そして妾(めかけ)が動き出す
ディアーヌの妊娠について、他の嫁たちの反応はどうなのか?
全く嫉妬することなく、むしろ安堵しているというのが現状だ。
もともと、リュカに恋心を抱いていたのはディアーヌ一人だけ。
他の三人はそういった感情を今も持っていないので、嫉妬する理由が無かったりする。
細かい事を言えば、リュカの寵を得たいとは思っている。
彼女たちの目的を考えれば、愛されていた方が都合がいいのは確かなのだ。
ただ、その理由が打算的であるため、嫉妬とは結び付かない。
そして彼女たちとディアーヌの間には、権力構造の身分差がある。
ディアーヌは帝国の皇族であり、他は属国の王族。
明らかにディアーヌ一人だけ突出している。対等な立場ではない。
これでもしもディアーヌよりも先に妊娠して男子を産もうものなら、裏で空気の読めない女として叩かれることを覚悟しなければいけなかった。
同じ妻という立場で表面上は対等な扱いをされなくてはいけないので、夜の生活を放棄することもできず、板挟みになっていた。
だから彼女たちはディアーヌが先に妊娠してくれたことを喜んでいる。
あとは産まれてくる子供が男子であることを期待しつつ、マリアンヌら三人は「これでようやく妊娠できる」と胸をなでおろすのだった。
ただ。
ディアーヌと他三人の間に差はあるが。
その三人の間に差は無い。
ディアーヌよりも下である事はしょうがない。
しかし、他の国の姫より下である事となれば国益を損なう。
嫁の三人はそれぞれの理由で争いたくはないのだが、妾の8人は立場や考えが異なる。国益を最優先し、次に孕むのは自分だと意識を改める。
これまではディアーヌが抑えになっていたのだが、そのタガが外れた事により、妾達によりリュカをめぐる争いが始まってしまうのだった。
そして嫁の四人は、リュカに負担をかけぬように立ち回る事を要求されるのだった。




