姫5人
リュカの嫁は5人。
それに彼女たちの専属侍女と専属女性騎士が非公式の愛人として宛がわれるので、15人の相手をすることが求められている。
リュカの魔力は膨大・規格外だが、その魔力が子供に遺伝するかどうかは賭けになる。
それを考えると、どうしても10人どころか数十人の子供が欲しいと各国の王たちは考える。
嫁が5人では全く足りないのだ。
しかし、嫁という立場になるとリュカに対する干渉、嫁の実家という名の紐が増えてしまう。
嫁は最小限、実家の干渉は抑えるように。
子供は望めるだけ、とにかく数多く。
そういった事情で愛人を多数用意されたのだが、王家の姫5人だけがリュカの嫁である。
「パルティア帝国皇太子アドルフの娘、ディアーヌですわ」
「グラッセ=エトワール国、第7王女、セレストよ」
「アーヴェルニュ王国、コレット、です」
「シャルロット」
「レ=バン大公国、第二王子の娘、マリアンヌですわ」
5人の姫の名乗りを聞き、リュカは僅かに口の端がゆがむのが分かった。
最初と最後の姫はいい。
この2人は婚姻に対し否定的な感情を見せていないが、他の3人はダメだった。
セレストは表面上だけ取り繕っている。彼女は表面上の愛想は良いが、腹に何か隠している人間の顔をしていた。
政治に疎いリュカであったが、対人能力が低いわけではない。どこか暗い、リュカに対する悪意のような物が透けて見えた。
リュカの警戒心が刺激される。何かするのがリュカ本人であれば何の問題もないが他に手を出されると面倒だ。
コレットは、完全に無表情。
こちらは後ろ暗い物が無いだけまだマシなのだが、リュカに対する感情が全くなかった。
この娘はどこの人形なのだと、彼女の故国での境遇に嘆きたくなる。
4人目、シャルロットの態度は最悪だ。リュカに対する敵意を隠そうともしていない。
これは御付きの侍女と騎士にも言える事だが、彼女たち一団は国単位なのかどうかはリュカも知らないが、彼に対して憤りを感じている。
ただし、リュカは彼女たちを見て、ややほっとしている。これなら、合法的に御帰り願えると。
リュカの婚姻は国と国との契約だが、姫本人が嫌だと言えばお引き取り願っていいと皇帝直々の許可を得ている。リュカはそれに期待した。
正直な感想を言えば、リュカは姫たちの態度にがっかりしている。
リュカにとって最善なのは「一人が好意的で残りの4人が否定的」であったが、次善は「5人が事務的に協力してくれる」事であった。
元は平民のリュカは、5人も皇室・王室から姫を貰う事に心理的抵抗を持っている。
よって「できれば平民は嫌だと、1人になってくれないかな」などと考えていたがそれが叶わない事など知っている。
であれば、嫌々ながらもそこそこに協力的であることが望ましい。
好意的な姫2人は、まだいい。
敵意を見せている姫も、いなくなってくれるなら構わない。
ただ、中途半端な態度の姫2人の処遇をどうしよう?
リュカは「なんでこうなる」と内心で頭を抱えるのだった。