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裏の話し合い

 三人が侍女と女性騎士たち妾を諫めていたが、コレットは動かない。

 しかし、他の妾達が色気を振りまくことを止めたため、冷静さを取り戻したコレットの侍女と女性騎士もそれに倣い、リュカを誘惑することを止めた。

 ただ、順番としては最後であり、コレットが他の国の姫に後れを取ったという印象は拭えない。


 もともとコレットの評価は高くなかったが、4人の姫の中で“コレットが一番下”という格付けは、この段階で確定した。



「毒にも薬にもならない、ですわ」

「居ない方が良いと思いますが? あの方は、国を代表してここに居るという意識がありませんもの」

「国元での扱いは悪かったようですが。それにいつまでも甘えているというのは良くありませんね」


 コレットの事を、他の三人が酷評していた。

 今回はディアーヌ主導でセレスト、マリアンヌが集められたのだ。


 裏でこそこそするのは陰湿なようであるが、それもまた必要な措置である。目の前で酷評を聞かせるよりは本人がいないところで本心を言い合う方がマシである。

 そして一度コレットについて話し合わねばならないほど、状況は良くなかったのである。



 残念ながら、ハーレム運営に対して何も貢献していないコレットが自分たちと同じ立場にいるというのはハーレムの士気にかかわる。

 権利を享受するには貢献が必要であり、義務と責任を果たさないコレットがこの場にふさわしいとは誰も思っていなかった。


 貴族の妻とは、夫を支える重要な立場だ。

 社交を始め、家の中を取り仕切る事もあるのが貴族の妻である。

 だからこそ帝国の法律は爵位を持つ夫だけでなく、妻にも貴族の身分を与えているのだ。

 他に貴族として扱われるのは嫡男ぐらいで、残りの子供は全員「平民」でしかない。


 王族やハーレム持ち(一夫多妻)はやや話が異なるのだが……それだけ「妻」というのは特別なのだ。



「けど、彼女の部下は優秀ですよね」


 コレットに対し否定的な意見が出揃ったところで、マリアンヌはふと思いついたことを口にした。

 部下の質を見た時、彼女はこのハーレムにいる中ではコレットのところが頭一つ抜きんでているといった印象を持っていた。

 そしてその意見に他の二人も頷いた。


「悔しいですが、部下まで含めた彼女の価値を考えると……そうですね。そこは認めなければいけませんわ」

「主が不甲斐ない分、部下がしっかりしているのではありませんか?」


 ディアーヌは悔しそうに、セレストは冷ややかに同意する。


 特にディアーヌは自分の侍女たちが最上であると思っていたので、忸怩たる思いがある。

 人の価値とは部下まで含めて考えるのが一般的であったため、コレットに並ばれるというのはあまり面白くないのだ。



「それでも、人数で補える程度の差にしかなりません。何かあったら厳しく見るようにしましょう。

 ただ、本人が反省するようであればまた考え直すという事で」

「そうですわね。今は無理をしようと追い出せるものでもありませんし」

「ええ。ではそのように」


 最後はセレストが話を締め、二人が同意する。

 こうしてコレットに関する取り決めは、あまり隠れてはいないが裏で決まるのだった。


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