を持って行った。
自分一人で抱えきれる話ではなかったからだ。
そして三人はすぐにリュカとの話し合いの場を作り上げた。
そして、自分たちの考えをリュカに説明したのだが。
「いや。言いたい事は分かるんだけどね。根本的なところを勘違いしていないか?」
「根本的なところ、ですか?」
「外見。人格。能力。そこまで高い水準は求めていないからね。
コレットは、“わきまえている”という点では、そこそこ高く評価しているんだよ。
余計なプライドを抱えた無能は邪魔なだけだからね」
コレットが何もしなかった事に対し、無能の烙印を押した三人は、リュカの考えに絶句した。
「そもそも、今の立場は陛下が決めた事であり、そこに臣下が異論を挟むのであれば、もっと周囲を納得させる根拠が求められる。
今の三人に、それは無いよね。
いや。ここに居て良いかどうかは陛下が決める事だよ。ここに居たいかどうかは本人が決めれば良いけどね。ディアーヌ達がしようとした事は越権行為だ、そこを間違えちゃいけない。
シャルロットの件で勘違いしたかもしれないけど、俺たちにその決定権はないんだ。アレは事前の取り決めだったからね」
リュカとしては、コレットに部下を統率する能力が無いと思っている。
だったら余計な事をしないのが最善ではないかと、そう言っているのだ。
考えようによってはディアーヌ達よりリュカの方が酷い。
ただ、それでもリュカはコレットを認めている。
自分の能力に見合う行動をしていると。
できないのなら、できるようになれとは思うが。
「まぁ、原因は良いとして。
この結果は皮肉だろうね」
最後に、リュカは彼女たちの思惑が作り上げた現状に苦笑を向けた。
「今回の騒動。
結果として、三人の部下に対する監督不行届が発覚した訳だけど。そこはどう思う?」
ディアーヌ達は、コレットに突きつけようとした無能の証を突き返される事になった。