外部監査③
イネス夫人は呆れていた。
目の前の四人が、結婚についてもハーレムについても全く理解していない事を。
ただし、その認識を変える事が非常に難しい事も理解していた。
ディアーヌらはイネス夫人のあまりの迫力に恐れをなし、言われるまま、床に座る事になった。
姫と呼ばれる彼女たちであるが、怖いものは怖いし、逆らってはいけない者がちゃんと分かる。
反抗しようという発想には至らなかった。
「さて。貴女たちはなぜ怒られるか、分かりますか?」
イネス夫人は問いかけ、四人の顔をざっと見渡す。
が、思ったような反応は得られない。
それはそうだろう。彼女たちに自覚は無いのだから。
その情けない有り様を嘆き、イネス夫人は目つきを鋭くする。
しかたがない。そう思い、イネス夫人は問いかけを続ける。
「ディアーヌ姫。ハーレムの存在意義は?」
「優秀な男性の血を後世に残す為ですわ。また、戦時下で数の少なくなった男性を女性が奪い合いをしないよう、女性の結婚権を守る為に発生します」
「よろしい」
「マリアンヌ姫。ハーレムにおける男性の義務を述べなさい」
「ハーレムの主となる男性は、妻となる女性に対し、その身分に応じた生活の保障を義務付けられています」
「セレスト姫。補足を」
「はい。男性は妻に対し、格付けを行い、その格付けに合わせた区別を行います」
「後は産んだ子供の性別により、妻に与えられる格は夫の定めたものより優先されます。世継ぎを産む事が優先されるので、女児しか産めぬ妻であれば男児を産んだ妾に格で劣る事もあります。励みなさい」
「コレット姫。筆談で構いません。あなた方の妻としての格について、今、どのような関係が結ばれているか説明しなさい」
ポンポンと、イネス夫人から矢継ぎ早に質問が飛ぶ。
喋る事ができないコレットに対しても例外は無く、紙と筆を用意させ、早く答えろと視線で迫る。
そうして、コレットは問われた事に対し、焦りながら、すぐに答えを書く。
『私たち四人の間に、格差はありません』
コレットが回答を大きく紙に書き、イネス夫人に向けて提示する。
その回答を見て、イネス夫人は頷き、四人全員に問う。
「そうです。夫の定めるところに従い、貴女たちは同格なのです。
では、最後の質問です。
貴女たちは、他の妻を同格に扱っていますか?」
問われ、四人はイネス夫人が何を問題視しているのかをようやく理解する。
が、なぜ問題視するのかは、理解できなかった。




