余談・最強騎士
その日のリュカは、嫁4人と一緒に夕方の食事を取っていた。
リュカがいないときの嫁達はバラバラに食事を取るのだが、彼がいればみんなで食事を取る。それがこの家のルールだ。
「あー」
食事の最中、いきなりリュカが心底面倒そうな声を上げた。
「どうなさいましたか、旦那様?」
そんなリュカに、ディアーヌが声をかける。
そうするとリュカは、先ほど自分が何をしたのか説明する。
「侵入者、だね。3番の裏門、片付けておいて」
「かしこまりました」
片付けておいて。
これは、迎え撃てという意味ではない。
すでに始末したので、死体を捨ててきて。そう言っているのだ。
実際、使用人が屋敷の北北東に向かうと、そこには明らかに暗殺者という格好をしたものの死体が5つほど見付かった。
死体は全て、首の骨を折られていた。
リュカの命は狙われている。
リュカの周囲も狙われている。
だからリュカは、自分の周囲の者に対し、いくつかの制約を設けている。
その一つが「毒の持ち込み」であり、それを持ち込もうとすれば一度は警告するけれど、警告に従わねば問答無用で殺すと告げている。
言いがかりだ、バレないと思った。
そんな言い訳をする間もなく殺される。
襲撃者の声は、どんな大声の持ち主でも聞こえはしない。
なにしろ、リュカが警告をするのは1km離れた場所であり、本人は遠く離れたところにいるのだから。
最初、嫁である彼女たちはリュカが何を言っているのか理解できなかった。
リュカが強いことは知っている。シャルロットとの一幕でその片鱗を知ったので、強さを疑う訳ではない。
しかし、遠く離れた場所に持ち込まれた毒物を察知し、その所有者を処分するとはどれほどの実力なのか理解できない。想像もできない。
それに、だ。リュカの能力は1km先がどうこうという程度ではない。
この件に関連して、こんな一幕があった。
マリアンヌが、リュカが帝都から離れていることが問題ではないかと気にしたときのことだ。
貴族の干渉を避ける為とは言え、最強の騎士ならば皇帝の側に控えているべきでは無いかと思ったからだ。
それに対するリュカの応えは常識の外である。
「最強の騎士が帝都に居なくてもいい理由?
そりゃあ、ここからでも帝都を守れるからだよ」
ちなみに、帝都と屋敷は50kmは離れている。
リュカは、たった50km程度の距離なら攻撃魔法の射程圏内だと、事も無げに言ってのけたのだ。
最強の騎士。
最も強い、と言うのは。文字通りの意味であった。




