指導力/ディアーヌ
リュカが最初に与えられた嫁は五人。
そしてその五人には専属の侍女と女性の護衛騎士が付けられている。
侍女と護衛騎士の扱いは、リュカの妾である。
年若い女性である彼女たちに侍女や騎士としての働きはそこまで求められていない。
家事に関しては他の熟練女性侍女たちが主力であり、騎士働きで言えばリュカがいるだけで何の問題もない。
彼女たちが無能という訳ではないが、そこまで有能である必要もない。
美しさなど、女性として優れていればいい。国に対し忠実であればいいと言って集められていた。
公的にも妾であると明言されている。
ただ、ハーレムにまだ否定的なリュカの前ではあまり意味は無かったようであるが。
ディアーヌは怒っていた。
ハーレムに来てから一番の大激怒である。
「貴女達は……自分が何をしたのか分かっていますか?」
「リュカ様の寵を得るためです。他国の妾も動いています。ここで我々が後手に回ることは許されません」
「姫様。我々はここに来てから本懐を一度たりとも遂げていません。このままでは、国にも家族にも申し訳が立たないのです」
ディアーヌの前には、彼女の専属侍女と護衛騎士が並んでいる。
ディアーヌはリュカの妾でもあるその二人の行動にとても怒っていた。
怒られている彼女たちがやったのは、「リュカを誘惑すること」だ。
妾なので、誘惑しようという考え方はそこまで大きな問題とも言えない。
それに、だ。
ディアーヌの妊娠が発覚したことで、彼女は夜の生活から外れることになる。
安定期までの間、そういう事はご法度なのだ。
その空いた枠を同じパルティア帝国の妾が使おうと主張したい事も、あながち間違ってはいない。
しかし残念ながら、発想はともかく、彼女たちは行動を間違えた。
「だからといって、あのような破廉恥な格好でリュカ様を誘惑する必要がどこにありますか!!」
リュカは基本的に受け身である。
自分から女性を求める事をしない。
それは、完全に仕事であると割り切ってしまっている。
それでもどうにかしようと、彼女たちは肌も露な格好でリュカに迫ったのだが……リュカは何もせず、二人を見なかったことにした。
そしてディアーヌに相談が持ち掛けられ、今に至る。
話を聞いたディアーヌは、二人のあまりの情けなさに本気で怒っている。
本来であれば嫉妬する場面なのだろうが、嫉妬する気も起きないほどの情けなさと不甲斐なさで怒りが込み上げている。
リュカを一体何だと思っているのか。
ディアーヌは二人を小一時間ほど問い詰めるのだった。




